「REAL ESTATE tech カオスマップ2017年6月1日版」から読み取る不動産テックの今後

- 国内初となる「不動産テック業界 カオスマップ2017年6月1日版」が発表された
- 現時点では業務支援、マッチング、価格可視化・査定カテゴリのサービスが多い傾向
- テクノロジー × toC エリアのVRとIoTにも注目が集まっており今後の成長に期待
不動産テック企業のリマールエステートとQUAMTUMが、国内で初めて不動産テック市場を網羅的に分析した「不動産テック業界 カオスマップ」を2017年6月1日に発表し、話題になりました。
当マップは、不動産テックに精通するコンサルタントの川戸温志氏(NTTデータ経営研究所)や、同分野を専門とするベンチャーキャピタリストなど専門家とディスカッションを重ね、網羅的・多面的に日本の市場構造や独自性を分析して作成されています。
現段階ではtoBサービスが多い傾向
横軸は「toC(消費者向け)」、「toB(不動産事業者向け)」の度合いを示しており、提供するサービスが消費者に役立つものなのか、または不動産業者に役立つものなのかを表しています。一方縦軸は「テクノロジー」と「データ・情報」の度合いを示し、新しいデバイスや空間を使ったサービスなのか、または大量のデータを管理・活用したサービスなのかを表しています。
このカオスマップを見て、まず気づくのが「業務支援」などtoB向けサービスへの偏り。業務支援で取り上げられているサービスは、不動産仲介会社がおこなう空室確認電話を24時間いつでも自動応答にしたイタンジの「ぶっかくん」や、土地・建物の情報をインターネット経由で一元管理できるプロパティデータバンクの「@プロパティ 不動産管理クラウド」など。ベンチャー企業だけでなく従来からサービス提供を続けてきた企業も存在しています。
toC向けサービス、とりわけ個人オーナーに向けたサービスがまだ少ないのは、オーナー側が不動産管理を管理会社に全面的に委託し、運営管理に対してあまり能動的でないケースが多い(不動産テックを活用する以前に知らない)という背景もあるかもしれません。
しかし人口減少などにより不動産管理の難易度が高まれば、不動産テックを駆使して優位に立とうという動きが増えてくると予想されます。需要が増えれば、必然的にtoC市場も活性化されることでしょう。
toBとtoCをつなぐサービスにも注目が集まっている?!
事業者と消費者をつなぐサービスも盛り上がりをみせています。
徐々に伸びているのが物件の価格をインターネットで簡単に調べることができる「価格可視化・査定」サービス。地図上で物件の参考価格を一覧表示できる「HOME’Sプライスマップ」や、リアルタイムに部屋ごとの参考価格が閲覧できる「IESHIL」など、14個のサービスが取り上げられました。この分野ではビッグデータやAIを活用したサービスが「物件の正確な価格がわからない」「最適な売買のタイミングがわからない」という日本の不動産業界における課題を解決しようと取り組んでいます。
「マッチング」サービスも18個と数多く取り上げられています。例えば、リノベーション物件やコーディネーター、デザイナーまでワンストップで探すことができる「リノベる。」や、企業オフィスの家賃相場や環境が分かり、居抜きオフィスを探すこともできる「みんなのオフィス」など、様々なプラットフォームが構築されています。人とのマッチング、物とのマッチング、その両方が同時にできるワンストップ型のマッチングサービスは今後さらに増えていくかもしれません。
これからの成長に期待、「テクノロジー」×「toC」市場
「VR」と「IoT」は、まだ数は少ないもののテクノロジー業界からも注目されている市場。「テクノロジー」×「toC」エリアはこれからの成長に期待ができそうです。
建築土木不動産業界向けVR専門企業「DVERSE」や、スマートロックなどの製品を展開する「Qrio」、クラウド録画防犯カメラを開発、販売している「Safie」などが取り上げられています。
まとめ
このカオスマップは今後市場の全体構造理解のための共有知識として活用され、不動産テック市場の成長に貢献していくことでしょう。不動産テックはまだ新しい市場だからこそ、スタートアップ企業やベンチャー企業など新たなプレーヤーにとっても大きなチャンスとなり得ます。人口減少や高齢化など社会の変化、Fintechや他業界でも進むテクノロジーの進歩は、不動産テックの成長にも影響を与えていくと考えられます。
今後、カオスマップから好機を読み取り、新たに名を連ねてくる企業が登場するかも知れません。