不動産テックカオスマップ、初版から最新版までの変遷をまとめて解説!

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不動産テックカオスマップ、初版から最新版までの変遷をまとめて解説!

【画像出典】一般社団法人不動産テック協会ホームページより【URL】https://retechjapan.org/retech-map/

第1版から第5版までの不動産テックカオスマップの変化

一般社団法人不動産テック協会によって公開されている「不動産テックカオスマップ」は、現在第5版(2019年8月発表)まで公開されています。2017年6月に第1版が公開されて以来、掲載されているサービス・企業数は第1版の75から第5版では305まで増加。日本の不動産テック業界が発展していることが見て取れます。そこで今回は不動産テックカオスマップの第1版から第5版までを順に振り返り、不動産テック業界の変遷を見ていきましょう。

第1版→第2版→第3版の変化:初期のトレンドは業務効率化(B2B)サービス

2017年6月に第1版「REAL ESTATE tech カオスマップ」(後の「不動産テックカオスマップ」)が公開されました。掲載サービスは75。「to C」向けか「to B」向けか、「テクノロジー」の活用か「データ・情報」ベースサービスか、の2軸でプロットされていました。そして約2カ月後の同年7月末に第2版に更新。掲載サービス・企業の追加やレイアウトの変更がなされており、初版からよりブラッシュアップされた形になっています。

「不動産テック業界 カオスマップ」初版「不動産テック業界 カオスマップ」初版【出典】リマールエステート株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000025418.html

「不動産テック業界 カオスマップ」第2版「不動産テック業界 カオスマップ」第2版【出典】リマールエステート株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000025418.html

そして、第2版公開から約半年後の2018年3月に「REAL ESTATE tech カオスマップ」から「不動産テックカオスマップ」へと名前を変えて第3版が公開。第2版公開時には91だった掲載サービス・企業の数は、173へと急増しました。

「不動産テック業界 カオスマップ」第3版「不動産テック業界 カオスマップ」第3版【出典】リマールエステート株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000025418.html

中でも、業務効率化の一貫として導入しやすい「業務支援」カテゴリーのサービスが隆盛。第2版では19だった「業務支援」サービス数が、第3版では54へと倍増し、「管理業務支援」と「仲介業務支援」の2つのカテゴリーに分類されるようになりました。特に目立ったのが、2015年頃から急速に普及し始めた電子契約に関連するサービス。加えて、第3版から新設された「リフォーム・リノベーション」カテゴリーです。

第2版→第3版のポイント①電子契約関連サービス

2001年に電子署名法が施行されたことで、電子契約には書面と同様の効力が認められるようになりました。さらに、2005年にはe-文書法の施行により、保管義務のある書面の電子化が認められました。また2017年10月よりIT重説が本格導入されたこともあり、不動産取引のデジタル化が急速に進められています。こうした変化が、カオスマップにも反映されています。

この流れは今後、「重要事項説明書等の電磁的方法による交付」の解禁を目指してさらに活発になっていくと予測されます。既に始まっているIT重説による「非対面での重要事項説明」に加え、これが揃って初めて完全にオンライン上で取引が完結することとなります。実現を目指し、2019年10月から12月にかけて、重説のデジタル交付の社会実験が行われています。

また、現在では賃貸取引におけるIT重説の活用が進んでいますが、2019年10月より、個人を含む売買取引におけるIT重説の社会実験が行われている最中です。この流れに先駆けて、第3版の「仲介業務支援」カテゴリーには、不動産業界に特化した電子契約サービス「IMAoS」や不動産業界向け電子署名サービス「DocuSign」が掲載されています。

第2版→第3版のポイント②「リフォーム・リノベーション」カテゴリーの新設

もともと第2版まで「マッチング」カテゴリーとして掲載されていた、中古マンションのリノベーションサービス「リノベる」や「Renosy」が、新設された当カテゴリーに分類されるようになりました。もともと中古住宅市場が活況なアメリカと比べて、新築物件が好まれてきた日本では、少子高齢化や空き家問題を前に、近年注目度の高まってきた領域と言えます。そのため業界内外からの期待も高く、第2版から第3版にかけての追加が目立ちました。

例えば、中古住宅やリフォーム・リノベーション物件の検索サイト「ミノリノ」の他、物件紹介だけにとどまらずリフォーム・リノベーション済み物件でのライフスタイルを提案する「cowcamo」など、市場拡大に向けてユーザーを育てようとする企業も登場しています。その結果、「cowcamo」を運営するツクルバは2019年7月に上場を果たしました。不動産テックの有用性をユーザーに伝え続けたことで支持を伸ばし、2015年からサービス開始した「cowcamo」の会員登録ユーザー数を12万人にまで拡大することに成功(2019年12月時点)。高い成長率が評価され、テクノロジー・メディア・テレコミュニケーション業界の収益(売上高)に基づく成長率のランキング「デロイト トウシュ トーマツ リミテッド 2019年 日本テクノロジー Fast 50」において、29位を受賞しています。

他にも、施工業者と顧客をマッチングさせるサービスも誕生しました。これは、工事内容や業者によって価格や技術の質が異なり、特に個人の顧客側からはその見極めが難しいというリフォーム・リノベーション市場ならではの課題を解決するための仕組みです。建築家やリノベーション会社をはじめとするリフォーム・リノベーションの専門家を紹介する「SUVACO」やリフォーム無料見積もりを行う「リショップナビ」などがその一つです。

現在では国土交通省や経済産業省など政府による中古住宅・リフォーム市場の活性化に向けた後押しもあり、「リフォーム・リノベーション」カテゴリーは今後も拡大が見込まれると言えるでしょう。

第3版→第4版の変化:社会変化に伴い拡大したシェアリング&IoTサービス

第3版公開から8カ月経った2018年11月、第4版が公開されました。更新に際し、不動産テック協会は初めて「不動産テック」の定義を定めるとともに、各カテゴリーの定義や掲載するサービスのガイドラインを明確にしました。基準が設けられたことで、一部のオウンドメディアなど、第3版から第4版にかけて未掲載となったサービスも17あります。それにも関わらず、新たに掲載されたサービスは100を超え、第3版と比べて掲載サービスは約1.5倍に増加しました。

「不動産テック業界 カオスマップ」第4版「不動産テック業界 カオスマップ」第4版【出典】一般社団法人不動産テック協会HPより【URL】https://retechjapan.org/retech-map/

管理業務支援」カテゴリーでは主に「eYACHO」をはじめとする建設や施工の情報を管理するサービスの増加が目立ちました(この傾向は第5版でも見られます)。また「仲介業務支援」カテゴリーでは「スマサポキーボックス」や「じぶんで内見」など物件の内覧時に管理会社が現場に行かなくても顧客だけで内覧できるようサポートするサービスが新たに追加されました。

いずれも労働力不足が進む不動産業界において、テクノロジーを活用することで不動産業界の人的リソースやコミュニケーションコストの負担軽減につながるサービスが台頭してきたと言えます。

第3版→第4版のポイント①シェアリングエコノミー拡大の影響

第3版までの「シェアリング」カテゴリーは、第4版から「スペースシェアリング」に表記が変更されました。同カテゴリーを見ると、「スペースマーケット」に代表されるような、多目的に使える場所の時間貸しサービスをはじめ、「akippa」や「軒先PARKING」など駐車場のシェアリングサービスも登場しています。

加えて2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたことで、民泊市場が本格的に活性化した影響も見られます。第3版に続き掲載されている「Airbnb」や、新たに追加された「HomeAway」など宿泊先となる物件提供者と宿泊希望者のマッチングサービスがわかりやすい例でしょう。

第3版→第4版のポイント②スマートスピーカーが牽引した「IoT」カテゴリー

“民泊”流行りの影響は他にも見られます。民泊オーナーが安全、かつ手軽にゲストへ民泊サービスを提供できるようサポートするスマートロック「RemoteLOCK」など、既存物件をスマート化する「IoT」カテゴリーも併せて急増しました。
さらに「Amazon Echo」や「Google Home」が日本進出を果たし、スマートスピーカー元年といわれた2017年から1年経ち、日本でも住宅のスマート化が注目された時期でもあります。そのため第4版では、スマートスピーカーに代表されるようなスマート家電を使い、人々の暮らしをアップデートするサービスが多数登場しました。

2030年、スマートホーム市場は現在の7倍になるともいわれています。国内でも、数多く存在するIoT機器規格を統合するプラットフォームが登場するなど、普及の障害となっていた要素が取り除かれつつあり、いよいよ本格的に盛り上がる市場だと予想されます。

改めて押さえておきたいのは、シェアリングサービス・スマートホームという概念や、それらを実現する技術やサービスの普及とともに、人々にとっての不動産が持つ価値や意味が確実に変化しつつあるということ。不動産業界は“所有”する資産や“箱”としての不動産を提供するだけではなく、“利用”するものとしての不動産の見せ方を考えたり、特定のニーズに特化したりすることで差別化することが求められるでしょう。

第4版→第5版の変化:加速する「暮らし方」と「働き方」の変化を反映

第4版公開から9カ月、2019年8月に最新版の第5版が公開され、掲載サービス数は第4版よりも42増加しました。

中でも「IoT」カテゴリーは第4版に続いて第5版でも増え続けています。特に「Secual」や「Peace Eye」といったスマートセキュリティサービスが増えていることから、不動産業者や不動産オーナーの業務を直接効率化するサービスだけではなく、その先にいる、実際に不動産を利用する顧客へ向けてより魅力ある物件を提案するために不動産テックを活用する事例が増えてきたと考えられます。

「不動産テック業界 カオスマップ」第5版「不動産テック業界 カオスマップ」第5版【出典】一般社団法人不動産テック協会ホームページより【URL】https://retechjapan.org/retech-map/

また働き方改革の一環として、日本企業でもリモートワークや在宅勤務の導入が進む今、いわばコワーキングスペース付きのシェアハウスとなる“コリビング(co-living)”型サービスが登場。カオスマップにも反映されています。2019年4月にはサブスクリプション型コリビングサービスとして「ADDress」が登場し、多拠点生活を手軽に実現できるサービスとして注目を集めました。「ADDress」は2020年1月にANAと連携して、航空券付のサービスを提供開始し、都市間の人口移動を促す地方創生の新たな切り口として目が離せないサービスです。

シェアハウスに住む若い男女「仲介支援業務」カテゴリーでは「TRG」や「不動産BB」など、不動産業者同士をマッチングさせるサービスが追加。営業やバックオフィス業務をより迅速、かつ効果的に行うためのサービスが次々に登場しています。こうしたサービスの登場により不動産業者は、以前にも増して情報収集能力の高さや、顧客や業界人との信頼関係を構築していくスキルが求められることになりそうです。

第1版~第5版における変化:存在感を増す特定のサービス事業者

これまで毎更新時の変化を順に追ってきましたが、第1版から第5版までの大きな変化を見てみると、複数の不動産テックサービスを展開する事業者が台頭してきていることがわかります。第1版から掲載されている管理会社向け自動物件確認サービス「ぶっかくん」や、仲介会社向け自動追客&顧客管理CRM「nomad cloud」を展開するイタンジ株式会社は、第4版公開時には仲介会社からの内見予約自動化システム「内見予約くん」と電子申込受付の自動化システム「申込受付くん」を展開。加えて第4版から第5版にかけては「電子契約くん」を開始するなど、BtoB向けの特化型サービスを組み合わせることで一企業として複数のサービスを提供しています。さらに2018年には、日本最大級の不動産サイト「Renosy」を展開するGA technologiesにグループインし、BtoBだけではなく、BtoCも網羅する企業へと成長しました。

このように不動産テックを取り扱い、大きく成長する企業が現れているという事実は、今後参入するスタートアップ企業にとっても、またこれらのサービスを活用する不動産業界にとっても大変魅力的であるといえるでしょう。

まとめ:2年間で大きく変化してきた日本の不動産テック

現在カオスマップに掲載されている日本の不動産テックサービス数は305。第1版から第5版にかけてのカテゴリーやサービスの増減を振り返ると、既存業務の効率化に始まり、民泊に代表されるシェアリングエコノミーといった新たな概念・新たな市場の誕生など、不動産業界におけるテクノロジーの本格活用に向けた足掛かりとなるような2年間だったといえます。

今後、「シェアリング」カテゴリーに分類されるサービスのように、BtoCのサービスでは不動産業界以外の法改正やトレンドの影響を受けることが予想されるとともに、「業務支援」カテゴリーのようなBtoBのサービスにおいては、不動産業界に関わる法改正や、政府によるテクノロジー活用の推進によって大きく進展する余地があります。不動産テック先進国であるアメリカのカオスマップをみると、業務支援の中でも「賃貸管理」や「ビル/設備管理」などのバックオフィスシステムから、「契約管理」や「電子署名」といった後工程に至るカテゴリーまで細分化されており、日本もまた同様に細やかなニーズに対応できるサービスが登場していくと考えられます。

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