【2019年版】データから見る不動産投資市場分析

2019.08.06
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【2019年版】データから見る不動産投資市場分析

はじめに

近年、人口の減少や空き家の増加、供給過剰、20xx年問題といった、不動産業界を取り巻く課題を前に、不動産投資市場の行方を不安視する声があるようです。

しかし実際にはインバウンド需要の拡大や、不動産投資とFinTechの融合、サブスクリプション型ビジネスモデルの発展など、今後の不動産投資市場の盛り上がりを予感させる動きも見受けられます。

そこで、今回は不動産投資とFinTechの融合に着目しつつ、2018年から2019年までの不動産投資市場の変化を分析。「不動産投資テック」の領域で活躍する企業や、これから参入を考えている企業はどのような成長戦略を立てていくべきかを考察していきましょう。

2018年の不動産投資市場を振り返る

2018年に報じられた不動産投資関連のニュースを振り返ると、シェアハウス投資問題や金融機関の不正融資、建築基準法違反といった、投資家にとってインパクトの大きい話題が複数取り上げられました

・シェアハウス物件を販売する会社の自転車操業の発覚と破綻
・不動産業者と金融機関による顧客エビデンスの改ざんと不正融資
・アパート建築会社の建築基準法違反が発覚
・上記事態を受け、全国地方銀行が行った不動産投資向けの融資実態を金融庁が調査
・投資用物件に積極融資を行っていた金融機関と反社会勢力の繋がりが判明

中でも大きく報じられたのが、シェアハウス投資問題が発端となり発覚した、金融機関による不正融資事件。金融庁は次々に発覚する不適切な融資に業を煮やし、全国の地方銀行で行われた不動産投資向け融資について徹底調査を開始。その結果、複数の金融機関に立ち入り検査や行政処分が行われました。

2019年、押さえておきたい変化のポイントは

これら一連の流れを受け、これからの不動産投資市場に対して消極的な見方をしている人も少なくないようです。投資用不動産情報サイト「健美家」が個人投資家を対象に行った「不動産投資に関する意識調査」によると、昨年よりも7.5ポイント多い59.8%の個人投資家が物件購入の際の資金調達において「融資環境は1年前と比べて厳しくなった」と答えています。

不動産投資に関する意識調査【出典】不動産投資と収益物件の情報サイト健美家より 第10回不動産投資に関する意識調査【URL】https://www.kenbiya.com/info/user_anquite_result201810.html

また、2019年3月28日に金融庁が公表して話題を呼んだ「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果について」では、ローンの融資実態についての調査結果をもとに、今後の方向性を以下のように示しています。

【金融機関に求められる対応】

・投資用不動産向け融資に取り組む場合には、紹介業者・サブリース業者・管理業者等の業務の適切性を検証するなど、取引スキームのリスク評価を行い、これに基づき取引方針を明確に定めること。

・融資審査において、物件の売買価格の妥当性を検証するとともに、事業性融資と判断される場合には、物件の生むキャッシュフローを基礎として融資全期間にわたる収支シミュレーションを行うこと。

・顧客対応を紹介業者・保証会社に任せきりにせず、自らが顧客とのリレーションを十分に構築し、事業・収支計画、顧客の知識・経験・リスクの理解度や財産・収入の状況等について主体的に把握したうえで、必要なリスク説明を行うこと。

・本稿の事例等を参考に、あらためてポートフォリオ(運用する金融資産の組み合せ)における投資用不動産向け融資の実態把握・リスク評価を行い、必要な場合には、これまでの顧客保護やリスク管理のあり方の適切性について点検を行うこと。

【金融庁の取組み】

・個別の金融機関からの回答を分析したうえ、一部の金融機関に対してはより詳細な実態把握を実施中。必要に応じ立入検査も活用しつつ、深度あるモニタリングを実施。

・適切な管理態勢に基づく投資用不動産向け融資が金融機関に浸透し、投資家に十分な注意喚起がなされるよう、当庁の問題意識を幅広く金融機関に発信するとともに、関係行政機関とも引き続き必要な連携を実施。

(引用:金融庁 投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果についてhttps://www.fsa.go.jp/news/30/20190328.html

つまり、金融機関に対し顧客保護を優先するよう強く求めると共に、金融庁自身もこれまで以上の監視と関係各所との連携を行うとしたのです。こうした変化を見れば、投資家達が「今年と昨年で不動産投資市場における雰囲気が変わった」と感じていたとしても、何ら不思議はありません。

融資は鈍るも不動産投資市場は依然として活況

ただ融資が引き締められているだけなら、不動産投資の市場規模は縮小傾向にあるはずです。しかし不思議と「不動産投資市場そのものが伸び悩んでいる」といった報道は多くありません。むしろ不動産投資市場は依然として活況であるとする向きのほうが多い状況です。
例えば、一般財団法人日本不動産研究所が機関投資家へ行ったアンケート「今後1年間の不動産投資に対する考え方」によると、「新規投資を積極的に行う」と94%が回答するなど2018年よりも4ポイント増加しています。

今後1年間の不動産投資に対する考え方

【出典】一般社団法人日本不動産研究所第40回不動産投資家調査より【URL】http://www.reinet.or.jp/?p=22306

J-REIT市場の動向を見ても2018年に起きたネガティブな事案の影響を受けたようには見受けられません。
つまり、個人投資家向けの融資は以前より慎重に実施される傾向にある現在も、大口の不動産投資を行う機関投資家は不動産投資市場をまだ活況だと見ているのです。

J-REIT保有不動産額・時価総額・銘柄数【出典】一般社団法人不動産証券化協会 ARESマンスリーレポートより【URL】https://j-reit.jp/report/

インバウンド需要を見込んだ各地の再開発

多くの課題を抱えながらも、なぜ不動産投資市場は前向きなのでしょうか。メディアで見かける「不動産バブル崩壊」などといったセンセーショナルな文言とは裏腹に、直近で発表された公示地価や路線価も比較的に好調な結果でした。

理由はいくつか考えられますが、主な要因は「インバウンド需要」です。

訪日外国人客数の推移【出典】野村総合研究所「日本の不動産投資市場2018より【URL】https://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2018/cc/1127

国内のべ宿泊数の推移(国内客/外国人)【出典】野村総合研究所「日本の不動産投資市場2018より【URL】https://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2018/cc/1127

野村総合研究所の「不動産投資家調査」によると、訪日外国人数は2011年以降年々急増しており、それに伴い、民泊やホテルなど宿泊施設での外国人宿泊数比率も2011年の4.3%から2017年の15.7%まで毎年増加しています。

また、今後予定されている「東京オリンピック」「大阪万博」「カジノ誘致」といった大きなイベントに合わせて、商業用不動産を始めとした再開発が日本各地で活発に行われています。

特に、大阪「夢洲」は万博の開催が決定したことで、カジノ誘致の最有力候補ともいわれています。大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)が2018年12月に公表した、「夢洲駅タワービル」の建設を中心とした大規模な開発構想も話題です。

成長が期待される不動産「投資」テック

これまで見てきたように、実際の不動産投資市場は、BtoBやBtoC領域における投資マネー流入により底上げされている状況です。そう考えると、もはや個人投資家の入るスキは無さそうだと感じる向きもあるかもしれません。事実、個人の不動産投資で開発事業に関わる機会は多くないでしょう。

ただ、そもそも昨年の不動産投資市場は異例といえるほどに、ネガティブなニュースばかりが注目されていました。その分、個人投資家をポジティブにさせる話題がかき消されてしまっていたのです。
改めて、不動産投資市場における2018年のポジティブな話題を整理してみましょう。

不動産投資のAIシミュレーターが登場
・東京の地価がバブル崩壊後における最高値を更新
VR・ARを導入する不動産会社やサービスの拡大が顧客の購買意欲向上に貢献
・大阪万博の開催決定による投資マネーの流入
・IT重説の実施件数が増加傾向
・サブスクリプション賃貸サービスのリリース

このように「未来が変わるかもしれない!」と期待させる話題は多くありました。少なくとも「不動産投資テック」市場は、個人投資家も不動産関係者も、今から動向を追っていきたい市場です。矢野経済研究所の公表したレポートでは、2020年度までの不動産テック市場は2017年度比64.1%増の6,267億円に拡大すると予測しています。

不動産テック市場規模推移と予測【出典】矢野経済研究所 不動産テック市場に関する調査より【URL】https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1889

上図のようにBtoC、つまり消費者向けの不動産テック市場は大幅に拡大する見込みです。昨今の不動産市場はIT化が随分と進んだ印象がありますが、その中でも不動産投資×FinTech市場、つまり「不動産 × 金融」分野は引き続き拡大していくと言えるでしょう。

ではこの先、多くの個人投資家の人気を集め、盛り上がっていきそうな不動産投資テックサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。

不動産クラウドファンディングによる低リスク投資

最近注目を集めるようになった不動産投資に「クラウドファンディング」があります。小口の不動産投資ができるため、有事の際も被害を最小限に抑えることが可能です。
クラウドファンディングには主に、寄付型、購入型、投資型の3つのタイプがあります。

中でも投資型クラウドファンディングはさらにファンド型、貸付型、株式型に分けられ、市場ではこれらが拡大の一途を辿っています。矢野経済研究所が2018年12月3日に発表した「国内クラウドファンディング市場の調査」によれば、投資型クラウドファンディングの市場は、更なる拡大を続ける見込みだと発表しています。

国内クラウドファンディングの新規プロジェクト支援額(市場規模)推移【出典】株式会社矢野経済研究所 国内クラウドファンディング市場の調査より【URL】https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2036


2018年に報じられた不動産投資市場における問題のほとんどは、個人が行う実物資産への投資に関わる案件でした。しかし、それ以外の不動産業界を眺めてみれば、実は市場は拡大を続けていると言えるのです。特に、最近台頭してきた投資型不動産クラウドファンディングは、1万円から始められる手軽さや、地方再生や空き家活用といったコンセプトを設けるなどの新しさが人気です。

例えばクラウドリアルティでは投資だけを目的としない、プロジェクト重視のクラウドファンディングを運営しています。プロジェクト内容や出資金の使途などにおける透明性が特徴です。

Crowd Realtyサイト【出典】Crowd Realtyサイトより【URL】https://www.crowd-realty.com/

また最近では金融機関が利用する保証会社と提携して、投資家の債務を保証するクラウドファンディングも登場しています。不動産クラウドファンディングは、今まででは考えられないほど低リスクで運用できる不動産投資なのです。

人工知能によるキャッシュフローシミュレーション

では、既に不動産を所有して運営している人の間で広がっていきそうな不動産投資テックサービスにはどういったものがあるのでしょうか。
一つ方向性として考えられるのは「賃貸事業の最適化」です。

例えば不動産価値を見直すなら、不動産投資のAIシミュレーターが存在します。コスモスイニシアでは、一棟や区分所有マンションのキャッシュフローやローン返済リスク、そして売却額や資産価値を全てAIが予測分析するサービスを提供。WEB環境さえあれば無料で利用できる、業界初の不動産投資シミュレーターとして、既に多くの人が利用しています。

VALUE AIサイト【出典】VALUE AIサイトより【URL】https://value-ai.jp/

また会計や法人化、財務分析などをIT化して賃貸事業を効率化したい、というニーズも多いでしょう。
会計ソフトや家計簿アプリを提供するマネーフォワードでは、日々の仕訳や確定申告の自動化はもちろん、経営分析まで行えるソフトを提供しています。直感的に操作できるため、それまで手書きやエクセルでの会計管理で苦労していた人を中心に、支持を集めているツールです。

おわりに

不動産投資を行なう際は、利回りやキャッシュフロー、そして税金や資産価値など非常に多くの数字を扱わなければなりません。不動産投資を始めるにあたって二の足を踏んでしまいがちな煩雑な契約手続きも然りです。

そこで近年では不動産の契約自動化という構想も徐々に台頭してきています。たとえば仮想通貨における仕組みの一種である「スマートコントラクト」により、過去の取引履歴や修繕履歴をもとに契約から登記までを自動化しようという考え方もその一つです。

不動産投資の最新状況を見る限り、市場に課題がないわけではありません。しかし、だからといって成長が全く見込めない市場になってしまったかというと、決してそうではない、というのはこれまで見てきた通りです。また、課題が明確になったことで、それを解決する新たな不動産投資テックサービスも登場してくるのではないでしょうか。「テック化」は、今後の不動産投資市場のさらなる成長や発展戦略には欠かせないミッションと言えるのかもしれません。
 

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