【カオスマップ第4版】不動産テックの「管理業務支援」領域にはどんなものがあるの?

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【カオスマップ第4版】不動産テックの「管理業務支援」領域にはどんなものがあるの?

カオスマップの「管理業務支援」とは

2018年11月28日、一般社団法人不動産テック協会の設立が発表となり、同時に協会主導により不動産テックのカオスマップが第4版へと更新されました。今回、107の追加と17の未掲載で結果的に90の増加、掲載企業・サービス数が263となり、第3版の1.5倍ほどの数となっています。12ある各カテゴリーの定義付けも改めて行なわれ、不動産テックの盛り上がりを受けて業界の全体像が整理された印象です。

これを機にSUMAVEでは複数回に分けて、各領域についてどのようなサービスがカテゴライズされているのか詳細に見ながら解説をしていこうと思います。今回は不動産業界の中でも主要業務ともいえる「管理業務支援」のカテゴリーを見ていきます。このカテゴリーは掲載数が第3版の33から41となり、「不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス、ツール」と改めて定義付けられています。

ここでいう“PM”とは「プロパティマネジメント」のことで、不動産のオーナーから委託を受け、オフィスビルや商業施設などの運用管理を代行し、不動産の収益を最大化する業務のことです。しかし、今回「管理業務支援」にカテゴライズされている各サービス・ツールを見ると、PMにとどまらないものも含まれています。実際協会のコメントでも、「ちょっと違うカテゴリーに入っているな、と感じる場合があるかもしれませんが、そういったところはご意見をいただきながら、精査できれば」とあり、協会の設立と併せ、定義付けもこれからに期待したい部分もあります。その前提を理解いただきつつ、実際にどんな企業やサービスがあるのかを見ていきましょう。


不動産テックカオスマップ

画像出典元:一般社団法人不動産テック協会HP

属するサービスのトレンド

今回「管理業務支援」に掲載された41の企業のサービスやシステムをそれぞれ見ていくと、メインとなっているのは、不動産や顧客の情報の管理・運用の一元化・効率化を支援するサービスやシステムです。この状況は第3版までと同じで、情報をデータベース化することで、共有できていなかったことで生まれるムダを削減し、最終的に不動産を最短で有効活用しようというものです。

また今回新たに追加されたものに限って見ると、最も多くを占めるのが建築現場や施工を管理する企業やサービス・システムです。こちらも現場の情報をデータベース化し、現場や出先でもスマホやタブレットで管理・運用できるものがいくつも出てきています。

今の最先端技術のトレンドを反映したサービス・システムが出てきているのも、第4版の特徴です。例えば、労働人口の減少問題は不動産業界も例外ではありませんが、その解決策の1つになるかもしれないと期待されているAI(人工知能)を活用したサービス・システムも出てきています。他にも、東京オリンピックに向けさらに盛り上がるであろう民泊関連、インターネットの外でも生活が便利になるのを実感できるスマートデバイス関連、世の中に呼びかけ共感した人から広く資金を集めるクラウドファンデイング関連のサービスやシステムがカテゴライズされています。

ではここからさらに、各サービス・システムについて詳しく見ていきましょう。

情報の管理・運用サービス

不動産/顧客情報の管理・運用

不動産や顧客情報の管理・運用の一元化・効率化を支援するサービスは、最近の傾向としてアプリのインストールを必要としない「クラウドベース」のものが増えています。従来は専用サーバーの設置などが必要でしたが、クラウドベースであればそれらは不要になります。また、外出先からもモバイルでアクセスすることも容易なので、業務の効率化を図ることができます。

その中で、企業向けビジネス(=to B)では不動産所有企業にクラウド上で情報が一元管理できるソリューションを提供するアビームコンサルティング株式会社の「ACRES」や三菱地所リアルエステートサービス株式会社の「CRE@M」、クラウド上で賃貸関連情報の管理ができるMKI(三井情報株式会社)の「MKI Property Manager」やBambooboy株式会社の「ReDocS」、不動産オーナーに不動産の情報管理から広告コンテンツ管理、集客、接客までを提供できる株式会社いえらぶGROUPの「いえらぶCLOUD」などがマップに含まれています。

一方の一般消費者向けビジネス(=to C)では、賃貸契約者に物件情報から天気や周辺のお得情報などまでの総合サービスが提供でき、不動産管理ビジネスを超えたチャレンジができるパレットクラウド株式会社の「パレット管理」もあります。

ReDocSの画面例

「ReDocS」(Bambooboy株式会社)の画面例【出典】ReDocSのホームページより:https://theredocs.com/situation/implement

なお、クラウドサービスにおいては一般的にデータの所有権がサービス提供側にあり、ユーザー企業に情報が蓄積されない、サービス自体が停止してしまうとデータが失われてしまうという難点があります。その点を指摘し、クラウドではなく自社データベース構築の仕組みの提供をウリとしたリングアンドリンク株式会社の「@dream-Progre」のようなサービスも出てきています。

それぞれのサービスの特徴をしっかりと把握し、自社にとってのメリットとデメリットを見極めた上で選択する必要がありそうです。

建築/施工情報の管理・運用サービス

次に、第4版で掲載が最も増えた建築や施工に関しての情報が管理・運用できるサービス・システムを見ていきましょう。どれも、これまで紙とデータの両方を使って煩雑な管理をしていた情報を一元化することを目的としており、職人など現場の人間との電話連絡をチャットで効率化、建築現場などの出先でもアプリ1つで情報を管理・運用できる、というのは共通点として挙げられます。

株式会社MetaMoJiの「eYACHO」、株式会社穴吹カレッジサービスの「かん助」、株式会社ダイテックの「現場情報共有クラウド」、コムテックス株式会社の「Kizuku」、CONCORE'S株式会社の「Photoruction」が、それに当たります。

さらにこうした機能をベースにしながら、施主と施工状況の共有やプレゼンもできる株式会社オクトの「ANDPAD」や、無料で使えるのがウリの株式会社メディオテックの「ieell.jp」などもあり、各社とも差別化のためにどのように独自性を出していくか、今後の展開に注目です。

社会トレンドを踏まえたサービス

AIを活用するサービス

他にも、最先端技術を素早く取り入れたサービスも出てきています。この先の労働人口の減少により、不動産業界も労働環境が劇的に変化する未来が予想されます。そこでAI(人工知能)をどう活用していくかは取り組むべきテーマの1つでしょう。株式会社クラスココンサルファームの「くうしつたいさくん」は、オーナーへの空室改善提案書をAIが自動作成するサービスです。また、2次元の図面から情報を読み取り、数量データなどを解釈できる人工知能を搭載したクラウド型のAIエンジン、CONCORE'S株式会社の「aoz cloud」。こちらは2018年の実用化を目指し、現在は精度向上のための実証実験(βテスト)を行っているところだそうです。特に煩雑な書類仕事が多い不動産業界において、AIの活用は期待される部分ではないでしょうか。

民泊向けサービス

また、2020年のオリンピックに向け伸び続けるだろう民泊。インバウンド消費を含め、今後も成長が期待できる分野です。matsuri technologies株式会社の「m2m Systems」は民泊マッチングサービスのAirbnbと連動し、予約客への返信や見込み客へのメッセージを自動化・効率化するサービスです。訪日外国人観光客の増加と国内の人口減少の両方を見据え、賃貸物件をより高収益な宿泊施設として開業し直そうというのが株式会社VSbiasの「エアリノべ」。ビッグデータを使って高精度な収益シミュレーションを実施。それに基づき、高収益な物件の紹介や人気を集めるリノベーションプランの提案・施工、運用サポートまでをワンストップで提供するサービスです。新たな収益事業として期待される民泊だけに、効率的な運用ができるサービスへの注目は引き続き高くなりそうです。


m2m Systemsのサイトキャプチャ

「m2m Systems」(matsuri technologies株式会社)【出典】ホームページより:https://www.m2msystems.info/

物件管理のためのスマートデバイス

スマートスピーカー元年と言われた2017年を経て増えてきたスマートデバイスは、物件管理との相性が良いモノが多くあります。注目を集めるのは家の外でも、家のことが分かったり、操作できたりというデバイス。例えば、スマホで自宅の戸締まりが確認できる株式会社Stroboの「leafee for 賃貸」は、今後スマートロックやスマートリモコンなどとの連動を予定しているといいます。わざわざ現場に行って確認する必要も、施錠しに行く必要もなくなるので、大幅な労働削減につながりそうです。

今後の管理業務支援に求められるもの

国内の不動産業界全体に共通してあるのが、各不動産業者が持つ情報が不透明で共有がされない、「情報の不平等」という課題です。そのため、今回見てきたように情報の管理・運用サービスが数多くあります。

不動産業界にはすでに「REINS(レインズ)」という不動産情報基盤があります。まだまだ、情報の網羅性や更新性、登録率などクリアすべき壁もありますが、これを使って中古マンションの情報を透明化・共有しようとする動きもあります。こうした基盤が整備され活用の動きが本格化すれば、情報の不平等も解消されていくかもしれません。

また、近年は職人不足とも言われています。今回の第4版で追加された「建築/施工情報の管理・運用サービス」は、そうした背景を受けたものでしょう。日本全体で少子高齢化による労働力不足が叫ばれる中で、熟練工や職人の確保はますます困難を余儀なくされることは想像に難くありません。不動産テックの活用による効率化、省人化が進むことで、こうした人材の有効活用を考えていくことが必要な時期が近いのかもしれません。

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