【カオスマップ第4版】不動産テックの「仲介業務支援」領域にはどんなものがあるの?

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【カオスマップ第4版】不動産テックの「仲介業務支援」領域にはどんなものがあるの?

はじめに

2018年11月28日、一般社団法人不動産テック協会によって公開された「不動産テック カオスマップ」第4版。

今回は、このカオスマップ内の「仲介業務支援」領域を見ていきましょう。この領域は不動産業界の中でも携わる人が多く、影響が大きい領域だと言えます。そのため、サービス提供者も増加しており、実際に現場での効果も見え始めています。

少子高齢化により求められる業務効率化

まず最初に、仲介業務を取り巻く状況について簡単におさらいしておきましょう。物件の所有者と借手・買手の間に入って売買や貸借の仲介を行う「不動産仲介」。一般的な賃貸借の契約を例に挙げると、業務フローは以下のようになります。

①集客・顧客管理:物件の広告を製作する等して集客し、見込み客を含めた顧客の管理をする
②物件提案・内見:集まった顧客に物件の提案をし、内見を希望する物件があれば、内見を手配し、内見に立ち会う。決まらない場合は別の物件を提案する
③契約:入居希望者とその物件の貸主(オーナー)や管理会社による入居審査が通ったら、重要事項説明を行い合意を得た後に、賃貸借契約を結ぶ

他にも並行して接客のための資料を作成したり、物件を調査したりなど多岐にわたり、どうしてもマンパワーを必要とする、まさに労働集約型の業務といえるでしょう。

このような業態に加え、日本は少子高齢化による深刻な労働力不足に直面しています。そのため、不動産仲介領域における業務効率化は不動産業界内でも切迫した課題として注視されてきました。

このような背景を受けてか、2018年3月8日に矢野経済研究所が発表した賃貸住宅仲介業を行っている主要9事業者の店舗数に関する調査結果によれば、調査対象事業者において拠点の集約や営業効率の向上へ向けた店舗展開の見直しも出てきているものとみられ、必ずしも店舗数が増加を続けている状況ではないとしています。

同調査ではこの理由の一つとして、モバイル端末やPCからの物件検索の簡便化などによる集客効果の向上を挙げています。「店舗展開だけではない集客力の向上は今後も進んでいくことになる」とも分析しており、「仲介業務支援」領域では不動産テック導入の影響が表れ始めていることが分かります。

それでは、「不動産テック カオスマップ」第4版を見ながら、現在注目すべきサービスを見ていきましょう。

不動産テックカオスマップ

仲介業務工程ごとの注目サービス

カオスマップ第4版で「仲介業務支援」として記載されているのは、全31サービス。今回はこのうち、「集客・顧客管理」「物件提案」「内覧」「契約」の業務工程ごとに、注目のサービスを紹介していきます。

集客・顧客管理工程では「KASIKA」に代表される営業支援サービスに期待

「KASIKA」ホームページのキャプチャ

「KASIKA」(Cocolive株式会社)【出典】ホームページより:https://cocolive.co.jp/

「KASIKA」は不動産流通・住宅建築に特化したマーケティング自動化・営業支援ツール。自社に対し資料請求や問い合わせを行なった「そのうち客(欲しいという気持ちがまだ固まっていない・欲しいものが決まっていない顧客)」に対し、煙たがられる危険性の高い営業電話ではなく、定期的に自動メールを送信することによる「顧客育成の自動化」を可能にします。

また住宅購入の検討、あるいは賃貸物件を探している顧客への最適な営業タイミングを教えてくれるのも大きな特徴です。具体的には、これまでに資料請求・問い合わせ等の反響があった見込み顧客の活動を自動で分析し、見込みの高い顧客をスコアリングして営業担当者に通知。顧客別に自動で作成される「顧客カルテ」を見れば、誰がいつ、どんなメールを読んだ・クリックしたのか、ホームページ上のどんな情報に関心を持っているのか等が一目でわかるため、来場率・成約率向上に役立てることができる仕組みです。

なお、同サービスを開発・運営するCocoliveは2018年11月1日にXTech Ventures、みずほキャピタル、及びCocolive役員・従業員を引受先とした第三者割当増資により、総額1億円の資金調達を実施したことを発表しました。同発表によれば、導入企業の営業担当者1人あたりのアポイントメント数平均増加率は15~25%を記録しているそうです。データを活用して効率的かつ効果的な営業をサポートするサービスですね。

「顧客管理」という観点では、物件や顧客に関する膨大なやり取り・情報をまとめて管理できる「キマール」も類似サービスに挙げられるかもしれません。

さらに、競争優位性を最大限に活かし、地域戦略、顧客の絞り込み、社内の運用体制構築、最適な集客方法のコンサルティングなど、成果につながるすべてをワンストップで提供している「ダイヤモンドテール」や、業務効率化によって集客や顧客管理の時間を増やせるという意味では、電話の自動応答機能やLINE botを活用して物件確認業務を代行する「ぶっかくん」や「スマート物確」等も挙げられます。

物件提案工程では「Atlicu」など、若年層に親和性の高いチャットサービスに注目

「Atlicu」ホームページのキャプチャ

「Atlicu」(株式会社サービシンク)【出典】ホームページより:https://atlicu.jp/

「Atlicu」(アトリク)は不動産会社と顧客間の追客~契約までのコミュニケーションを支援するオリジナルのチャットサービス。スマートフォンアプリやPC版管理画面から手軽にメッセージを作成・送信できるため、顧客とのやり取りにかかる時間や手間を削減できます。

不動産に特化したツールなのでメッセージや物件情報以外のやり取り、例えば内覧申し込みや電子契約書での契約、初期費用の支払いといったものまでアプリ上で行なうことができるようになります。本ツールの導入により、不動産業界においてインターネット化が遅れているといわれる「物件検索以降の顧客とのやり取り」の簡便化や質の向上が期待できます。

本サービスを提供するサービシンクは、全国の10~30代の女性337名に対し「不動産会社の店舗スタッフから物件情報をもらう手段」についての意識調査を実施し、2018年6月15日に結果を発表しています。それによると、店舗スタッフから物件情報を受け取る際、希望する連絡方法の1位はメール(53.59%、179票)、2位が電話(32.04%、107票)、「チャット」方式のLINEは3位(14.37%、48票)。その理由として、同調査結果で判明した「女性は店舗スタッフとLINE-IDを交換するのに抵抗を感じている」点(全体の87.4%が抵抗を感じている)が挙げられるのではないか、と推測できます。

一方で、同調査では「お部屋探しの時にだけ使うチャットツール」があった場合の利用について意識調査も行なっており、結果は54.4%が利用意向を示していることから、「Atlicu」のような専用チャットサービスの需要を裏付ける結果となっています。

電話やメール、FAXではなく若年層にとってなじみ深いチャットやメッセンジャーを利用する接客方法は、近年多方面から注目されています。特に、希望条件や相場観を伝えておくとAI(チャットボット)や営業担当者がチャットで次々に物件を提案してくれる「ietty」(イエッティ)は、不動産会社が運営するチャットサービスとして人気を集めているようです。

内見工程では業務の自動化・効率化が進む。「内見予約くん」は自動応対を可能に 「内見予約くん」ホームページのキャプチャ

「内見予約くん」(イタンジ株式会社)【出典】ホームページより:https://bukkakun.com/cloud_chintai/naikenyoyakukun/lp

「内見予約くん」はイタンジが展開する、内見の予約受付・連絡・レポート作成を自動で行なってくれるシステムで、こちらの記事でも触れています。導入によって、これまで仲介会社や管理会社が電話やFAXを使って行なっていた業務を、24時間365日Webで行なえるようになります。

2018年11月19日、同サービスの仲介店舗登録者数が1万を突破したことが発表されました。これは、全国の不動産仲介店舗(94,057店舗)のうち、約1割の不動産仲介店舗が同サービスを利用していることになるといいます。

「内見」に関しては様々な方向からのアプローチで業務の効率化やサービスの質を向上させるサービスが登場しています。例えば「スマサポキーボックス」は、IoTによって内覧業務における仲介会社と管理会社間での「鍵を借りる手間」「鍵を返却する手間」「鍵を管理する手間」を全てカットし、内覧案内業務の効率化を実現するサービスで、不動産業務を自動化するイタンジの「Cloud ChintAI」とも連携しています。

一方、VRや360度動画を活用して現地に足を運ばずともその場で内覧ができるサービスも存在します。ブラウザから簡単に利用できるバーチャル内覧システム「ROOV」を展開するスタイルポートは2018年11月にみずほキャピタル、みずほ銀行等から総額4.1億円の資金調達を実施。こちらの記事でも言及しているように、「VRによる住まい選び」は今注目の分野です。

契約工程では「IMAoS」を始めとした電子契約サービスが台頭

「IMAoS」ホームページのキャプチャ

「IMAoS」(SB C&S株式会社)【出典】ホームページより:https://www.imaos.jp/

「IMAoS」はソフトバンクグループが提供する、不動産賃貸業向け電子契約サービス。新規の不動産賃貸契約、(ITを活用した)重要事項説明、不動産賃貸契約の更新、建設請負契約(印紙不要)に利用することができます。

入居者は印鑑を持参せずとも電子署名を行なうことで契約を結ぶことが可能になりますし、通常新規契約時で5~6回、更新時で2回発生するといわれる書類の郵送手続きを0回にすることも可能です。契約にまつわる煩雑なやり取りや膨大な紙の書類を大幅に削減できる、顧客と不動産会社双方にメリットがある仕組みです。

このような「電子契約」も多方面から注目されるトピックです。特に煩雑な契約業務が多い不動産業界では、作業の効率化を助け、人為的なミスを防ぐための手段として期待されています。いわゆる「IT重説」の運用が開始され、これまで対面で行なうことが義務付けられていた借主に対する重要事項説明を非対面で行なうことが可能となる等、電子化できる範囲も広がってきています。カオスマップでも「CLOUD SIGN」や「キマRoom!Sign」のような電子契約を可能にするサービスが取り上げられています。

また、家賃保証契約手続きを電子化するサービスなので「管理業務」の範疇といえるかもしれませんが、188ヵ国30万社で導入され、2億人を超えるユーザーを抱える電子署名のプラットフォーム「ドキュサイン(DocuSign)」を活用した「サインdeとーす」のようなサービスも存在します。

工程を横断するような支援サービスも

このように、様々な方向から不動産仲介業務を効率化するための不動産テックサービスが存在します。今回は仲介業務の一部に特化したサービスを中心に取り上げましたが、「HowMa」や「RIMS(Realestate Information Management System)」のように、中には複数の業務にまたがり、総合的に仲介業務をサポートしてくれるサービスも。それぞれの特徴やメリットを吟味し、目的に合ったサービスを選択したいですね。

カオスマップの変化から見通す仲介業務支援のトレンド変化

不動産仲介業務は「to C」(対消費者)型の営業がメインとなります。そのため、前述したような新たなサービスを利用して物件や顧客に関する情報を整理したり、書類を郵送したりといった事務作業にかかる時間や手間をカットし、その分を接客の質を向上させるよう努めることは有効な戦略でしょう。

また、矢野経済研究所が2018年11月28日に発表した国内不動産テック市場についての調査結果では、B to C領域(企業が消費者にサービス提供する市場)で今後高い成長が見込まれるのは「仲介サービスにおけるマッチング市場」であると予測されており、今回取り上げたようなベンチャー企業による新たな集客サービスが市場に浸透し始めていることなどが理由に挙げられています。

事実、カオスマップ第4版で「仲介業務支援」領域に振り分けられたサービス数は31と、第3版の21サービスから10サービスも増加しています。業務効率化への貢献が期待される電子契約の普及も少しずつ進んでいるので、今後は契約業務や物件の提案といった業務を中心に自動化・電子化が進んでいくのかもしれません。

まとめ

カオスマップ最新版でも大幅にサービス数を増やした「不動産仲介」領域。今もまだ従来どおりの「人力」による作業や書面によるやり取りが多く残されているからこそ、テック活用によって手を入れる余地が多く残されています。一方で既存業務の自動化だけでなく、チャットに代表されるような手軽に連絡を取り合いたいニーズを持った現代の顧客に合わせた接客の仕方も、テクノロジーによって可能になってきています。

顧客体験が重視される昨今、「to C」営業がメインの不動産仲介業務においてテック活用による効率化・価値創造の可能性はまだまだありそうです。成約率を向上させるには、不動産テックを単なる「時短」や「効率化」のためのツールと捉える消極的な利用法ではなく、時流に合った集客や物件提案を行ない、顧客体験を向上させるための手段として、積極的に利用していく必要があるのでないでしょうか。

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