スペースシェアリングの注目株。最新の駐車場サービスのビジネスモデルとは?

- 駐車場の空きスペースを貸したいオーナーと、駐車したいドライバーの双方のニーズに応えるサービスが登場している。
- 軒先パーキングやakippaといったサービスは、行政やスポーツチームとの連携で、駐車場の提供以外に渋滞緩和や不正駐車の対策などに一役買っている。
- 情報通信企業など、異業種の企業と連携することで駐車場サービスをさらに拡大している。
ニーズにあわせた駐車場管理サービスが増加中
一般社団法人不動産テック協会が2019年8月22日に公開した「不動産テック カオスマップ」第5版ではAirbnbやMonooQといった不動産テックで発展するスペースシェアリング分野が取り上げられています。
第5版不動産テックカオスマップ【出典】一般社団法人不動産テック協会より【URL】https://retechjapan.org/retech-map/
この中には民泊や物置だけでなく、「駐車場」サービスも掲載されています。「2020年以降の物件活用-スタートアップの新サービス事例」でも紹介した「akippa」などがその代表的な例で、駐車場の空きスペースを貸したいオーナー(駐車場事業者)と駐車したいドライバーの双方のニーズに、テクノロジーを活用して応えています。今回は、そんな「軒先」「akippa」の最新事例をはじめ、注目を集める駐車場のスペースシェアサービスをいくつかご紹介します。
おうちdeパーキング
株式会社アズームが提供する「おうちdeパーキング」は、自宅の空いている駐車スペースを登録すると、アズームが一括で借り上げ、月単位でドライバーに貸し出します。転勤で一時的に駐車場が不要になった場合などに月単位で貸し出すことで、毎月の固定収入を得られます。万が一ドライバーが使用料を滞納した場合にも、アズームからオーナーへ使用料が払われたり、必要に応じてどのような相手に貸し出しているかドライバーの情報もオーナーに開示されたりするなど、駐車場管理が本業ではないオーナーをサポートする体制を強みとしています。
おうちdeパーキング【出典】おうちdeパーキング公式ページより【URL】https://carparking.jp/sublease/house/
Smart Parking(スマートパーキング)
「Smart Parking」は駐車場の空きスペースに、ビーコン内蔵のカラーコーンを置くだけで駐車場を貸し借りできるサービスです。ドライバーはスマートフォンで予約した駐車場に車を停めたあと、カラーコーンにスマートフォンをかざし入庫記録を行います。料金の支払いはカラーコーンにスマートフォンをかざすだけ。駐車料金をクレジット決済できます。オーナーもドライバーも契約の手間や費用を掛けずに簡単に始められ、通常の駐車場運営のように初期コストやランニングコストが掛からないのが強みです。
Smart Parking【出典】Smart Parking公式ページより【URL】https://smart-parking.jp/
行政・スポーツチームと連携した駐車場サービス
こうしたサービスは、低コスト・短工期で導入ができる簡易性と土地に合わせて柔軟に展開できる優位性の高さから行政やスポーツチームとの連携も進んでいます。冒頭に挙げた記事で紹介されている「akippa」「軒先パーキング」は、業界の中でもいち早くその連携に着手。イベント時に不足しがちな駐車場の提供だけでなく、渋滞の緩和や無断・違法駐車(以下、不正駐車)への対策といったさまざまな効果も発揮しています。
軒先パーキング
店舗やレストランなどの空きスペースとそれを利用したい人を結びつけるプラットフォームを運営する軒先株式会社は、駐車場の空きスペースをシェアする「軒先パーキング」事業を行っています。軒先パーキングでは、2016年より東急住宅リースと提携し、東急住宅リースが管理する賃貸住宅の駐車場の空きスペースを貸し出すサービスを始め、不動産業界との連携を進めています。
また軒先パーキングは、プロサッカークラブのアビスパ福岡との提携を発表。試合時の同サービスの提供をはじめ、ホームであるレベルファイブスタジアム近辺の遊休地や駐車場、空き地などの開拓を進めています。これにより、試合時の駐車場不足を解消して来場者の利便性を向上するだけでなく、スタジアム周辺の道路渋滞の緩和を目指しています。
アビスパ福岡 × 軒先パーキング【出典】軒先パーキング公式ページより【URL】 https://parking.nokisaki.com/cp/avispa
akippa(アキッパ)
空いている個人宅の車庫や月極駐車場を最短15分から一時利用できる駐車場予約アプリ「akippa」もスポーツチームとの連携を進めています。akippaの場合は、V・ファーレン長崎のホームであるトランスコスモススタジアム長崎内の駐車場の事前予約を提供することによって、軒先パーキング同様にスタジアム周辺の渋滞緩和を狙います。
またakippaは、駐車場利用に伴い発生した収益を無料シャトルバスの運行費用にあて、さらなる渋滞緩和に努めるなど、自社サービスを超えたサポーターへの還元に取り組んでいます。
V・ファーレン長崎 × akippa【出典】akippa公式ページより【URL】https://www.akippa.com/v-varen/
このほかakippaは神戸市と協力し、市営住宅の駐車スペースをドライバーに貸し出すなど、自治体が所有する駐車場の空きスペースの有効活用にも取り組んでいます。この効果として市営住宅の住居者の利便性が向上するとともに、不正駐車などを未然に防ぐことを目指しています。
残る課題——駐車場運営のスマート化で不正駐車対策を
このように駐車場サービスはさまざまな分野へ展開し、駐車場運営の枠を大きく変えようとしています。そんな中、払拭しきれない課題があることも現状。駐車場運営における課題の一つに挙げられるのが、契約せずに利用する不正駐車です。従来の駐車場運営では、オーナーが自ら不正駐車を発見し、注意する必要がありました。しかし駐車場の規模や駐車台数が増加するにつれ、そういった犯罪を未然に防ぐために管理することは難しくなってきています。
そこで、不動産業界と情報・通信企業が連携し、このような課題を解決するサービスを開発しました。通信事業と駐車場運営しているオーナーとの大規模連携により、急速に拡大するサービスの代表事例を見ていきましょう。
BLUU SMART PARKING
ソフトバンクが提供する「BLUU SMART PARKING」は、1分単位で駐車場の事前予約から決済まで可能なサービスです。駐車場に設置したセンサーでナンバープレートを読み取り、事前予約した車両番号と照合し、合致しているかを確認。万が一不正駐車が起きた際には音声で警告したり、管理センターに通知したりする仕組みとなっています。
BLUU SMART PARKINGは2018年7月のトライアル版の提供段階からスターツアメニティーと提携しており、全国で約10万台の月極駐車場の未契約スペースを提供するなど、市場参入から一気に大きく展開しました。
また、ソフトバンクグループの「Yahoo!カーナビ」との連携を活かして、駐車場予約後に駐車場までの経路を案内する機能も提供しています。
BLUU SMART PARKING【出典】BLUU SMART PARKING公式ページより【URL】https://www.parking.bluu.jp/
docomoスマートパーキングシステム
NTTドコモがオーナー向けに提供する「docomoスマートパーキングシステム」は、車の出入庫を感知するIoT機器「スマートパーキングセンサー」を駐車場に設置し、クラウド上の「駐車場管理サーバー」に出入庫情報を送信することで、駐車場の満空情報や不正駐車の管理が行えるシステムです。
ドライバー向けには、「Smart Parking Peasy(ピージー)」を提供しています。使い方は簡単。アプリ上で空いている駐車場を検索・選択して30分間キープし、その間に選択した駐車場に到着・駐車後、「利用開始」ボタンをタップ。出庫時はそのまま発進すると駐車スペースに設置されているセンサーが反応し、駐車時間に応じた料金が登録したクレジットカードから引き落とされます。事前の申請は必要なく、当日に予約が可能なことも特徴です。
また同システムは、2019年9月に軒先パーキングとの連携を発表しました。駐車場の前日予約で1日利用できる軒先パーキングと、当日予約で利用できるSmart Parking Peasyが連携したことで、軒先パーキングで前日までに予約が入らなかった駐車場の当日予約利用分をSmart Parking Peasyが引き継ぐことが可能になりました。両者のサービスを掛け合わせたことにより、柔軟に駐車場の空きスペースを活用できるようになりました。
さらにNTTドコモは、住宅メーカー向けに建築現場近くの駐車場を短期間手配しているファストコムの建助事業部と連携するなど、一般ユーザーだけではなくビジネスユースへの対応も積極的に行なっています。
docomoスマートパーキングシステムのサービススキーム【出典】NTTドコモプレスリリースより【URL】https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2017/07/21_00.html
スペースシェアリングは不動産業界の新たなビジネスチャンス
これらのサービスはいずれも既存の駐車場ビジネスの延長線上にあり、あくまで駐車場の空きスペースの有効活用を促進するサービスとして展開されているため、ビジネスモデルを大きく変えるものではないかもしれません。
しかし、スポーツチームや地方自治体、IT企業をはじめとした他業界との連携が進むなど、そのサービス展開は多岐にわたります。このことを鑑みると、今後もこれまで不動産業界とは縁のなかった業種との連携が広がることは十分に考えられます。
そのためにも、不動産業従事者は同業界のみならず、新たなビジネスチャンスを求めて他業界に目を向けることが必要になってきます。スペースシェアリング分野における駐車場サービスの今後の動向から目が離せません。