2024年には3Dプリンターハウスシティが誕生?2023年は2人世帯向けの住宅、インフラ設備のある実証棟が完成!
- セレンディクス株式会社は2023年7月25日に愛知県小牧市で2人世帯向けの3Dプリンター住宅「serendix50」を44時間30分で竣工。550万円で販売される予定
- 株式会社大林組も4月に3Dプリンター実証棟「3Dpod™」を完成させ電気・空調・水道などの設備があり、室内には断熱性能も
- 2024年には日本初の3Dプリンター住宅タウンが誕生か
3Dプリンターハウスのスタートアップ企業・セレンディクス株式会社は2023年7月25日に愛知県小牧市で2人世帯向けの3Dプリンター住宅「serendix50」が竣工しました。施工時間は44時間30分です。
同社は2023年12月15日にヤマイチ・ユニハイムエステート株式会社と日本初の3Dプリンター住宅タウン実現を目的とした資本業務提携の開始を発表しました。
2024年には3Dプリンター住宅タウンが実現するのでしょうか?
今回は2023年の3Dプリンター住宅市場の動向と、3Dプリンター住宅メリット・デメリット、海外の最新事例や2024年の展望について解説していきます。
2023年の3Dプリンター住宅業界:2人世帯向けの住宅と実証棟が完成!
セレンディクス株式会社は、2023年7月25日愛知県小牧市で日本初の2人世帯向け3Dプリンター住宅 「serendix50」を竣工しました。延べ床面積50㎡、鉄骨造+鉄筋コンクリート造の1LDKで価格は550万円です。
【画像出典】セレンディクス株式会社「プレスリリース画像 」より
【URL】https://www.atpress.ne.jp/news/364097
同社は2022年4月から慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同でプロジェクトを進めていました。
2022年3月には、愛知県の百年住宅株式会社・小牧工場で3Dプリンターハウス「serendix10(スフィアモデル)」を23時間で完成させました。10㎡で販売価格は300万円です。
【画像出典】セレンディクス株式会社「プレスリリース画像」より
【URL】https://www.atpress.ne.jp/news/372426
10月には購入者に対して自然災害による被害についての補償を提供することを発表し、一般向けの初回限定販売の6棟は即完売しました。整骨院のプライベートサロンなどに利用されています。
2人世帯向け3Dプリンターハウス「serendix50(フジツボモデル)」は、serendix10の発表後に60代以上の夫婦世帯から一般住宅仕様の3Dプリンター住宅を熱望する声を受け、共同プロジェクトがスタートしました。
セレンディクス株式会社のプレスリリースによると、serendix50は①日本の建築基準法に準拠するといった技術面、②構造強度・耐火性・耐水性・断熱性を担保する快適性、③低価格(550万円)という3つの面で住宅課題に取り組みました。
今後は安全性試験を実施した後に、限定6棟の先行販売をスタートする予定です。
2023年11月には、セレンディクス株式会社は「Awaji Well-beingビジネスコンテスト2023」にて最優秀賞を受賞しました。
大林組は 3Dプリンター実証棟「3Dpod™」を完成させる
株式会社大林組は、2022年5月から大林組技術研究所で3Dプリンターによる建屋の建設に取り組んでおり、2023年4月に3Dプリンター実証棟「3Dpod™」を完成させました。
【画像出典】株式会社大林組「3Dプリンター実証棟「3dpod™」が完成 プレスリリース」より【URL】https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230425_1.html
3Dpod™は、セメント系材料を用いた3Dプリンターによる建築物として建築基準法20条に関して国土交通大臣の認定を取得しました。
延べ面積27.09㎡で、研究室と機械室の2部屋という間取りです。
【画像出典】株式会社大林組「3Dプリンター実証棟「3dpod™」が完成 プレスリリース」より【URL】https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20230425_1.html
壁や床などの部材に3Dプリンターを用いており、壁は全て現地で直接プリントを行いました。壁を複数層にしてケーブルや配管ダクトを配置することで、電気・空調・水道などの設備が整いました。
3Dプリントによる躯体工事と同時に、断熱・設備工事の一部も実施しました。
さらに2023年 11月に同社は、岩盤型潜水突堤の一部を3Dプリンターで製作することに成功しています。
3Dプリンター住宅のメリット
3Dプリンター住宅の大きなメリットとして価格の安さが挙げられます。
近年都内の分譲マンションを中心に不動産価格が高騰しています。株式会社不動産経済研究所の「首都圏新築マンション市場動向(2023年上半期)」によると、首都圏の新築マンション平均価格は7,836万円で前年同月比23.7%上昇しました。
中古マンション価格も、東京23区の70㎡換算価格は2021年辺りから上がり続け7,034万円です。2020年7月の5,721万円と比べるとおよそ1.2倍です。
(株式会社東京カンテイの11月中古マンションプレスリリースより)
セレンディクス株式会社の「serendix50(フジツボモデル)」は、延べ床面積50㎡で550万円ですので従来のおよそ10分の1の価格で家が買えることになります。
建築業界では、2024年4月に時間外労働の上限規制が適用され人手不足に陥る2024年問題が危惧されています。
しかし3Dプリンター住宅は施工期間が短いため、作業員が長時間拘束されないというメリットもあります。
施工期間の短縮は、CO2の排出削減といったSDGs(持続可能な開発目標)達成の一端を担うことにもつながります。
3Dプリンター住宅のデメリット
2022年の記事では3Dプリンター住宅のデメリットとして、①建築基準法に対応していない、②基礎工事がされていないため耐震性が未知数という2点を解説しました。
当時は2つのデメリットがありましたが、セレンディクスの「serendix50(フジツボモデル)」、大林組の「3Dpod™」はこれらの課題をクリアしています。
建築基準法第37条では、建築材料の品質について以下のように定められています。
第37条 建築物の基礎、主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である政令で定める部分に使用する木材、鋼材、コンクリートその他の建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下この条において「指定建築材料」という。)は、次の各号のいずれかに該当するものでなければならない。
1 その品質が、指定建築材料ごとに国土交通大臣の指定する日本産業規格又は日本農林規格に適合するもの
2 前号に掲げるもののほか、指定建築材料ごとに国土交通大臣が定める安全上、防火上又は衛生上必要な品質に関する技術的基準に適合するものであることについて国土交通大臣の認定を受けたもの
大林組の「3Dpod™」は建築基準法第20条「構造耐力」について国土交通大臣の認可を受けていますので、建築基準法をクリアしています。
「serendix10(スフィアモデル)」はコンクリートの間に鉄筋を挟むRC造でしたが、「serendix50(フジツボモデル)」はコンクリート単一素材です。
さらにserendix50(フジツボモデル)は、9本の鉄骨を使用しています。
【画像出典】セレンディクス株式会社「プレスリリース画像 」より【URL】https://www.atpress.ne.jp/news/364097
鉄骨の柱を入れることで、耐震性能の向上が期待できます。
フジツボモデルは、躯体を3Dプリンターで出力し、屋根はデジタルデータを元にCNCカッターで造形するという新しい技術です。
大林組の「3Dpod™」は電気・空調・水道などの設備があります。
今後は通常の住宅のように、3Dプリンター住宅にも設備の充実や利便性の向上が期待されるかもしれません。
2024年は日本でも3Dプリンターハウスシティが誕生?
アメリカのテキサス州では、100棟の3Dプリンター住宅コミュニティの建設が進んでいます。
2023年8月には最初の1棟が竣工され、販売中の物件の価格は475,000~599,000ドルと報道されています。
セレンディクス株式会社は、2023年12月15日にヤマイチ・ユニハイムエステート株式会社と日本初の3Dプリンター住宅タウン実現を目的とした資本業務提携の開始を発表しました。
プレスリリースには「(略)この度の資本提携を通じて相互の関係性を深化させ、一般普及を加速する3Dプリンター住宅技術を確立し、住宅不足や高騰化、ワークライフバランスの両立等の社会課題解決を目指す次世代のスマートシティデザインに共に取り組みます」と記載されています。
2024年にはテキサス州のように、3Dプリンター住宅の街が実現するかもしれません。今後の動向を見守っていきましょう。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。CFP(R)相続・事業承継科目合格。全科目合格に向けて勉強中。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
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