メール作成はAIにおまかせ? 効率化できるツールが続々と登場

- ビジネスパーソンは1日に150分、メールの読み書きに時間を費やしている
- 東大発の「ELYZA」がメール・ビジネス文書などをAIで作成できるソフトを開発。文章の要約も
- AIを利用してメールの作成時間を短縮できるツールや、クレームメールを発見できるものも開発されている
「メール作成を効率化したい」「ビジネスメールの作成に時間をとられる」という方は多いのではないでしょうか。
メール作成の効率化には、テンプレートを準備しておく、単語登録機能を利用し使用頻度の高い文章を登録し入力時間を短縮するといった方法があります。
2022年3月、東大研究室発のチームがAIでメールやビジネス文書を作成できるソフトを開発し、一般公開したことが話題となりました。
今回は「AI×メール(文章)」でメール作成を効率化できるツールをご紹介します。
ビジネスパーソンは1日に150分、メールの読み書きに時間を費やしている
メールは今や公私ともにコミュニケーションを取る上で欠かせないツールと言えます。
一般社団法人日本ビジネスメール協会が2021年に行った「ビジネスメール実態調査」によると、仕事で使っている主なコミュニケーション手段の第1位が「メール」(98.9%)、1日に1回以上メールを確認する人は99.49%という結果となりました。
1日の送信メールの平均は「13.63通」、受信メールは「51.1通」で1日の中で69分メールを読み、81分はメールを書いている計算となり合計150分(2時間半)をメールに費やしている事が分かります。
社内の連絡を始め業者間のやり取り、オーナーへの連絡など不動産業者はコミュニケーションを取る相手が多岐に渡ります。そのため文章作成に加え敬語や文体など相手に合わせたメール作成の能力が必要です。
場合によってはメールでのコミュニケーションによって契約が破談になる、逆に成功する場面も存在するためより良いビジネスメールの作成が業務の要となる事もあります。
相手に好い印象を与えつつ、メールを効率的に作成するためにはどうしたら良いのでしょうか?
ビジネスメール講座を受ける、テンプレートを作成するなどの方法がありますが、ビジネスメールはケースバイケースである事例が多いため、「習った通りにいかない」「このメールでテンプレートが使えない」というケースがあります。
2018年に東京大学・松尾研究室で発足したAIチーム「株式会社 ELYZA」では、メール・ビジネス文書をAIで作成できるソフトを試験的に公開中です。
メール・ビジネス文書をAI作成で効率化!長い文章を3行に要約も
ELYZAは文章執筆AI「ELYZA Pencil」と、文章要約AI「ELYZA DIGEST」をデモンストレーション用に公開しています。
文章執筆AI「ELYZA Pencil」
ELYZA Pencilは入力したキーワードから約6秒で文章を作成できる文章執筆AIです。2022年に3月に公開され、リリース後の11日間で11万人が利用し、デモサイトPV数は45万PVとなりました。
【画像出典】ELYZA 文章執筆AI「ELYZA Pencil」デモンストレーション用よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.pencil.elyza.ai/#kind=mail
ELYZA Pencilで作成されたメールの文章は公表が禁止されているためここでは記載できませんが、キーワードを入力することで一般的なビジネスメールとしての文章が表示されました。
作成された文章をそのまま送信する事が難しい場合でも、「お世話になっております」といった定型文を入力する手間が省けメール作成の効率化に繋がります。
ELYZA Pencilと大学生の執筆速度を比較し たところ、正確性は大学生より低いものの、流暢性は同じ水準、執筆時間は約50分の1というデータもあります。
メールの文章だけではなく、ニュース記事、ビジネス文書、SNSに投稿する文章の作成も可能です。
文章要約AI「ELYZA DIGEST」
ELYZA DIGESTはAIが文章を3行に要約するツールです。
長文のメール、国土交通省といった官公庁のサイトを確認する際、読み解くために時間がかかることがありますが、ELYZA DIGESTで要点を確認した後、ざっと目を通すことで効率的に理解が出来る可能性があります。
例として本サイトの以下の記事を要約してみます。
- メタバースで不動産ブームが来る? 海外では約5億円の取引も
https://www.sumave.com/20220301_21855/
※冒頭の「10秒でわかる!この記事の内容」は入力せずに、本文のみ入力しました。
【画像出典】ELYZA 文章執筆AI「ELYZA DIGEST」デモンストレーション用よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.digest.elyza.ai/
要約結果:メタバース内の不動産取引がブームとなっている。不動産投資企業の狙いは、メタバース内での不動産の売買・活用だという。唯一無二のNFTで記録されるためオンライン上で奪われてしまう心配はない。
メタバース・NFT・ブロックチェーンの概要、メタバース内の不動産が約5億円で購入されたことなどを伝える記事でしたが、簡潔に内容が要約されています。
「10秒でわかる!この記事の内容」は以下の通りです。
・2021年末、アメリカでは約5億円でメタバース(仮想空間)の土地を購入する業者が
・バーチャル不動産はリスクが大きい?メリット・デメリットを解説
・日本でも大手業者がメタバース市場に参入
重要な部分は正確に要約できていると言えるでしょう。
ELYZA Pencilでのメール作成、ELYZA DIGESTでの文章要約によって合計150分のメールにかけている時間が短縮できるかもしれません。
メール・文章作成を効率化できるツール4つ
他にもAIでメールや文章の作成を効率化できるツールが、続々と開発されています。
- Gmailは既にAIを使ったメール文自動返信、文章提案機能を追加
- AI事例検索ツール「AIRI」
- AIでクレームをチェックする「ToDo監視」
- AIが最適なテンプレートを選択する「Re:lation(リレーション)」
Gmailは既にAIを使ったメール文自動返信、文章提案機能を追加
Googleが提供する「Gmail」はAIによるメール文書の入力支援機能「Smart Compose(スマート作成)」と受信したメールの文脈から推測される返信文(一文)をGmailが提案し、選択しタップすることで返信が完了する「Smart Reply(スマートリプライ)」機能を実装しています。
2022年4月時点で、スマート作成は英語・スペイン語などに対応しており日本語のメール作成では利用できません。
スマートリプライは日本語版でも使用でき、受信メールに対して提案文が表示されます。
ただ受信メールの内容やデバイスによっては使用できないこともあります。
2.AI事例検索ツール「AIRI」
ベルシステム株式会社が提供する「AIRI」は、メール返信において問い合わせの文をコピペすることで、文章をAIが解析し過去の対応文の中から同じ又は近い内容のものを探し出すことができます。
【画像出典】ベルシステム株式会社 AI事例検索ツール「AIRI」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://ai-r-i.com/
問い合わせ件数を数値化、推移をグラフにすることができますので営業支援ツールとしても利用が可能です。
3.AIでクレームをチェックする「ToDo監視」
株式会社SRA東北のサービス、ToDo監視は特定のメールアドレスに届くメールをリアルタイムに監視し、依頼・催促といった意図のメールを探し出しユーザーに通知します。
メッセージツール「Slack(スラック)」を通して「依頼」「催促」「緊急」といった意図がある文章を検出し以下のように通知メールが送信されるシステムです。
【画像出典】株式会社SRA東北 メール監視エージェント「ToDo監視」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.sra-tohoku.co.jp/todo
4. AIが最適なテンプレートを選択する「Re:lation(リレーション)」
株式会社インゲージが提供する「Re:lation(リレーション)」は返信テンプレートから最適なものを自動で選択する「AIレコメンド機能」が搭載されています。
【画像出典】株式会社インゲージ株式会社「Re:lation(リレーション)」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://ingage.jp/relation/ai-recommend
メール・電話・LINEなど、複数チャネルの問い合わせを一画面に集約し、複数の社員で共有・管理できますので、一人ひとりの社員が抱えている案件を「見える化」できます。
AI同士でメールをやり取りする時代が来る?
AIでメール作成を効率化できるツールをご紹介してきました。
メール作成を効率化することで、今までメールに費やしていた時間を短縮でき他の業務に集中することが可能です。
お互いAIが作成したメールをやり取りする時代がやってくるかもしれません。
執筆者/田中あさみ
FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
- ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
- Twitter:https://twitter.com/writertanaka19