大手ゼネコンがこぞって開発・導入を推進する「建物OS」とは何か

- 大手ゼネコンが「建物OS」を開発、導入を進めている
- 「建物OS」はオフィスビルなどの建物を統合管理できるシステム
- スマホのアプリのような管理のしやすさで「都市OS」との連携も可能
建物全体を統合管理し、人が快適にいられるようにする「建物OS」
人が来るのを見越して空いているエレベーターが降りてくる。人が座れば空調や調整の調整がはじまる----。
建物全体で人が快適にいられるようにする試み「建物OS」。竹中工務店や大成建設、清水建設などの大手ゼネコンが推進しています。建物OSは、建物をデジタル化するプラットフォームです。
導入メリットは建物運用・管理の効率化、利用者の利便性や安全、安心向上。主としてオフィスビルでの利用が見込まれています。既存オフィスビルにもソフトウェアとIoT機器などを組み込むことで実装可能であることから、オフィスビルの資産価値向上にもつながるともいわれています。各社の建物OSについて以下に紹介します。
■DX-Core/清水建設
【出典】清水建設【URL】https://www.shimz.co.jp/engineering/solution/dxcore.html
DX-Coreは、建物内の建築設備やIoTデバイス、各種アプリケーションの相互連携を容易にする建物運用デジタル化プラットフォーム機能を備えた基本ソフトウェアです。新築、既存を問わず実装でき、新築の場合、DX-Coreサーバーと建物管理システム、セキュリティシステム、IoTデバイス、ネットワークインフラ、サービスアプリケーションを顧客ニーズに合わせてパッケージ化し、実装します。
【出典】清水建設【URL】https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2020/2020025.html
■LifeCycleOS/大成建設
パブリッククラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」上で、これまで設計施工に活用しているBIMデータと建物の運用管理情報を組み合わせてカスタマイズした「サービス用BIM」に、竣工後に蓄積していく各種データ(IoT管理・ロボット管理・施設管理・エネルギー管理等)を紐づける、業界初の統合管理システム「LifeCycleOS」を開発し実装提案を開始しました。今後、お客様の所有する建物を対象に、「LifeCycleOS」の実装提案を進め、建物の維持・管理・運用におけるニーズに合わせてリアルタイムに活用できる建物情報のDXを推進してまいります。
【出典】大成建設【URL】https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210201_5074.html
■ビルコミ/竹中工務店
「ビルコミ」は建物設備システムやIoTセンサ等によるビッグデータを効率的に扱うため、オープンな通信規格を採用したクラウド型の建物データプラットフォームです。高度なネットワーク技術とオープンなデータ基盤技術を組み合わせることで、建物内のシステムとクラウドをセキュアにつなぎ、高付加価値の建物サービスを継続的に提供することが可能です。
【出典】竹中工務店【URL】https://www.takenaka.co.jp/solution/future/builcomi/
他にも鹿島建設(「鹿島スマートBM」)や大林組(「BIMWill®」)、長谷工(「BIM & LIM Cloud」)もBIMと連動させたデジタルプラットフォームを構築しています。
建物OSはソフトウェアとIoT機器で建物の内部を統合化する
建物OSは、これまでオフィスビルで使われていた機能をソフトウェアとIoTでつなぎあわせ、統合化します。エレベーターはエレベーターのメーカーが管理し、照明は照明メーカーが、空調は空調メーカーが管理していたのとは異なり、それらを一元管理していきます。
一元管理していく上では、メーカー間の連携が不可欠です。清水建設のDX-Coreも、アイホンやセコム、NTT東日本など約50社と組み、「API」で外部データ連携するようにしています。
パソコンやスマートフォンのOSのように、建物に組み込まれた機器やサービスを、アプリのように足したり削ったりアップデートができるイメージです。そしてパソコンやスマートフォンのようにデバイス上で全体像を把握できます。
把握することで、企業のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールのようにデータを収集・蓄積・分析・報告も可能になり、建物の運用・管理の効率化、利用者の利便性や安全、安心向上が実現できます。
例えば新型コロナウイルス対策で、カメラで温度を測定し、それをチェックする人がいる----オフィスビルでよく見かける光景です。これをAIとIoT機器が連動し、入居企業の社員が出社時、AIがカメラで人物を特定、体温をセンサーでチェック、発熱していた場合はゲートを開けないといった一連の流れを自動化できるのです。そして、その情報を会社に通知をするといったことも可能です。
建物OSはZEBの実現にも寄与できます。例えば竹中工務店の東関東支店では、既存オフィスを稼働しながら改修を行ない、その後の1年間でネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ネットZEB)を達成しました。モニタリング画面でエネルギー管理を強化、エネルギー需給の予測・統計モデルを機械学習することにより、建物設備の最適制御を実施しました。
竹中工務店東関東支店(外観)【出典】https://www.takenaka.co.jp/solution/asset/higashikanto-zeb/
都市OSとの連携が期待される建物OS
令和2年に内閣府より、スマートシティの実現に向けた「サイバー空間」基盤技術に関する指針(リファレンスアーキテクチャ)が公表されました。都市のデジタルデータ基盤が整備され、都市OSの導入が進んでいます。建物OSは、この都市OSとの連携がしやすくなるOSとして注目を集めています。
都市OSは都市のスマートシティ/スーパーシティ化に欠かせない統合管理システムですが、そのシステムをさらに効率よく運用していくためには、都市に存在する建物とのデータ連携も求められます。この時、建物がアナログのままでは連携はままならず、都市OSそのものが本来的な機能を果たせなくなります。そこで、大手ゼネコンはこの流れにあわせ、建物のDXを推進し、これまでにない価値を付与しようと建物OSを開発、導入を進めています。建物OSは建築をするわけではないので、比較的安価でスピード感をもって導入ができることも魅力。あなたが働くオフィスビルもいつのまにか建物OSを実装しているかもしれません。