コロナ禍で都心回帰から再びドーナツ化現象へ?

- 総務省によると東京から出て行く人が増加している
- 受け入れ先の多くは近隣県
- テレワーク普及で移住先は場所を選ばない時代になっている
新型コロナウイルスは、私たちのライフスタイルも大きく変えました。たとえばコロナ禍で郊外志向がアメリカで進み、日本では書斎のニーズが高まったことは、こちらの記事(withコロナの住まい選び 日本・アメリカのデータをまとめて分析!)で紹介した通りです。さらに進んで移住を検討する人たちも増えてきました(参照:「全国版 空き家・空地バンクサイト」がアップデート! コロナ禍で盛り上がる「移住」機運)。
総務省が1月29日に公表した2020年の住民基本台帳の人口移動報告によると、東京から出て行く人を示す転出者数が計40万1805人で前年と比べて4.7%も増えました。これからの居住エリアはどのようになっていくのでしょうか?
コロナ禍で「東京一極集中」の流れが一気に変わってしまった
新型コロナウイルスは、私たちのライフスタイルも大きく変えました。総務省が1月29日に公表した2020年の住民基本台帳の人口移動報告によると、東京から出て行く人を示す転出者数が計40万1805人で前年と比べて4.7%も増えました。これは同じように調査が行われ、比較ができるデータのある2014年以降最大で、これまでの「東京一極集中」の流れが変わったことを指し示すと話題になりました。
東京から出て行く人を受け入れているのは近隣の県で、神奈川県は転入超過数が2万9574人と多い結果に。さらに増加率でいうと千葉県が高く、1万4273人転入超過で、これは2019年と比較して約5割も増えています。コロナ禍でテレワークの普及が進むなどし、地方移住や二拠点居住を実践する人が増えたことも原因の一つでしょう。
二拠点居住先で神奈川県の鎌倉・三浦エリアは1位、移住先でも2位と人気。
【出典】株式会社リクルート住まいカンパニー「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000356.000028482.html
リクルート住まいカンパニーが東京都に居住している人を対象に「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング」に関するアンケートを実施、3月23日に発表しましたが、二拠点居住したいエリアで1位となったのは神奈川県の鎌倉・三浦エリアでした。同エリアは移住したいエリアでも2位となっています。
もちろん東京からの転出はポジティブな理由だけではないでしょう。飲食店や宿泊業などに従事する労働者はコロナ禍の自粛要請などで仕事を失うケースも多く、住居費を下げるために移住という声も同アンケートではありました。
東京だけではない、ニューヨークなど世界の大都市で人口流出
日本経済新聞が2020年12月12日に報じるところによると、ニューヨーク市の不動産市況が悪化し、中心部の賃貸アパートの家賃は11月に前年同月比で22%下げたといいます。下落率は9年ぶりの水準で、こちらも新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務が増え、郊外に移転する住民が急増していることが原因と分析しています。
都市が成長し、その土地利用としてオフィスが増加し、結果として人の住む場所が郊外や近隣県になることをドーナツ化現象といいます。中心部に人がおらず空洞化する様子をリングドーナツの形状になぞらえてこのように表現します。
日本でも地価が高騰したバブル景気の時期に、この現象が顕著になりました。バブル経済が崩壊し、地価の下落などが起きて都心に住む人が増えてきました。これを「都心回帰」といいますが、いま再びドーナツ化現象が進行しているのでは? と指摘をする識者もいます。
ここであげたニューヨークや東京など、世界でも知られる大都市では、こうした動きがあるようです。
近隣県だけではない。広範囲で移住先を検討する人も。
これまで仕事といえば、仕事場へ通う=通勤することが当たり前だったため、働く場所が東京であれば、東京へアクセスしやすい近隣県への移住が選択肢としてあがりました。しかし、今回はテレワークが普及したことで、近隣県にこだわらず移住や二拠点居住先を探す傾向もあるようです。
先ほど紹介した「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング」でも、移住したいエリアランキングの3位は北海道の石狩エリア、4位は沖縄県の離島エリアなどがあがっています。仕事がテレワークでも可能な働き手は、自分が住みたい場所を選び、そこで働こうという意向が高まっているようです。
ある不動産関係者の話によると、沖縄県はワーケーション需要の高まりがあり、マンスリーマンションが人気を集めているとのこと。こうした長期滞在者が次に検討するのが移住や二拠点居住となるのでしょう。
公示地価を見ても、静岡県の熱海市や長野県の軽井沢町が、前年を上回る伸び率を記録しています。働き方の変化により人の住む場所が、近隣県という枠組みを超えて日本中に分散する可能性もありそうです。
<参考資料>
ニッセイ基礎研究所コラム「2020年大阪府/転入超過数は前年の1.7倍 転入超過貢献エリアはどこなのか?―新型コロナ人口動態解説(4)」 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=67143?site=nli