注目の不動産テック銘柄4つを解説!投資家から見た不動産×DXとは?

- 不動産IDの導入やIT重説の本格運用・デジタルネイティブのZ世代の存在などにより不動産テックは高い成長性が見込まれている
- 経済産業省・東京証券取引所が共同で選定・公表している「DX銘柄」に選ばれた不動産テック企業など今後成長が見込める企業4社をピックアップ
SUMAVEでは以前「不動産テック関連の上場企業13社の取り組み」を掲載しました。
不動産テックは、投資家から見ても今後高い成長性が期待できる分野として注目を集めています。
今回は実際に株や投資信託などを運用する筆者が、不動産業界とDX、不動産テックの効果や今後の市場動向、注目される不動産テック銘柄4つを解説していきます。
不動産テックの例と市場規模、今後成長が見込まれる領域とは?
不動産テックとは、AI・ビッグデータ・IoTなどの最新技術を活用し、テクノロジーで業務の効率化やサービス向上・不動産業界の健全な発展を図るものです。
例えば以下のようなサービスがあります。
- AI査定
- IT重要事項説明
- 電子契約
- オンライン内見
- VR・AR内覧
- チャット接客
- オフィス・テナントマッチング
- スマートロック
- スマートホーム・IoT住宅 など
総務省の2021年度情報通信白書によると、不動産業界のデジタルトランスフォーメーションの取組状況(日本)は以下のとおりです。
【画像出典】総務省 2021年度情報通信白書「デジタルトランスフォーメーションの取組状況(日本:業種別)」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112420.html
「2018年度~ 2020年度以前から実施している」と回答した企業の割合は合計23.3%で、他の業界に比べて低めとなっています。
不動産業界はコストや人材の確保・長年の商慣習といった理由で他業種と比較すると、DX・IT化が進みにくい傾向があります。
ただし、政府のデジタル田園都市国家構想や不動産IDの導入、生まれた時からデジタル機器が身近にあるZ世代の存在などにより、不動産テックは今後市場の拡大が見込める分野といえるでしょう。
不動産テックの効果や今後の市場動向
契約の電子化やIT重説・オンライン内見・スマートロックといった不動産テックにより、業務の効率化や顧客満足度の向上・人件費の削減・社員の余暇時間が増えるなど企業にとってポジティブな効果が期待できます。
よって不動産テック企業の銘柄は、投資家にとっても将来の成長性が期待できるといえるでしょう。
株式会社矢野経済研究所のプレスリリースによると、不動産テックの市場規模は年々拡大中です。
2020年度の市場規模は6,110億円(事業者向け・消費者向けの合計)で前年と比べ108.6%に上り、2025年には1兆2,461億円に拡大すると予測されています。
特に拡大が見込まれている分野は、消費者向け(B to C)領域ではマッチングサービス、事業者向け(B to B)では「仲介・管理業務支援・価格査定系」です。
仲介・管理業務支援・価格査定系は、現在市場規模が最も大きい分野です。
国土交通省によるIT重説(重要事項説明)の本格運用や、今後導入予定の不動産IDなど官民連携で不動産テック市場はさらなる拡大が期待できます。
「DX銘柄」と不動産テック
経済産業省は東京証券取引所と共同で、2015年から「攻めのIT経営銘柄」を選定してきました。
2020年からはデジタル技術を活用することでビジネスモデルなどを変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業を「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定・公表中です。
DX銘柄には中外製薬株式会社・株式会社小松製作所などさまざまな業種の企業が選ばれており、不動産会社・不動産テック企業も選定されています。
投資家も注目する不動産テック銘柄4つ
現在株や投資信託・ETFなどで投資・資産運用を行う筆者が、今までDX銘柄に選ばれた不動産テック銘柄や今後注目が集まると期待される不動産テック企業の銘柄をピックアップしていきます。
- 株式会社GA technologies
- SREホールディングス株式会社
- ERIホールディングス株式会社
- プロパティデータバンク株式会社
1.株式会社GA technologies(コード3491・東証グロース)
株式会社GA technologies は「DX銘柄」に3年連続で選定されています。
オンライン不動産マーケットプレイス「RENOSY(リノシー)」を始め、グループ会社のイタンジ株式会社では、「ITANDI BB」という不動産賃貸業務のDXサービスを展開中です。
ITANDI BBは物件を掲載するだけで内見予約・入居申し込みなどを自動で受け付けられるサービスで、業務の効率化・人件費削減などが期待できます。
2022年の「『DX銘柄2022』選定企業レポート」ではRENOSYや ITANDI BB+などで評価基準の6つの要素が全体・不動産業平均を大きく上回っています。
【画像出典】経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx-report2022.pdf
同社の直近1年間の株価推移を見てみましょう。
【画像出典】TradingViewよりスクリーンキャプチャにて作成【URL】 https://jp.tradingview.com/
2023年6月には株式会社スピカコンサルティングとの経営統合を発表し、株価が急上昇しました。今後も要注目の企業といえるでしょう。
2.SREホールディングス株式会社(コード2980・東証プライム)
SREホールディングス株式会社は、重要事項説明書など契約書の作成時間を大幅に削減できるサービスや独自に開発した不動産価格推定エンジン(AI)をAPI連携により提供するクラウドソリューションを中心に事業を展開しています。
ソニーグループの企業で、2021年のDX銘柄グランプリを受賞しました。
【画像出典】経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2021」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/dx-report2021.pdf
自社不動産事業のスマート化やAIソリューション・ツールの提供が高く評価され、2020年度には年間でクラウドツールの契約数を約1.9倍に拡大させています。
【画像出典】TradingViewよりスクリーンキャプチャにて作成【URL】 https://jp.tradingview.com/
2020年5月から2022年にかけて株価が急上昇しましたが、2023年は安定した水準で推移しています。
3.ERIホールディングス株式会社(コード6083・東証スタンダード)
ERIホールディングス株式会社は、2013年に日本ERI株式会社の完全親会社として設立された純粋持株会社です。
建築確認・住宅性能評価機関4社、既存建築物の調査会社、建築・土木構造物の調査会社、建築関連ソフトの開発会社など計8社のグループで構成されています。
2019年にDX銘柄の前身である「攻めのIT経営銘柄」に選ばれました。
BIM (Building Information Modeling)を活用した確認申請業務や、ドローンを活用した現場検査などが高く評価されました。
【画像出典】経済産業省「攻めのIT経営銘柄2019」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/report2019.pdf
BIMとは、計画・調査・設計段階から3次元モデルを導入し、各種の情報を結びつけ施工・維持管理などにも利活用していくシステムです。
【画像出典】TradingViewよりスクリーンキャプチャにて作成【URL】 https://jp.tradingview.com/
同社は2021年後半から株価が上昇し、2023年3月には、2期連続増配(配当金を増やすこと)を発表しました。
2023年7月に発表された決算短信によると、売上高・営業利益・経常利益・1株当たり当期純利益の全てが前年の同じ月に比べて上昇したことが分かっています。
投資家にとって、要注目の企業といえるでしょう。
4.プロパティデータバンク株式会社(コード4389・東証マザーズ)
プロパティデータバンク株式会社は、不動産管理クラウド「@プロパティ」などを運営する不動産テック企業です。
「@プロパティ」はビッグデータをAI技術によって解析することで、管理業者に募集賃料の算出や改修工事投資効果の予測などを提供します。
加えて契約・請求など不動産管理業務を一元化し、業務の効率化を図ります。
サービスリリース以来、累計800社を越える施設・国内不動産ファンドなどの運用管理に採用されました。
【画像出典】TradingViewよりスクリーンキャプチャにて作成【URL】 https://jp.tradingview.com/
2018年6月27日に東証マザーズに上場して以来、株価は順調に推移中です。
同社のIR情報によると業績は順調に伸びており、情報通信業ということもあり自己資本比率(総資本のうち自己資本が占める割合)が70~80%という点も魅力といえるでしょう。
自己資本比率が高いと、会社の経営の安定性も高いといわれています。
2023年の投資家向けの報告書によると設備投資などの投資活動・増資などの財務活動のキャッシュフロー(現金の流れ)がマイナスですが、営業活動(本来の事業)のキャッシュフロー・現金などの期末残高はプラスです。新興市場のマザーズに上場しておよそ5年ですので、今後の成長に期待しましょう。
まとめ
不動産テック企業は、投資家にとっても魅力がある銘柄が多く今後の株価上昇が期待できます。
現場でも業務の効率化、管理業務へ集中できる環境づくりなどが期待できる不動産テックの導入を検討してみましょう。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。CFP(R)相続・事業承継科目合格。全科目合格に向けて勉強中。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
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