不動産テックとは何か【2020年8月版】

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不動産テックとは何か【2020年8月版】

はじめに

一般社団法人不動産テック協会の定義によると、不動産テックとは、「テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」です。欧米では、PropTech(プロックテック)という言葉が使われていて、国内ではReTech(リテック)Real Estate Tech(リアルエステートテック)といった表記をされることもあります。いずれも、不動産×テクノロジーを意味した言葉です。

画像出典元:https://retechjapan.org/retech-map/

上に紹介した不動産テックカオスマップには、2020年6月15日時点で、352のサービスや企業が掲載されています。それらのサービスや企業は、2020年8月時点で最新となる第6版カオスマップで、12のカテゴリーに分類されています。

  • ローン、保証
  • クラウドファンディング
  • 仲介(業務支援)
  • 管理(業務支援)
  • 価格可視化、査定
  • 不動産情報
  • 物件情報、メディア
  • マッチング
  • VR、AR
  • IoT
  • リフォーム、リノベーション
  • スペースシェアリング

カテゴリー内にどういうサービスがあるかを解説した記事を少しずつSUMAVEで公開しています。興味があるかたはコチラをご覧ください。そうしたサービスやプロダクトを業界では一般に不動産テックと呼びます。そこに、これまでの取材活動で培ってきた視点を付け加え、「不動産テックとは何か」を整理します。

不動産テックは、業界の市場規模を拡大させるためのツール

広義で、不動産にテクノロジーを用いるのが不動産テックです。そこでいう不動産とは、家、物件、部屋、土地、場所などを指しています。「そうした不動産(リアル、実物)が不動産テックには欠かせない」という認識が大前提です。不動産テックというキーワードを専門に扱うWEBメディアとして、その視点を大切にしています。

不動産テックは、不動産業界のなかに存在する1つの領域です。決して、業界、産業、市場として単独で成立するものではないと考えています。「不動産業界のなかに存在せず、不動産とかかわらずして成り立つものでもない」という認識です。

不動産業界のなかで、不動産会社の人とかかわることで、彼らに寄与します。ひいては顧客(エンドユーザー)に。テクノロジーや新しい発想を持って、かかわりを増やしたり広げたりすることで、関係人口が増えるように大きくなるのが不動産テック領域です。

画像出典元:https://www.sumave.com/20200821_19027/

コロナにより、非対面、非接触型の社会ムードが色濃く残るいま、大手不動産会社もオンラインの取り組みに力を入れはじめました。この流れは、不動産テック領域の拡大スピードを速めていると考えています。

情報出典元:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc134230.html

少し古い情報ですが、2017年に総務省が発表したデータを紹介します。1995年、2000年、2005年、2011年の4回にわたって集計されたデータをまとめたグラフです。業種別にICT(情報通信技術)投資の動向をみたとき、不動産業界は、分類不明を除き、農林水産業についで投資額が少ないことがわかりました。投資は約5,550億円です。もっとも額が多い情報通信の産業では、すでに、約14兆円が投じられています。不動産業界には、まだまだテクノロジー活用の余地があります。その筆頭が、オンライン施策をはじめとした不動産テックです。

不動産テックベンチャーのなかには、いわゆる“メジャー7”のうちの6社に自社プロダクトが採用されている企業も。この動向を追いかけるように中小も今後、不動産テックサービスに限らず、オンライン施策やITを使う場面が増えていくでしょう。「そうして不動産テック領域が拡大することで、不動産業界の市場規模を大きくしたい」これは、不動産業界を盛り立てたいという、不動産テック専門メディアの思いです。

コロナをきっかけに需要が高まる非対面、非接触型の業務支援サービスを筆頭に、不動産テック領域は不動産業界のなかで活躍の場を広げています。この動向は、上図の【○→◎】です。「ウィルス感染拡大を防ぎながら、営業を続けるために不動産テックを使う」という業界関係者が増えることでも、業界は活性化していきます。そうしていずれ【◎→★】になっていくことを信じています。

画像出典元:https://www.sumave.com/20180711_5554/

業界をITで活性させようとする取り組みは、ほかにも、いくつかあります。総務省のデータが示すように、ICTを生かせる余地がほかの産業に比べて不動産業界は多い。その旗振り役を務めるべく、不動産テックベンチャーたちは協会を設立しました。2018年7月の出来事です。個社の利益にこだわらず、不動産業界の発展に貢献しようとしています。

画像出典元:https://www.sumave.com/20191122_14631/

デジタル化のはじまる不動産業界を盛り上げたいと考えるVCも登場。2019年末にかけ、不動産や建設といった領域に特化したベンチャーキャピタルの動きも目立ってきました。

画像出典元:https://www.sumave.com/20200717_18270/

2020年になり、新型コロナウィルスが世界中に広がりました。このピンチに活路を求め、ICT活用が進むほかの産業を取材し、気づいたのはテクノロジー活用による現状突破を狙う企業の姿でした。なかには、コロナによって逆境に立たされるリアル店舗、ビジネスモデルにメスを入れ、自ら業態を変えようとする企業もいます。それが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。不動産業界においてDXと呼ばれる取り組みは、次の3ステップにわけることができます。

最初のステップは、アナログな部分をデジタル化するデジタイゼーション(Digitization)です。これを便宜上、D1とします。不動産業界なら、たとえば、紙の契約書を電子化することが該当します。電子契約を会社が契約したクラウド上に保管し、スタッフ全員がアクセスできるよう整備することは、デジタイゼーション(Digitalization)です。これを便宜上、D2とします。

不動産テックには、D1もD2も存在します。そうした取り組みをひとまとめにして、オンライン(デジタル)とし、「それを活用しよう」としてきたのが、これまでの不動産業界です。

冒頭でも紹介した大手不動産会社をはじめ、いま、不動産業界ではオンライン活用が活発です。そのほとんどは、リアルなサービスを希望する顧客への対応はそのままに、それと同等の質でオンラインのサービスを“併用”しています。この取り組みがうまくいっている不動産会社の多くは、D2の整備が進んでいます。

併用に手応えを感じる不動産会社が、いま、チャレンジしようとしているのは、リアルとオンラインの“融合”です。これが、3つ目のステップであるデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation/DX)です。これを便宜上、D3とします。D3は、次の2つの視点が、D1やD2とまったく異なります。

  • 顧客目線に立って体験を考える
  • オンライン(デジタル)をリアル(アナログ)の代替としない

たとえば、接客です。併用に取り組む不動産会社の多くは、対面サービスの代わりとして、オンライン接客に取り組んでいます。これが、リアルとオンラインを融合させるとなると、まったく違った認識が必要です。リアルな接客とオンラインの接客には、それぞれ違ったメリットがあり、その強みを生かすことが重要であると考えます。顧客にとってサービスは、オンラインなのかリアルなのかはどうでもよい。顧客は、自分の状況にあったサービスを使いたいだけであると認識し、その状況に適したサービス(選択肢)1つとして、オンライン接客もリアルな接客も提供すると考えます。

デジタル環境の整備が進む中国では、リアルとオンラインの主従関係が逆転しています。顧客は、つねに、デジタル環境にいるため、オンラインが軸です。上の図では、リアルの円に切れ目が入っています。これは、リアルの意義が薄くなるという意味ではありません顧客は自分の状況にあったサービスを使いたいだけ。リアルとオンラインをわけて考えず、シームレスな1つの体験としてとらえ、それをデジタルにおける競争原則から考えることがポイントであるということを意味しています。その重要性は総務省も指摘しています。

画像出典元:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd102200.html

顧客から選ばれるために企業が活用するのは、リアルな接点です。密にコミュニケーションできる貴重なリアル接点を使って、自社のファンになってもらえるよう、顧客によい体験を提供します。顧客との接点頻度がとぼしい、自動車や不動産などの高額商材の場合も例外ではありません。そこに、リアルなのかオンラインなのかという議論はありません。どちらも必要であり、2つの強みを生かし、「顧客目線に立ったときのよい体験」をどうやって創造するかが焦点です。

まとめ

大前提としてあるのが、「不動産テックは業界の市場規模を拡大させるためのツールである」という認識です。市場拡大は、不動産テック領域が大きくなった結果に過ぎません。不動産会社の人と不動産テック領域の人のかかわりを増やしたり、その輪を広げたりすることで不動産テック領域は大きくなります。

市場の規模を拡大させるのは、不動産会社の人たち。彼らが自分たちの力で市場を大きくしていく。そのサポート役を務めるのが不動産テックです。サポートには3つの段階があります。

  • D1→デジタイゼーション(Digitization)
  • D2→デジタイゼーション(Digitalization)
  • D3→デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation/DX)

D3を目標にして、D2とD1を逆算することができると理想的です。D3の目的は、よい体験(不動産取引)を顧客に提供することです。新しい関係を顧客と築くことである、そういいかえることができます。そのために、契約書を電子化して会社のクラウドに保管します。テレワークをする社員とのコミュニケーションに使うのは、チャットやビデオ会議システムです。それに慣れることは、顧客によい体験を提供するとは何かを自分たちなりに理解することでもあります。緊急時には電話を使いますし、IT推進部を社内に発足するときは対面での意思疎通が効果的です。社内のデジタル環境が整い、社員の生産性が高まることで、従来よりもサービス、プロダクトを改善するスピードが速くなります。それは、「顧客にとってよい体験を提供する」ことの好循環です。サービス、プロダクトは使い勝手がよくなり、顧客はベネフィットを感じます。

この不動産会社のサービスは好きだ

そこにあるのは、選ばれる不動産会社の姿です。

引っ越しをするときは、また、この不動産会社を使いたいな

 

次、売却するときも、この不動産会社に相談したいな

 

新しい物件も、この管理会社に頼みたいな

そうした不動産会社になるための手段の1つとして不動産テックは存在しています。

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