【不動産業界基礎用語】知っておきたい“安心R住宅”制度

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【不動産業界基礎用語】知っておきたい“安心R住宅”制度

はじめに

国を支える基幹産業の一つである不動産業。法人数も多く、国内にある事業所の数はコンビニエンスストアの6倍以上といわれています。この春から関連業界へ飛び込んだばかりという方も多いでしょう。独特の慣例や専門用語が多い不動産業界は、業界入門者にとってはじめは戸惑う部分も少なくないのではないでしょうか。

そんな方々へ向けて、SUMAVEでは今回より不動産専門用語の解説を行なっていきます。毎回一つのキーワードを取り上げて、概説や業界背景など、関連する最新情報もお届けします。不動産業界や不動産テックに興味がある方の参考になれば幸いです。

第一回目となる今回は、中古住宅(既存住宅)市場やリフォーム・リノベーション業界を語る上でぜひ押さえておきたいキーワードの一つ、「安心R住宅」について見ていきましょう。

「安心R住宅」ってなに?

こちらの記事などで度々取り上げていますが、既存物件市場の活性化は、今や社会的な問題とされている空き家問題の解決という視点からも見逃せない、業界全体の課題であり目標といえます。ですが、やはり中古住宅については見えない点が気になるという人も多いようで、リノベーション経験者を対象に実施されたアットホームの調査(※1)でも、購入前の中古住宅のイメージについてポジティブなイメージの方が大きいものの、ネガティブなイメージについても「見えない瑕疵がありそう」(41.1%)、「耐震性がきちんとしているか不安」(39.2%)等の声が寄せられています。
アットホーム株式会社のプレスリリースより中古住宅へのイメージ

購入を検討し始めた当初の中古住宅へのイメージ(アットホーム調べ)【出典】アットホーム株式会社のプレスリリースより
【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000051123.html

こうした声を払拭するためにつくられたのが、「安心R住宅」制度です。

「安心R住宅」制度を創設した国土交通省の定義によれば、安心R住宅とは「耐震性があり、インスペクション(建物状況調査等)(※2)が行われた住宅であって、リフォーム等について情報提供が行われる既存住宅」であり、以下の要件を満たすものを指します。

[1]耐震性等の基礎的な品質を備えている
[2]リフォームを実施済み又はリフォーム提案が付いている
[3]点検記録等の保管状況について情報提供が行われる

「安心R住宅」制度とは、この3つの要件を満たす物件の広告販売時に、国が定めたロゴマークの使用を認める制度です。

なお、安心R住宅の「R」は“Reuse”(リユース、再利用)、“Reform”(リフォーム、改装)、“Renovation (リノベーション、改修)”を意味します。また「安心」とは具体的に以下を意味すると定められています。

●新耐震基準等に適合する
●インスペクションの結果、構造上の不具合および雨漏りが認められず、既存住宅売買瑕疵保険(※3)の検査基準に適合している
・建築基準関連法令等に明らかに違反している既存住宅は対象になりません。
・なお、現行の建築基準関係法令等への適合を保証するものではありません。
・また、将来にわたっての地盤の不同沈下や地震後の液状化について保証するものではありません。

つまり、一定の基準をクリアした既存物件に対して国が“お墨付き”を与えることで、「不安」「汚い」「わからない」といった「中古住宅」にまつわる従来のマイナスイメージを払拭するのが目的。買い手が「住みたい」「買いたい」と思える既存住宅を選択できることを目指しています。

国土交通省「安心R住宅」制度の概要「安心R住宅」制度の概要【出典】国土交通省「安心R住宅」ページより
【URL】http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000038.html

ですが、はじめに挙げた3つの基準を満たしている物件すべてが安心R住宅といえるのかというと、そうではありません。なぜなら、安心R住宅は任意の制度であり、この制度に取り組みたいと手を上げた事業者団体を国が審査し、登録する仕組み。そのため、安心R住宅制度に取り組む団体(一般社団法人など)や事業者(不動産会社)が取り扱う物件の中で、さらにそれぞれの事業者団体が定めたリフォーム実施に関するルールを満たすものに対してだけ、安心R住宅のロゴマークを使用することが許されます。

安心R住宅は国土交通省が創設した制度ですが、その標章(ロゴマーク)はあくまでも国の登録を受けた事業者団体の構成員(会員企業)の責任において、国が定めた要件に適合する旨を表示するもの。各物件に対して国が個別審査を行なっているわけではないという点は、押さえておきましょう。

「安心R住宅」制度のプレーヤーは何をしているの?

登録された事業者団体は定められた要件を満たすため、まず部位ごとのリフォームの基準や標章(ロゴマーク)の使用についてのルールを設定します。そして、それを基に所属する事業者の指導や監督を行います。事業者は基準をもとに物件のチェックを行ない、必要な箇所を売主がリフォームする、もしくは事業者がリフォーム提案を添付することで、安心R住宅の条件を満たし、その品質を担保しているのです。

買い手が安心R住宅を探すには?

物件の買い手が安心R住宅を探す際は、不動産情報サイトや広告でロゴマークを探すか、国に登録された事業者団体に所属する不動産会社に問い合わせる方法があります。国土交通省のサイトに登録事業者団体一覧(特定既存住宅情報提供事業者団体一覧)が掲載されているので、こちらを参考にするのも良いですね。2020年5月現在、登録されている事業者団体は11と決して多くはありませんが、随時更新されているため、今後も徐々に増加していくでしょう。

※1 アットホーム株式会社「中古住宅のリノベーション実態調査」(2019年12月9日発表)

※2 インスペクション(建物状況審査等):目視や計測によって、住宅の基礎や外壁などにひび割れや、雨漏り等の劣化・不具合が発生しているかどうかを調べること

※3 既存住宅売買瑕疵保険:保険法人に登録された宅地建物取引業者、またはインスペクションを行った登録検査事業者が加入する保険。購入した既存住宅の構造耐力上主要な部分、および雨水の浸入を防止する部分等について瑕疵が発見された際、修補等を行った宅地建物取引業者や検査事業者に対して保険金が支払われる

実際の購入者の声とも合致。認知はこれから

宅建協会の意識調査(※)によれば、安心R住宅の認知率は5.3%(“知っている”と答えた人の割合)。「聞いたことはあるが内容は知らない」(17.8%)を合計しても3割以下となっており、ニーズはあるものの、これから認知を拡大していく必要があることがうかがえます。数年前(2017年12月1日)に施行されたばかりの制度であり、登録事業者団体も徐々に増加していることを踏まえると、今後少しずつ安心R住宅のマークを目印に既存住宅を探す人たちが増えていくのではないでしょうか。

不動産テック業界でもリフォームやリノベーションに関するサービスは活況の領域。加えて社会問題の解決という観点から、今後も国は随時中古住宅市場の活性化につながる新たな制度や方針を打ち出してくると予測されます。業界のトレンドを左右する可能性を持つこうした動きや用語は、その都度押さえておくと良いかもしれません。

※ 公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会 「2019年『不動産の日』アンケート調査結果」(2020年1月発表)

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