【不動産業界基礎用語】“空き家問題”って?

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【不動産業界基礎用語】“空き家問題”って?

なぜ日本に空き家が増えているのか?

不動産業界だけでなく、社会全体の問題として認識されている「空き家問題」。SUMAVEでも折に触れて取り上げてきたトピックですが、ここで一度ポイントを押さえておきましょう。

国土交通省(※1)によると、国内における空き家の総数は、1983年時点で330万戸(空き家率8.6%)だったものが2013年には820万戸(同13.5%)と、この20年で倍増しています。加えて空き家のうち「賃貸用又は売却用」の増加率は減少していますが、長期にわたり誰も住んでいない、完全な「空き家」の増加率は増大しており、その深刻さがうかがえます。

適切な管理が行われていない空き家が増えれば、倒壊などの危険も生じますし、防犯性の低下や景観の悪化等、その地域の住環境に深刻な影響を与える危険性も高まります。

そもそも、どうしてこれほどまでに空き家が増えているのでしょうか? 理由は複数ありますが、最も大きいものは人口の減少、そして少子高齢化と考えられます。

総務省統計局のデータ(※2)を見ると、日本の総人口は2011年(1万2,783万人)以降一貫して減少しており、2018年には1万2,644万人となっています。また2015年には75歳以上の人口が総人口の12.8%を占め、0~14歳の割合(12.5%)を上回りました。

国土交通省の資料を見ると、2013年時点で住宅ストック数(約6,060万戸)は総世帯(約5,240万世帯)に対して16%も多くなっています。既に足りているどころか余っている家の数に対し、さらに人口が減少しているのですから、必然的に空き家は増えていくことになります。

空き家問題

また、2017年には第1次ベビーブームといわれる1947~1949年に生まれた「団塊の世代」が70歳を迎えました。そして今、団塊の世代を含む70歳以上の人口は、2,715万人(※3、2019年9月15日推計)と、総人口の21.5%を占めています。この世代は今の若者と違い、一定の年齢に達すれば新築の持ち家を購入することが当たり前だった人々です。核家族化が進み、「家を継ぐ」という概念が一般的なもので無くなってきているのは周知の通り。そのため、彼らが高齢化によってマンションや老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅のような集合住宅に移住すれば、「それまで暮らしていた広い持ち家=老朽化した一軒家」が空き家になります。

こちらの記事で全国の空き家率について解説していますが、やはり首都圏周辺は空き家率が低く、地方(特に甲信・四国地方)での割合が高いという傾向が見られます。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)では長く転入超過が続き(バブル崩壊後の1994~1995年を除く)、2014年以降は5年連続で10万人を超える転入超過となっている(※2)事実を踏まえると、最近の「都心志向」な若者は、地方の家を相続したとしても、積極的に活用しようとはしていないと考えられます。

※1 出典:国土交通省「空き家の現状と課題」
※2 出典:総務省統計局「統計トピックスNo.119 統計が語る平成のあゆみ」(2020年4月26日発表)
※3出典:総務省統計局「統計トピックスNo.121 統計からみた我が国の高齢者-『敬老の日』にちなんで-」(2019年9月15日発表)

政府が推進する空き家対策・中古住宅市場の活性化

このような状況を改善するため、政府はさまざまな施策を行っています。代表的なものの一つが、2018年4月より国土交通省によって選定された事業者(LIFULL、アットホーム)によって本格運用が開始された「全国版空き家・空き地バンク」。そして2015年5月に全面施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」(※1)です。空家法の制定により、自治体は適切な管理が成されていない空き家について、敷地内へ立ち入り調査を行ったり、助言・指導、勧告等を行ったりといった措置をとることが可能になりました。

国土交通省の発表(※2)によると、空家法施行から4年半が経った今、2019年10月時点で全市区町村の63%で対策計画(空家等対策計画)が策定されています。加えて、周辺の生活環境等に悪影響を及ぼす特定空家等(※3)について、空家法に基づき助言・指導等の措置を実施するケースは年々増えており、市区町村における取り組みの効果として、特定空家等の除去等に至った件数は7,552物件に及んだことが発表されています(2019年10月1日までの累計)。さらに、空家法に基づく措置以外にも各市区町村でさまざまな取り組みが行われてきた結果、2019年10月1日までに約7.7万物件もの空き家の除却等が進んでいるそうです。

また、空き家対策の一環として政府が推進しているのが、既存住宅(中古住宅)・リフォーム市場の活性化(※4)です。

欧米諸国では住宅シェアの大半を占める既存住宅ですが、日本の全住宅流通量に占める既存住宅の流通シェアは約14.7%(2013年時点)。近年シェアを拡大しつつあるものの、欧米諸国の6分の1程度という低水準にあります。

この状況を打破するため、国土交通省は既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた検討を行ったり、質や価値の低下が不安視されるという市場活性化の阻害要因を解消するため、「中古住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」(※5)をとりまとめたりといった施策を行っています。こちらの記事で解説した「安心R住宅」制度もその一環となります。

空き家問題

政府はほかに、インスペクションや性能向上のためのリフォーム及び適切なメンテナンスによって、住宅ストックの長寿命化を図る優良な取り組みに対し、国が費用の一部を支援する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」(※6)等の支援も実施。2020年5月1日には全国の空き家対策をさらに加速させるための支援制度「空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」について、地方公共団体や民間事業者等からの提案を募集(6月10日締切)していたことからも、国が空家対策や既存住宅市場の活性化を、重要な国策の一つとして認識していることが分かるのではないでしょうか。

※1 参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」(2020年4月1日最終更新)
※2 出典:国土交通省の報道発表資料(2020年4月8日発表)
※3 特定空家:以下の状態にある空家のこと(参考:※1 内「特定空家等に対する措置(第14条関係)」)
・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
※4 参考:国土交通省「既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取組み」
※5 参考:国土交通省「中古住宅に係る建物評価手法の改善のあり方検討委員会」
※6 参考:国立研究開発法人 建築研究所「令和2年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業」

トレンドに合わせた新しいサービスも誕生

国や地方自治体が力を入れて取り組む空き家問題。ここにビジネスの芽を見出す不動産テック企業も多く、こちらの記事で紹介しているように、クラウドファンディングや空き家の民泊化等、さまざまな方向から既存住宅市場の活性化を図ろうとする取り組みが行われています。また、空き家問題に関する取り組みは地域の活性化(地方創生)につながるプロジェクトも多いため、こちらの方面からも社会的な関心を多く集めています。

また、関連するリフォーム・リノベーション分野も、ユーザーと業者のマッチングサービスを中心に多くの不動産テックサービスが誕生している、活況な領域となっています。市場のほとんどを既存住宅が占める欧米で生まれた「ホームステージング」が国内での認知を広げつつあることや、ホームステージングの効果をテクノロジーによって低コストで再現しようという企業が出てきたことも、時流を把握する上で見逃せないポイントです。

そして今後注意しておきたいのが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けての変化。先に若者の都心志向に触れましたが、コロナ禍によって少なからず状況は変わるはずです。既に若年層を中心に地方での就職や移住を検討する「地方回帰」の動きが再燃しており、2020年5月31日にはLOCONECT事務局(後援:山口県周防大島町)によって、移住希望者と受け入れ地域をマッチングさせる「オンライン全国移住フェア」が開催され、38道府県・138団体が出展。関東を中心に全国から多くの参加者を集めたそうです。

オンライン全国移住フェアのイメージオンライン全国移住フェアのイメージ。Discordというアプリを使用して開催された【出典】LOCONECT事務局のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000058666.html

不動産業界でも今、IT重説VR内見をはじめ、移動することなく業務を遂行できる不動産テックサービスが注目を集めていますが、「アフターコロナ」「withコロナ」の時代においてはより大きな変化が起こることが予想されます。住まいや働き方に関して人々の意識が大きく変わりつつある事実は、間違いなく不動産業界にも影響を与えるでしょう。新築にさほどこだわらない傾向のある若い世代が地方に散らばることで、既存住宅市場もさらに活性化していくかもしれませんね。

住んでいる場所や働く場所の意味が変わったとき、人々はどこに価値を求めるのでしょうか? まさに今つくられている最中のトレンドとして、今後の政府や不動産テック企業、そして若者の動きを注視していきたいところです。

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