【不動産業界基礎用語】「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)」とは?

  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE
【不動産業界基礎用語】「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)」とは?

新聞やニュースで目立ち始めたZEBとは何か?

ZEBはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の略称で「ゼブ」と呼びます。文字通り、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を指します。省エネ機能や設備で、消費するエネルギーを減らして、使用する分のエネルギーを建築物自らが創り(創エネ)、エネルギーの消費量を正味(ネット)でゼロにしようという考え方です。

ZEBの定義は国内外で様々な議論や検討がされていますが、経済産業省資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」(平成27年12月)では、ZEBを以下のように定義しています。

先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物


東京都心の自治体などはオフィス街を抱えています。都内全自治体が参画する「オール東京62市区町村共同事業」のまとめ「特別区の温室効果ガス排出量 (1990 年度~2017 年度) 」を見ると、事業所ビル(オフィスビル)などを含む民政業務部部門の排出量が最も多くを占めています。都は2050年までのCO2排出実質ゼロを打ち出すなど、脱炭素の取り組みが加速している一方で、オフィスや昼間人口の増加が問題になっていたのです。

環境省によると、オフィスビルなどからのCO2排出量は2016年度時点で、日本国全体の約2割を占めているといいます。そこで、2018年に閣議決定されたエネルギー基本計画で「2020年までに国を含めた新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す」とされました。

同省ではZEB認証やZEB補助制度などを用意しており、これらはZEB PORTALで情報を確認できます。

【画像出典】ZEB PORTAL:http://www.env.go.jp/earth/zeb/index.html

ZEB、ZEH——エネルギーは分散型へ

これまでエネルギーは一つのところで創られ、提供する集約型が主流でした。例えば電力会社が電気を創り、各人が消費している状態がそれにあたります。それが、地産地消のように自分たちでエネルギーを創り、消費していくという分散型へ変化してきています。

そのなかで、建築物における取り組みがZEBです。また、戸建等の住宅であればエネルギー消費をゼロに近づける考え方にZEH(ゼッチ・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)があります。これもZEBと同じように住宅内を省エネし、ソーラーパネルなどで創エネをし、自家消費することでエネルギー消費の正味を減らすことが目的です。

経済産業省ではZEHを以下のように提示しています。

外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅

ZEB同様、前出の「エネルギー基本計画」にはZEHについて目標を「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の半数以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」としています。


ZEBプランナー制度の存在と、これからの10年

一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が実施している、ZEBプランナー制度というものがあります。

ZEBプランナーとは、ZEB、省エネ建築物のプランニング実績がある事業者のこと。ZEBの導入検討をしている建築主などに向けて広く相談窓口を有し、提案やプランニングを実施する役割をもち、業務支援(建築設計、設備設計、設計施工、省エネ設計、コンサルティング等)を行います。ZEBプランナーとなるには、SIIの公募に対して登録申請が必要です。登録されるとSIIのHP上で公表されます。環境省および経済産業省が実施しているZEBの補助事業についてはZEBプランナーの関与が必須となっているので、今後ZEBの補助事業などを検討している建築主は、登録・公表されているZEBプランナー事業者の確認が必要となります。

これからますます求められてくるZEB。2021年2月には、「公共建築物のZEB化実現に関する意見交換会」が行われ、神奈川県開成町のZEB化事例や、大成建設によるZEBの技術動向などが話されました。地方公共団体も参加し、公共建築物のZEB化を含む大幅な省エネルギー化を図ることが議論されました。すでに新築公共建築物で推進されているZEBは、一般の新建築物でも拡大が進みます。前述の「2020年までに国を含めた新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す」とあるように、これからの10年に注目です。

  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE
PR

こちらの記事もオススメです

都市OS(データ連携基盤)とは?事例・導入自治体、総務省のスマートシティ推進事業を解説
都市OS(データ連携基盤)とは?事例・導入自治体、総務省のスマートシティ推進事業を解説
2023.11.29 業界分析
消費者庁がステマ規制強化!SNSやTV・雑誌などのPRは広告であることを明らかにする対策を
消費者庁がステマ規制強化!SNSやTV・雑誌などのPRは広告であることを明らかにする対策を
2023.11.22 業界分析
スマート家具(スマートファニチャー)に動きあり、ネットと繋がり無限の可能性
スマート家具(スマートファニチャー)に動きあり、ネットと繋がり無限の可能性
2023.11.15 業界分析
改正電子帳簿保存法、不動産業者はどう対応すべき?対象の電子データや取引、対処法について解説
改正電子帳簿保存法、不動産業者はどう対応すべき?対象の電子データや取引、対処法について解説
2023.11.08 業界分析
スマートスピーカーで高齢者を見守り。マンション設備に見守りテックは必要?
スマートスピーカーで高齢者を見守り。マンション設備に見守りテックは必要?
2023.11.01 業界分析
NYで民泊”事実上禁止”になった理由とは?
NYで民泊”事実上禁止”になった理由とは?
2023.10.26 業界分析

記事広告掲載について

スマーブでは、不動産テックに関する記事広告をお申込みいただく企業様を募集しております。どうぞお気軽にお申込みください。