【不動産業界基礎用語】“置き配”普及の裏側&最新事情

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【不動産業界基礎用語】“置き配”普及の裏側&最新事情

置き配は深刻化する「再配達」問題解消への一手

配達員による手渡しではなく、玄関前や宅配ボックスなど、あらかじめ指定された場所に荷物を配達する「置き配」。仕事の都合で外出がちな人や、在宅でも小さな子どもがいて手が離せず、急な来客に対応できない人などを中心に広く利用されている仕組みです。

こちらの「物流テック」記事で詳しく取り上げていますが、置き配が注目される背景には、ECサイトの普及やフリマアプリなどによる個人間の物品取引の増加、消費動向の変化に伴う「再配達」の増加という深刻な社会問題があります。宅配便の取り扱い個数は10年前に比べて3割以上も増加しており、そのうち約16.0%もの荷物が再配達になっているといいます。荷物の最終拠点から受取人までの区間となる「ラストワンマイル」の攻防が問題になっているのです。

取り扱う荷物が急増している一方で、物流業界では慢性的なドライバー不足が叫ばれており、ドライバーの長時間労働も問題になっています。ほかにも、配送トラックにかかる燃料費や荷物を補完する倉庫や配送所の管理費、再配達に伴う連絡システムの維持費など多くの経済的資源が再配達に割かれており、配送トラックが排出するCO2も環境に悪影響を与えるとして問題視されています。国や物流業界は、利用者に時間帯指定サービスの利用や駅の宅配ロッカーやコンビニなど、自宅外での受け取りを呼びかける取り組みも行っていますが、それにも限度があります。

そこで注目されているのが、「置き配」。置き配なら、配送業者は受取人の在否に関わらず、指定された場所に荷物を届けておけば、受取人は自分の好きなタイミングで荷物を受けとることが可能。コンビニなど自宅外の荷物置き場を圧迫することもなく、時間帯指定サービス以上の再配達防止効果が見込めます。置き配は多様化する利用者のニーズに応える便利な仕組みであると同時に、「再配達問題」という、深刻化する社会問題を解消するための一手として普及が急がれているのです。

新型コロナウイルスの流行で急速に拡大する「置き配」サービス

深刻化する再配達問題解消の一助となることが期待される「置き配」。2020年春頃からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行を受けて、配達員と受取人双方の感染リスクを避ける「非対面」での宅配方法としても脚光を浴びており、利用者が急増しています。各運送会社がどのように対応を進めているのか、大手ECサイトAmazon等の動きと併せて見ていきましょう。

Amazon

コロナ禍を受けた「置き配」利用者急増の直接的なきっかけを考えると、特にインパクトが大きかったのは、2020年3月23日にECサイト大手のAmazonが、注文時に「置き配指定サービス」を配送方法の初期設定として選べるようにした(一部地域を除く30都道府県で対応)ことだと推測できます。これにより、同サイト利用者は従来の対面受け取りのほか、「玄関」「宅配ボックス」「ガスメーターボックス」「自転車のかご」「車庫」「建物内受付/管理人」の中から荷物の置き場所を指定できるようになりました。

サービスの標準化に先駆けて、同社は2019年11月・2020年1月に実証実験を行っていました。2019年11月6日から12月5日の1か月間、岐阜県多治見市で行われた初回の実験では、同市に住まう顧客の約70%が商品の受け取りに置き配を選ぶ結果に。2020年1月に実施された東京都(3区)、大阪府(3区)、名古屋市、札幌市での実験時と同じく、通常時の約50%の再配達削減につながったそうです。こうした結果や社会的要請を受けて、早期の標準化が叶ったと考えられます。

Amazonの「置き配指定」サービスAmazonの「置き配指定」サービス【出典】Amazon「置き配指定」サービスページより【URL】https://www.amazon.co.jp/%E7%BD%AE%E3%81%8D%E9%85%8D/b?ie=UTF8&node=6665180051

ヤマト運輸

国内宅配最大手のヤマト運輸も「置き配」に力を入れています。同社は2020年2月中旬より、在宅時の非対面による指定場所配達を開始していますが、荷物の水濡れや個人情報漏洩などを危惧する声もあるといいます。こうした不安を解消するため、ヤマト運輸は2020年6月5日にナスタ、Amazonと連携して新たな取り組みを行うことを発表。

その第一弾として、6月から石川県金沢市に在住のAmazonユーザーを対象に、ナスタが宅配ボックス10,000台をモニター提供し、ヤマト運輸が配送する取り組みが開始されました。同地域は、Amazonが置き配を実施していないエリア。戸建て、共働き世帯が多い地域でもあり、ここでの取り組みが今後の非対面受け取りサービスの改良・普及につながっていくと期待されています。

ヤマト運輸株式会社のプレスリリースより取り組みのイメージ【出典】ヤマト運輸株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000265.000014314.html

さらに、ヤマト運輸は2020年6月24日からEC事業者に向けて、置き配に特化した配達サービス「EAZY」の提供を開始。「ZOZOTOWN」や「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」の出店者を対象に申込受付を始めました。通常、受取場所の変更は配送事業者によって締切時間が設けられていることも多いですが、同サービスでは配達直前までWebサイト上で受取場所を変更することが可能。外部パートナー「EAZY CREW」と連携して高効率な配送を行い、配達完了後は受取人にリアルタイムで配達完了情報を共有する仕組み。急増するEC利用者の多様なニーズに応えるため、同社はさまざまな工夫を凝らしているのです。

ヤマト運輸株式会社のプレスリリースより配達完了メール非対面での配達を指定した際は、配達完了メールに記載されたURLから荷物が置かれた場所を写真で確認できる【出典】ヤマト運輸株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000268.000014314.html

日本郵便

日本郵便では2020年4月8日からは新型コロナウイルス感染拡大を受けて、緊急事態宣言が発令された7都道府県にて、柔軟な非対面受け取りに対応しています。

ヤマト運輸同様、受取人が在宅の際は、配達担当者にインターホンなどで受け取り方法を指定すれば、郵便受箱や玄関前への置き配も利用することができます。対面受取以外を利用した際、配達担当者は受取人の希望に応じて配達を行った旨を記録することで受領印の代わりとします。宅配ボックスなどがない家でも在宅時に置き配を利用することが可能に。この取り組みは同月15日より全国的に実施されています。

この配達方法は新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、限定的に実施されているものですが(2020年8月現在)、日本郵便は2018年12月に置き配バッグ「OKIPPA」(こちらの記事でも取り上げています)の開発・販売で知られるスタートアップYperとともに大規模な共同実証実験を行うなど、かねてより置き配による再配達問題削減に意欲的。

平時でも、あらかじめ配達郵便局に「指定場所配達に関する依頼書」を提出しておくことで、置き配サービスを利用することができます。

日本郵便株式会社の「置き配」サービス日本郵便の置き配サービス【出典】日本郵便株式会社の「置き配」サービスページより【URL】https://www.post.japanpost.jp/service/okihai/

吊り下げ式簡易宅配ボックス「OKIPPA」の利用イメージ吊り下げ式簡易宅配ボックス「OKIPPA」の利用イメージ【出典】Yper株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000031698.html

佐川急便

佐川急便も2020年4月28日よりコロナ対策の一環として、在宅時の非対面受取を実施していましたが、同年5月18日より「指定場所配送サービス」を正式スタートさせました。

これは、個別契約を結んだ顧客から出荷される荷物を対象に、受取人が荷物の配達場所(玄関先や車庫内など)を指定できるサービス。配達完了時は、同社の配達員が状態撮影を行います。対象となる輸送サービスは「飛脚宅配便」「飛脚航空便」「飛脚ジャストタイム便」。時間帯指定サービス・指定日配達サービスとも併用可能で、EC市場拡大に伴う再配達増加を防止する効果が期待されます。

セイノーホールディングス

2020年8月19日、西濃運輸をはじめとしたセイノーグループの持株会社であるセイノーホールディングス(以下、セイノーHD)と通販会社大手のフェリシモは、セイノーHD子会社のココネットとフェリシモ、ICTによる社会課題の解決に取り組む電警とのジョイントベンチャーであるLOCCOを通じて、業界初のLCC(Low-cost carrier)宅配のサービス「OCCO(オッコ)」を開始したことを発表しました。

「OCCO」はLOCCOが提供する「幹線+ギグワーク」による置き配サービスです。セイノーHDグループの持つ全国画一の幹線輸送網と、必要な時に必要な分だけ働くギグワーカーを中心とした柔軟なラストワンマイル配送パートナー網を組み合わせることで、安価で確実な宅配スキームを構築。2019年末に東京都内のフェリシモ会員向けに行われた実証実験では、利用者の利便性向上と物流コストが10パーセント以上削減することが実証されています。

株式会社LOCCOのプレスリリースよりLCC宅配スキーム図LCC宅配スキーム図【出典】株式会社LOCCOのプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000063547.html

ギグワーカーとは、料理宅配サービスの「Uber Eats」のように、インターネット上のプラットフォームを通じて単発の仕事を請け負う労働者を指します。「ラストワンマイル」の配達をギグワーカーの手による置き配に置き換えることで、宅配業界におけるさまざまな課題解決を図ろうとしているのです。

このほかにも、2020年8月14日にはデリバリーピザチェーンのドミノ・ピザが、ピザを「置き配」で受け取ることができる新サービス「Drop&Go」を開始。生活様式の変化に伴い、さまざまな置き配需要が生まれていることが分かりますね。

「置き配」に伴う不安への対策も進む

先にも少し触れましたが、置き配の指定場所によっては荷物の盗難や破損などの不安も付きまといます。いくら運送会社側のメリットが大きくとも、荷物が無事に届かなければ利用者は増えませんよね。当然、こうした声への対応も進んでいます。

Amazonは、置き配を指定し、配送状況画面で「お届け済み」表示になっているにも関わらず商品が届いていない等の場合、ユーザーから状況をヒアリングした上で商品の再送や返金に対応するという、独自の補償対応を行っています。

東京海上日動と共同開発した置き配保険を、30日100円で上限3万円の補償が受けられる任意加入のプレミアムプランとして2018年7月より提供していたYperは、これとは別に2020年7月29日より、すべてのOKIPPAユーザーを対象に上限3,000円までの盗難補償を無料提供を開始。OKIPPAアプリとOKIPPAバッグを連動させることで利用可能になります。

Yper株式会社のプレスリリースよりOKIPPAユーザー向けの置き配盗難補償OKIPPAユーザー向けの置き配盗難補償【出典】Yper株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000031698.html

2020年8月19日、損保ジャパンも2021年1月に「個人用火災総合保険」を改訂し、置き配に関する損害を新たに補償することを発表しています。

また、配達先がマンションの場合、置き配の指定場所によっては管理規約・使用細則違反になってしまうケースも有り得ます(共用部など)。国土交通省と経済産業省が2020年3月31日に策定した「置き配の現状と実施に向けたポイント」を見ると、トラブルを避けるため、利用者になる住民が「マンション共有部分に関する使用細則等における置き配の運用方法について事前に確認することが望ましい」としています。

しかし、同時に「置き配の実施については、これまでの実態等を踏まえると、明確に使用細則等において禁止されていなければ直ちにその実施が妨げられるものではないと考えられる」ともされており、今後の利用者数増加を想定する場合、置き配の運用方法に関するルール制定することを推奨しています。

当然、防犯や防災の観点や近隣住民への配慮は必要ですが、置き配を「ニューノーマル」な生活様式に対応した宅配方式として定着させていくため、各所で着々と準備が進んでいくのではないでしょうか。

効果は実証済。さらなる普及が見込まれる置き配

不動産関連スタートアップ育成プログラム出身のスタートアップもあるYperの発表(※)によれば、2020年4月時点で宅配便の再配達率は大幅に低下しています。同社はこれを、4月7日に発令された緊急事態宣言後の外出自粛に伴う高い自宅滞在率に起因したものと推測しています。

一方で、5月末の外出自粛要請解除のタイミングで再び再配達率は上昇。同社の予測によると、このまま推移すれば新型コロナウイルス感染拡大前と同程度にまで上昇するとのことです。

宅配便再配達率推移。一旦低下した再配達率は再び上昇一旦低下した再配達率は再び上昇【出典】Yper株式会社のプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000031698.html

この増加予測を踏まえて、同社の代表取締役である内山智晴氏は次のようにコメントしています。

Yperで軽貨物事業企業を対象に独自にヒアリングを実施したところ、Amazon社による置き配“初期設定化”によって置き配がAmazonの標準配送方法となってからは、以前よりも配送効率が20%ほど高まっていると回答した企業もいらっしゃいます。

また、Yperが2020年2月に大阪府八尾市と共同で実施した実証実験では、OKIPPAを活用した置き配の浸透によって再配達率が7割以上削減できました 。これらのことから、置き配普及による再配達削減効果は高いと確信しています(後略)

また同氏は、今後のさらなる置き配普及には自治体の継続的な取り組みが重要とも訴えています。

感染拡大を防ぐための新たな生活様式が広がり、ニーズの高まる「置き配」。大手運送会社やECサイトも対応を急いでいますが、現状はまだ「コロナ禍における一時的な対応」ととらえる消費者も少なくはないようです。

しかし冒頭で述べた通り、そもそも置き配が推奨される背景となった再配達問題は深刻な社会問題ですし、「コロナ後」も見据えた「非対面」「非接触」な社会の構築は既に始まっています。当然OKIPPAのようなサービスも普及していくでしょうが、宅配ボックスを備える物件は、今後これまで以上にアドバンテージを持つことになるでしょう。

また、「本当に指定した場所に配達してくれたのか?」「荷物が盗まれてしまわないか?」という受取人の不安を解消するため、補償サービスの拡充に加えて玄関先に設置する監視カメラやスマートロック、そしてこれらのIoT機器と連動した宅配サービスが流行していくのかもしれません。

置き配による再配達問題解消は、自治体や運送会社の継続的な取り組みと、利用者の協力が必須となります。コロナ禍により利用者側にも新たな「置き配」ニーズが発生したことで、置き配のさらなる普及や再配達問題解消に向けた希望が生まれました。不動産業界とも関係のあるトピックとして、これからも動向を追っていきたいですね。

※出典:Yper株式会社のプレスリリース(2020年7月21日発表)

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