急速な広がりをみせる!「不動産型クラウドファンディング」を徹底解説!

- 不動産特化型クラウドファンディングへの投資は、投資家、参入企業ともに増加中
- J-REITとの違いは大きく3つで、投資先・投資額・流動性の違い
- ハイリスク・ハイリターンであるため、投資先の判断がリスクを抑えるポイント
資産運用の方法として注目が集まっている「クラウドファンディング」。なかでも不動産を対象とした「不動産特化型クラウドファンディング」は、急速な広がりを見せています。
クラウドファンディング(ソーシャルファンディング)とは、「crowd=群衆」「funding=資金調達」の言葉が示す通り、不特定多数の人から資金の提供などを募る手法。新製品の開発資金やイベントを開催するための経費など、資金調達の目的はさまざまで、近年は不動産投資にも活用されるようになってきました。
ここではクラウドファンディングについての概要と、不動産投資分野で活用されるJ-REIT(ジェイ・リート)との比較、今後の展望を考えてみたいと思います。
クラウドファンディングの原点と市場
クラウドファンディングの原点は"寄付"。つまり「こんな商品を開発したい」「こんな映画を製作したい」という夢や目標に対し、共感した人が少額の"寄付"を行なって資金援助をするということです。あるいは、イベント開催にあたって売り出された関連商品を購入することで、資金援助をするという方法もあります。前者を「寄付型」、後者を「購入型」などと分類します。しかし、これらはいずれも資産運用を目的としたものではありません。
クラウドファンディングが投資家の注目を浴びたのは、リターンを伴う「貸付型」「投資型」が生まれたことからです。融資を受ける側からみると、設立されて間もない会社や担保設定ができない案件など、銀行からの融資が難しい場合でも、返済能力さえあれば資金を集められるのが大きな利点となっています。
発祥の地・アメリカではいうに及ばず、日本国内市場も急速に拡大していて、矢野経済研究所2016年8月発表のデータによると、2012年度の71億6,000万円から16年度には477億8,700万円と、なんと6倍以上にも伸びる勢いです。
この波は、当然のごとく不動産市場にもやってきています。
増加する不動産特化型クラウドファンディング
投資家の数は増加中で、「OwnersBook」「TATERU FUNDING」「Lucky Bank」「maneo」「Crowd realty」など、不動産特化型のクラウドファンディング・サービスが軒並み会員数を伸ばしています。法改正によって参入がしやすくなったことから、新規参入企業のさらなる増加が見込まれています。
リターンを伴うクラウドファンディングには「貸付型」と「投資型」があると述べましたが、不動産特化型のほとんどは「貸付型」にあたります。これは、クラウドファンディング会社が資金を集めて不動産プロジェクトに貸し付け、その利益を投資家に分配するシステムです。プロジェクトを実施する法人や個人に直接投資する「投資型」と区別するために、「ソーシャルレンディング(lending=貸付)」とも呼ばれます。
以降では、特記のないかぎり、クラウドファンディング=不動産特化型の貸付型クラウドファンディングとします。
J-REITとの違い①:投資先
不動産証券化による資産運用の方法としてよく知られている「J-REIT」との違いをみてみましょう。
投資先の利益から投資額に応じてリターンを得るという意味では、J-REITもクラウドファンディングも変わりがありません。違いは、J-REITでは投資先が「不動産投資法人」であるのに対し、クラウドファンディングでは特定の不動産プロジェクトや不動産物件であることです。
J-REITでは、投資家が自ら投資物件を指定するのではなく、投資信託のように資金を預かった不動産投資法人が複数の投資先に分散投資します。投資先が分散されていることでリスク回避の面ではメリットがありますが、大きなリターンは得られにくいという側面も持っています。
一方、クラウドファンディングでは個別株を買うように自分で投資物件を指定するので、そこから得た利益は直接的にリターンに影響します。同時に、リスクについても直接的になります。複数の物件に分散投資すれば、J-REITと同じようにリスクを分散することも可能ですが、すべては自分の判断で行う必要があります。
一般的に、クラウドファンディングのほうがJ-REITより大きなリターンが期待できます。投資先によって差はありますが、年率10%を超える利回りが得られるものもあります。
J-REITとの違い②:投資額
また、クラウドファンディングはJ-REITより少額から投資できます。J-REITが10万〜30万円の価格帯がメインであるのに対し、クラウドファンディングでは10万円以下のものが中心です。「OwnersBook」や「TATERU FUNDING」では1口1万円からの投資を謳っています。
インターネット上で簡単に投資できるのも魅力です。「TATERU FUNDING」では、スマートフォンのアプリから投資することも可能です。
J-REITとの違い③:流動性
流動性の面にも注目してみましょう。一般的に不動産を対象とした投資は、投資家の都合でプロジェクトを中止したり、不動産を勝手に売却したりできません。中途解約ができないので、株式などのほかの投資と比べて流動性が低いとされます。
クラウドファンディングは中途解約ができないのが一般的で、売買もできないので、流動性は低いと言えるでしょう。ただし、投資型に近い「TATERU FUNDING」は中途解約が可能となっています。
一方、J-REITは証券取引所に上場しているため、売買を行なうことが可能です。中途解約できないのは同じですが、売買できることで流動性を確保しているわけです。ただし、上場しているがゆえに、価格が大幅に変動する可能性もあります。
投資リスクを最小限にするためには
総合的に見ると、不動産特化型クラウドファンディングはJ-REITよりも「ハイリスク・ハイリターン」といえます。リスクを最小限にするために、不動産担保をとったり火災保険や地震保険に加入したりなど対策がとられていますが、根本的には投資先を吟味することが一番大切です。投資先となる不動産物件やプロジェクトの投資価値を、正しく判断することが必要になるわけです。そこで重要になってくるのが、不動産とITが結合した「不動産テック」です。
現状では、クラウドファンディング・サービスを取り扱う企業側が物件の投資価値を判断してウェブサイトに掲示し、それらのなかから投資家自身が投資先を選択するという流れになっています。事実上、投資家はその情報を信用するしかありません。
では、ここに不動産テックのテクノロジーである「ビッグデータ」と「AI」という要素が加わったらどうでしょう?
不動産テックがクラウドファンディングのリスクを下げる
ビッグデータの活用により、投資先となる不動産物件の詳細な情報はもちろん、不動産を開発している企業そのものの信頼性などの情報までも得ることができ、AIによって価値がより正確に判断されるようになります。また、不動産鑑定士をはじめとした人的調査が不要になるので、コストも抑えられます。不動産価格の査定サイトはすでに稼動していますから、遠くない未来に、より正確な投資価値判断が可能となり、クラウドファンディングを利用した投資のリスクは低下していくかもしれません。
全国的に見ると、不動産価格は下落の傾向にあり、投資先としては魅力が薄れてきているのが現状です。地域によっては上昇傾向にあるものの、2020年のオリンピック開催前、あるいは開催後に下落をはじめると予想している不動産業者が大半だともいわれています。
しかし不動産テックを活用することで、優良な投資先を見極めることが可能です。つまり、これらのテクノロジーがさらなる発展をみせることで、不動産に対する投資が効率的な資産運用の手段となり続ける可能性が高まるのです。