防災テックの市場規模が急拡大! AI・ドローン・・・最新事例を解説
- 防災テックとは防災とテクノロジーを組み合わせた言葉。AI、IoT・ドローンなどの最新技術・機器を用いて災害を予測、被害の軽減・回避を目指す
- 調査会社Panorama Data Insightsのレポートによると、災害対策システムの世界市場は、2030年には2981億米ドル(2020年の2倍) に達すると予測されている。国内の防災情報システム・サービスの官公庁需要と民間需要の市場規模予測は2027年度までに約1,533億円という予測もある
- 地方自治体や民間企業では防災テックのプロジェクトが進行中。既に災害で役立ったツール・システムも
防災テックとは? 市場規模が急拡大
防災テックとは防災とテクノロジーを組み合わせた言葉です。
AI、IoTなどの最新技術やドローンといった機器を用いた災害の予測を始め、情報共有や発信などにより被害の軽減・回避を図ります。
近年自然災害の頻発・激甚化が指摘されています。2021年の国土交通白書によると、2019年の豪雨災害といった「津波以外の水害被害額」は統計開始以降最大額を更新しました。
【画像出典】国土交通省「国土交通白書 2021災害の激甚化・頻発化」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r02/hakusho/r03/html/n1112000.html
自然災害による死亡者数・行方不明者数も2011年の東日本大震災以降、増加傾向にあります。
【画像出典】国土交通省「国土交通白書 2020自然災害の頻発・激甚化」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1115000.html
上記のように頻発・激甚化する災害に対して、内閣府は2020年5月に「防災×テクノロジー」のタスクフォース(特別作業班)を設置しました。
6月にはタスクフォースのとりまとめの資料が公開され「近年、頻発、激甚化する災害に対して、より効果的・効率的に対応していくためには、新たなテクノロジーを積極的に活用していくことが重要」として今後の取り組みが記載されています。
取り組みには①災害リスク・避難情報の提供、②被害状況の把握、③被災者支援制度のデジタル化、④共助による避難施設の確保など、⑤通信の冗長化の5つがあります。
【画像出典】内閣府防災情報のページ「『防災×テクノロジー』タスクフォースのとりまとめについて」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.bousai.go.jp/pdf/0605taskforce.pdf
災害対策システムの世界市場規模は急拡大?2030年に2981億米ドルの予測
調査会社Panorama Data Insightsが2021年12月17日に発表したレポートによると、災害対策システムの世界市場における、2021年から2030年までの予測期間中の年平均成長率は(CAGR)7.4%でした。
同レポートでは、2030年には2981億米ドル(2020年の2倍) に達すると予測されています。
防災テックは国内でも市場の拡大が予測されています。
2023年1月に公表された株式会社シード・プランニングのプレスリリースによると、日本国内の防災情報システム・サービスの官公庁需要と民間需要の市場規模予測は2027年度までに約1,533億円市場に発展するという推計でした。
具体的に防災テックとはどのようなものなのでしょうか?3つの事例を見ていきましょう。
地方自治体や民間企業の防災テック事例3つ
- 株式会社ウェザーニューズの防災チャットボット「SOCDA」
- 愛知県豊川市の防災ドローン航空隊「SKY GUARD FOX」
- 大分県が防災危機管理情報サービス「Spectee Pro」を導入
1.株式会社ウェザーニューズの防災チャットボット「SOCDA(ソクダ)」
防災チャットボット「SOCDA」は、災害時の情報収集・情報発信や安否確認などに活用できます。
「SOCDA」は既に多くの地方自治体で実証実験が行われています。例えば2019年の千葉県の台風による災害 では、9,032件の問い合わせに対してAIが自動回答を行いました。
被災者からは「罹災証明について」「交通情報・停電件数」「ビニールシートが欲しい・業者を紹介して欲しい」などの問い合わせがありました。
今後は自治体ごとにシステムを導入し、運用していくという方針で社会実装を進めていく予定です。
2.愛知県豊川市の防災ドローン航空隊「SKY GUARD FOX」
愛知県豊川市では、2017年に災害時の被害状況を的確に把握するため、災害情報収集機器整備事業として、防災用ドローンを導入し災害情報収集能力の強化を図っています。
ドローン操縦には資格や免許は不要ですが、操縦技術を習得する必要がありますので、豊川市は「防災ドローン航空隊」を結成し、活動を開始しました。2020年度5月時点で、国土交通省の許可・承認を得るための飛行経験10時間以上を達成した隊員は54名です。
これまで、山岳救助訓練、水難救助訓練、火災原因調査、総合防災訓練、地区防災訓練などの実績があり、他自治体との連携も行っています。
【画像出典】豊川市企画部防災対策課「豊川市防災ドローン航空隊について」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.city.toyokawa.lg.jp/kurashi/anzenanshin/bosai/bosaitaisakukadoron.files/doronkoukutai.pdf
3.大分県が防災危機管理情報サービス「Spectee Pro」を導入
大分県では、2020年にAIによる防災危機管理情報サービス「Spectee Pro」を導入し県のシステムと連携しています。
同サービスは複数のSNS情報から、AIを活用し「デマ情報」を排除するなどの情報解析で正確に緊急情報を配信し、被害状況を地図上に可視化できるものです。
【画像出典】国土交通省「国土交通白書 2023デジタル実装の現在地と今後への期待」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r04/hakusho/r05/html/n1122c02.html
国土交通省の「国土交通白書 2023」には、「『令和2年7月豪雨』時には、同サービスを被害状況の情報収集に際し活用し、土砂災害等による孤立からの救助や安否確認などを求める投稿を収集・リプライして被害状況の確認や適切な連絡先を伝えるなど、救助に活用することができた」と記載されています。
さらに、大分大学などが開発している災害情報共有活用プラットフォーム「EDiSON(エジソン)」と県のシステムを連携し、ドローンで撮影した災害現場の状況を確認することが可能になりました。
まとめ
防災とテクノロジーを組み合わせた「防災テック」は、既に導入されている地方自治体も存在します。
テックの力で、自然災害の被害を回避・防止できる未来がやってくるかもしれません。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。CFP(R)相続・事業承継科目合格。全科目合格に向けて勉強中。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
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