「全国版 空き家・空地バンクサイト」がアップデート! コロナ禍で盛り上がる「移住」機運

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「全国版 空き家・空地バンクサイト」がアップデート! コロナ禍で盛り上がる「移住」機運

「全国版 空き家・空き地バンクサイト」がアップデート!新たな移住マッチングサービスも登場

2020年10月22日、アットホームが「全国版 空き家・空き地バンクサイト(以下、全国版バンク)」内に、各自治体が地域の情報や魅力を発信する動画を集めたポータルページ「動画で地域の魅力を発見!」を開設しました。

全国版バンクは、全国に点在する空き家等の情報を簡単に検索できるポータルサイト。国土交通省が推進している空き家・空き地等の流通活性化に向けた取り組みの一環として、公募で選ばれたLIFULLとアットホームの2事業者が2018年より本格運用を開始しています。
2019年9月末時点で全国の662自治体が参加しており、延べ9,900件近い空き家等の情報が掲載されている(※一部、2事業者で重複あり)ほか、既に累計3,000件以上の物件が成約に至っています。

2019年1月にはLIFULL版・アットホーム版共に、国や地方公共団体が所有している市有地や職員宿舎・公有地など全国に点在し、遊休状態にある公的不動産(PRE)を検索できるページも追加されました。

今回のアットホームの取り組みは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響により、地方移住やワーケーション、二地域居住への関心が高まっている状況を受けてのもの。同社によると、2020年9月度の同社全国版バンクの閲覧数は987,368PVとなり、21ヵ月連続で前年同月比200%を超えているそうです。

同ページは、各自治体が移住検討者向けに制作・提供している動画をまとめた特集となっており、2020年10月19日時点で39自治体の動画が掲載され 、地域の詳細や物件情報を知りたい場合は、特集から自治体版ホームページに遷移し、詳しい情報を閲覧できる仕組みとなっています。コロナ禍を受け、初めて移住先を探すというユーザーにとっても親切なつくりですね。

アットホーム株式会社のプレスリリースアットホーム版「全国版 空き家・空き地バンクサイト」に新ポータルページが追加された【出典】アットホーム株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000051123.html

また、全国版バンクの取り組みとは異なりますが、LIFULLが2020年11月17日に地方移住マッチングサービス「LOCAL MATCH」のティザーサイトを公開。2021年5月のリリースに向けて準備を開始しています。

「LOCAL MATCH」イメージLIFULLの地方移住マッチングサービス「LOCAL MATCH」イメージ【出典】株式会社LIFULLのプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000169.000033058.html

こちらは地方移住促進と、移住後の暮らしや仕事のミスマッチ軽減のために、地域での暮らしや仕事に関する情報を提供し、自治体と双方向でコミュニケーションできるサービス。リリースに先駆けて、Facebook上に開設された移住希望者向けのコミュニティ「LOCAL MATCH COMMUNITY」には既に700人以上が参加(2020年11月現在)しており、多くの関心を集めていることが分かります。

今後もこうした 地方活性化のための動きは各所で活発化していくと考えられます。では現状、各自治体が人の呼び込みのためにどのような取り組みを行っているのか、事例を見てみましょう。

変化をチャンスにできるか? 自治体の動きが活発化

都市住民への移住支援を展開している認定NPO法人ふるさと回帰支援センターによると、2019年1月~12月の相談件数は、前年の約20%増加の49,401件。同センターで行う移住相談会やセミナーの実施回数も昨年実績を上回り、県を越えた自治体同士が共通するテーマで連携するなどの工夫を凝らしたセミナーを開催するケースも増えてきていたといいますから、コロナ「以前」より移住機運が高まっていたことが分かります。そこへきてのコロナ禍で、例えば2020年4~5月の間、岡山県庁への移住相談は前年同期の2.5倍に増えたと報じられています。新たな生活様式の普及や働き方の選択肢が増えたことにより、こうした傾向は各地で高まっているでしょう。

来訪者・問い合わせ推移数グラフ来訪者・問い合わせ推移数(東京:2008~2019:暦年)【出典】認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター「2019年の移住相談の傾向、移住希望地ランキング」より【URL】https://www.furusatokaiki.net/topics/ranking_2019/

現状、特定の地域に東京圏からの移住者が集中しているというデータはありません。しかし、 同センターが毎年発表している移住希望地のランキング(※)の最新版を見てみると、今後の傾向が予測できるかもしれません 。2019年の結果は、1位は長野県、2位は広島県、3位は静岡県という結果となっています。

中でも長野県は3年連続で首位を独占しており、県内77市町村それぞれの魅力を発信するため、同センターの「出張相談デスク」も積極的に活用して効果を上げているそうです。年代別ランキングを見ても、20代以下と70代以上を除くすべての年代で1位。首都圏からの近さや、避暑地として人気の軽井沢を有する点などが根強い人気の理由と考えられます。

一方で、2位の広島県は昨年6位からの急上昇。プロ野球チームの人気からの「カープ移住」や食、瀬戸内地方での暮らしをテーマにした移住相談会を開催するなど、広島の資源や魅力にフィーチャーした暮らし方の提案・発信を行い、若年層を中心に関心を集めました。年代別ランキングでは20代以下で首位を獲得したほか、すべての年代で5位以内にランクイン。70代以上に人気で総合3位の静岡県も、首都圏からのアクセスの良さなどからすべての年代で5位以内に入っています。こうして見ると、東京圏住まいの人々の移住先として人気の地域はある程度決まっているように映るかもしれません。

年代別移住希望地ランキング(2019)年代別移住希望地ランキング(2019)【出典】認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター「2019年の移住相談の傾向、移住希望地ランキング」より【URL】https://www.furusatokaiki.net/topics/ranking_2019/

一方で、先述した広島県のように、積極的に若年層へアピールすることでこれまで以上の関心を集めることに成功した事例もあります。状況が刻一刻と変化する今、思いがけない自治体がコロナ「後」の生活先として人気を集めるようになっていくのかもしれません。

最近では、各自治体の移住者向けポータルサイトも洗練されたデザインのものが多く、イベントや仕事についての情報や、オンライン移住相談会などのお知らせを発信しています。特に若年層にとっては、こうしたポータルサイトの充実ぶりや更新頻度も、移住意向を左右する材料の一つとなるのかもしれませんね。

「ゆとりすと静岡」トップページ静岡県の移住・定住情報サイト【出典】静岡県公式 移住・定住情報サイト「ゆとりすと静岡」トップページより【URL】https://iju.pref.shizuoka.jp/

また、例えば静岡県では2019年度より「東京圏から静岡県に移住して就業または起業した人」に最大100万円を支給する「静岡県移住・就業支援金制度」を開始していますが、移住を考える上で、こうした支援制度の有無をチェックしたいというニーズも少なくないでしょう。同県では、静岡銀行が「しずぎんテレワーク・移住応援ローン」を11月16日から開始しており、自治体だけでなく金融機関もサポートしていく姿勢を見せています。

自治体の公式ホームページや移住者向けWebメディアをいくつか見ていくと、静岡県や広島県のものは移住に関する金融機関など、外部の支援サポート情報へもアクセスしやすいつくりになっていることが分かります。こうしたポイントは、いちユーザーとしても優位に感じますし、物件探しにも通じるところかもしれませんね。

移住検討者が急増する今、必要な 情報に 自力で 辿り着ける仕組みを用意しているか 否かという点も、これまで以上にその自治体が「選ばれる」ためのポイントになっていくと考えられます。

※ 認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター「2019年の移住相談の傾向、移住希望地ランキング」(2020年2月28日発表)

移住志向が本格化するのはもう少し先か

総務省の発表によれば、2020年7~9月、東京都は3ヵ月連続の転出超過となりました。しかし、こちらの記事でも取り上げた通り、コロナ禍による郊外志向が顕著なアメリカと違い、現状日本では「住まいの選択肢が広がった」という面が大きいようです。

これまで過疎や空き家問題で悩んできた自治体にとっては、多くの人に目を向けてもらえるチャンスとも言える一方で、感染リスクの高さが懸念される首都圏から 移住を受け入れることは、さまざまなリスクがついて回ることも見逃せません。また、そもそも情勢が不安定なうちは、実際に移住に踏み切る人々は少数にとどまる 可能性が高いと思われます。だからこそ、ある程度コロナ禍が落ち着いた際に「検討層」が首都圏に留まるのか否かは注目したい点です。

冒頭で触れた全国版バンクや人材マッチングサービスも含めた、各自治体の取り組みがこの先どのような差異を生むのか、兼ねてより問題視されてきた「東京一極集中」解消の一助となるのか。今後も冷静に見守っていきたいところです。

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