【不動産業界基礎用語】“コリビング”という暮らし方

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【不動産業界基礎用語】“コリビング”という暮らし方

ミレニアル世代が注目する「コリビング」(co-living)ってなに?

欧米で生まれた新しい暮らし方「コリビング(co-living)」。最近では国内の不動産業界でも盛り上がりつつあるトレンドの一つであり、SUMAVEが注目しているトピックの一つです。今回は業界初心者の方に向けて、そもそもコリビングとは何なのかについて解説していきます。

コリビングとは、簡単にいうと職住一体型のシェアハウスのことです。複数人で居住空間を共有するシェアハウスと、仕事空間を共有するコワーキングスペースの性質を併せ持つ施設、と捉えるとイメージしやすいかもしれませんね。個人の居住スペースのほか、その施設に暮らす住人が自由に出入りできる共有スペースが設けられており、居住者同士の交流が重視されているのが特徴です。

一般的なシェアハウスとの違いは、住民同士の交流やワークスペースとしての機能を重視していて、そのための共有設備やイベント運営に力が入れられているケースが多い点。施設によっては、日々居住者同士の交流を促進するためのイベントを開催しているところもあるようです。

また、住人同士は文字通り「一つ屋根の下」で仕事と寝食を共にすることになります。そのためコリビングでは、最近増えてきたコミュニティを重視するタイプのコワーキングスペースよりももう一段、強いつながりを築くチャンスが得られます。共有スペースで仕事をしたり余暇を過ごしたりすることで、住人同士の交流機会が発生。そこから新しいビジネスへ発展することも少なくないようです。

このような特徴を持つコリビングは、在宅ワークのメリットを享受しつつ、ゆるやかな横のつながりを広げていくことのできる新しい形の住まいとして、ミレニアル世代の若者を中心に大きな関心を集めています。

「職住分離」から「職住近接」、そして今「職住一体」の時代へ

なぜこうした生活様式が生まれ、国内で注目されるようになってきたのでしょうか? その背景には、技術の進化によってオフィスに「出社」しなくてはできない業務が減少したことや生活様式の変化、働き方の多様化といった社会変化が挙げられます。まずは、どのようにして「職住一体」の暮らしに関心が寄せられるようになっていったのか、オフィス需要の変化を中心に見ていきましょう。

高度経済成長期以降の日本では、郊外に居を構えて都心に出勤する「職住分離」の考え方が根付いていました。それがバブル景気の崩壊した1990年代以降、都心部の地価下落や共働き世帯の増加等さまざまな要素が作用し合った結果、大都市に居住する「都心回帰」現象が見られるようになっていきました。これにより駅近や都心部、つまり職場の近くに居を構える「職住近接」志向が高まっていったのです。

次に、決まったオフィスを持たないフリーランスや起業家の増加、リモートワークの普及に伴い、シェアオフィスやコワーキングスペース、サービスオフィス(レンタルオフィス)といった共同利用型オフィスのニーズが高まっていきました。

国土交通省の「テレワーク人口実態調査」最新版(※1)によると、就業者全体(テレワーカー+非テレワーカー)のうち、共同利用型オフィス等の利用者の割合は、雇用型就業者で1.8%、自営型就業者で6.3%。テレワーカーの中では、雇用型テレワーカーが11.9%、自営型が30.7%。大方の想定通り、後者の割合が高くなっています。

しかし、同資料の「共同利用型オフィス等の利用意向調査結果」を見ると、主要都市圏居住者(昨年度版の同調査 ※2 より)・地方都市圏居住者共に、共同利用型オフィス等を利用したことのない回答者のうち「勤務先にテレワーク制度等のある雇用型テレワーカー」の過半数以上(主要都市圏居住者の69.4%、地方都市圏居住者の67.6%)が今後「利用したい」と回答。制度等のないテレワーカーも半数近く(主要都市圏居住者の49.6%、地方都市圏居住者の44.2%)が利用意向を示しています。

その理由として、雇用型では制度の有無や居住地域に関わらず「通勤や移動の肉体的・精神的負担を減らせるから」と回答した人の割合が最も高くなっています。自営型では都心・地方共に「仕事に集中でき、業務効率が高まるから」という答えが最も多い結果に。居住地域や雇用形態の違いを問わず、定められたオフィスや自宅以外の「仕事場」を求める声が高まってきたことが分かります。

「職住近接」志向が高まり、リモートワークという新しい働き方が普及するにつれて、職場の近くや都心に住むという選択肢のほかに、自宅近くの「仕事場」で働くという選択肢が生まれました。では、そこからどのようにしてコリビングサービスが実現する「職住一体」という暮らし方・働き方に期待が寄せられるようになっていったのでしょうか。

まず、「通勤や移動の肉体的・精神的負担」を減らしたいというニーズがいっそう高まってきたことが理由の一つに挙げられるでしょう。加えて、先に挙げた「テレワーク人口実態調査」で「共同利用型オフィスの利用意向があるものの、現状利用していない」人について詳しく見ていくと、テレワークの制度等がある雇用型テレワーカーと自営型テレワーカーは「自宅や自宅近くの最寄り駅等、交通の便の良い場所にそのような施設がない」ことを理由に挙げている人が最も多いことがわかります(雇用型・制度等のないテレワーカーでは「社内制度上、利用が認められていないから」が1位)。こうした人々にとって「職場」の第一選択肢となるのは当然、自宅であると考えられます。

さらに、日本生産性本部と日本経済青年協議会が2020年度新入社員1,792人に実施した「働くことの意識」調査結果(※3)を見ると、特にミレニアル世代の若者がコリビングサービスに強い関心を寄せている理由が推察できます。まず、就労意識についての設問で2番目に多い回答が「仕事を通じて人間関係を広げていきたい(92.5%)」であり、6位に「これからの時代は終身雇用ではないので、会社に甘える生活はできない(78.2%)」がつけています。ここから、多くの若者が仕事において人とのつながりやコミュニティを重視していること。そして新入社員の段階で、既にフリーランスや副業といった働き方も視野に入れていることもうかがえます。また、「できれば地元(自宅から通える所)で働きたい」という意見も60.4%と過半数を超えています。

次に「働く目的」についての設問を見ると、最も多い回答は「楽しい生活をしたい」で39.6%。かつてバブル期を除いてトップになることもあった「自分の能力をためす」は長期にわたって減少し続け、昨年度は10.0%と過去最低を更新。今年度は10.5%とわずかに増えているものの、30~40%近い年があった点を踏まえると、大きく変化していることが分かります。「人並み以上に働きたいか」という設問でも「人並みで十分」という回答が過去最高を更新し、63.5%に。「人並み以上(29.0%)」との差は34.5%と、同調査開始以来最大の開きとなっていることからも、若者の仕事に関する価値観は大きく変化しているといえます。

彼らは収入や成功を最大目標とせず、質の高いコミュニティに所属しながら無理なく「楽しい生活」を送るための手段の一つとして、職住一体型=コリビング型に注目していると考えられます。

また、職住一体型のライフスタイルやコリビング型の施設には、都市部に集中しがちな人口へ流動性を与える効果があります。人口が大都市へ一極集中していることの弊害は大きく、交通渋滞や待機児童問題、空き家問題の加速や地方の過疎化など、さまざまな社会問題の原因となっています。これまで住居を選ぶ大きな決め手となってきた「働く場所」が都心部の大きなオフィスから各地域に分散することで、これらの社会問題を解決する糸口になるのではないかと期待されているのです。

例えば国内コリビングサービスの先駆けとして知られる「ADDress」は、空き家や古民家といった使われていない物件を活用することで、コストを抑えながら地方創生や空き家問題の解決を視野に入れて運営されていることで知られています。社会課題の解決という側面からも、コリビングのような職住一体型のライフスタイルは時流に合った住まい方であり、働き方であるということですね。

※1 出典:国土交通省 都市局 都市政策課 都市環境政策室「平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査」(2020年3月31日発表)
※2 出典:国土交通省 都市局 都市政策課 都市環境政策室「平成30年度 テレワーク人口実態調査」(2019年3月28日発表)
※3 出典: 公益財団法人 日本生産性本部、一般社団法人 日本経済青年協議会「平成31年度 新入社員『働くことの意識』調査結果」(2020年6月27日発表)

進化し続ける日本の「多拠点型」コリビング

主流サービスの性質が微妙に異なる? 欧米と日本のコリビング

コリビングサービスの本家、欧米で有名なものとしては「Common」や「Ollie」「The Collective」、「WeLive(WeWorkが運営)」などがありますが、これらのサービス(施設)と現在日本で主流のコリビングサービスとでは、少し違った特徴が見受けられます。

両者の違いに触れておくと、上に挙げた欧米のサービスは、基本的に自宅として一定期間以上「住む」ことを前提としたものであり、そのように利用されています。日本にも、三菱地所とシンガポールのコリビングサービス運営会社による合弁会社が手掛ける「Hmlet(ハムレット)」が現れてきたように、このタイプの物件・サービスが無いわけではありませんが、主流ではありません。

現状、主な日本のコリビングサービス利用者は、自宅は別に持っていて、コリビングを短期間「滞在」するための拠点として利用する「デュアラー(多拠点生活者)」と、決まった住所を持たず旅をしながら暮らす「アドレスホッパー」と呼ばれる人々に大別できます。その理由は、国内外の主要サービスが実現しようとしている世界観の違いや、国内サービスは後発であること。そして住宅事情や特に問題視されている社会課題の違いなど、一通りではないでしょう。

国内の代表的なコリビングサービスである「ADDress」と「HafH」については、SUMAVEでも以下の記事を中心に何度か取り上げています。

「OYO LIFE」や「ADDress」の登場で広がる多様な暮らし方

ADDressの事例10選。月額4万円から全国に住める、多拠点コリビングを知る

世界中に200拠点。定額3,000円からはじめる「旅×働く」コリビングが好調

ADDressやHafHの特徴を簡単にまとめておくと、定額で各地の拠点施設をいつでも自由に利用できるサービスとなっています。海外にも、定額で世界中に点在する複数の拠点間を自由に移動し、旅をするように働くことを可能にする「Roam」という多拠点コリビングサービスがありますが、こちらに近いイメージですね。単にコワーキングスペースの性質を持ったコンセプト型シェアハウスではなく、サブスクリプション型の新しい「住まい」のプラットフォームとして注目されています。

「ADDress」トップページADDress【出典】「ADDress」トップページより【URL】https://address.love/

地域活性化やMaaS開発も見据えた国内サービスの行方

「職住分離」から「職住近接」、そして「職住一体」へ。私たちのライフスタイルは大きくシフトしつつあります。フリーランス協会がとりまとめた「フリーランス白書2020」(※1)によれば、首都圏在住者のうち、今後、地方の組織における副業・兼業意欲があるのは85.8%(回答者全体では82.7%)。首都圏在住のフリーランスに絞ると89.9%、首都圏在住の被雇用者に絞ると82.3%となっており、いずれも8割を超える結果に。数年前から「ワーケーション(※2)」や「多拠点居住」といった言葉に注目する人々が増加しつつありましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響が、この動きにいっそうの拍車をかけています。

リモートワークの急速な普及により、ビジネスパーソンの多くが「必ずしも人口が密集する都心のオフィス近郊に住まなくても良い」ことを知ることとなりました。事態の収束後、一気に都心から地方への人口流出が起こるとは考えにくいですが、リモートワークはまず間違いなく「アフターコロナ」の働き方として一般化するはずです。そうなれば、ワーケーションや多拠点居住への関心は今以上に高まっていくでしょう。

さらに、2020年7月6日、アドレスとKabuK StyleはJR西日本グループとの提携を発表しました。KabuK Styleはこの提携について、通勤や観光といった従来の需要創造では捉えきれない新しい鉄道需要を創出し、関係人口市場の拡大、地域の活性化、並びに新しいまちづくりに寄与するためのものとしています。移動コストの最適化を行うための実証実験も予定されており、地域の活性化や各社のMaaS開発促進に期待がかかっています。拠点から拠点への移動にかかるコストもコリビングサービスの定額内で賄えるようになれば、「住まい=職場を多拠点に持つ」という暮らし方はますます便利になっていきそうですね。

「好きな場所に住み、好きな場所で働く」ライフスタイルを実現し、決まったオフィスや自宅で働いているだけでは得られない出会いのチャンスが得られるコリビングサービス。最先端のライフスタイルを提案するサービスがどのように進化し、人々の間に浸透していくのか。今後も注意深く見守っていきたいところです。


※1 出典:一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書2020」(2020年6月12日発表)
※2 ワーケーション:「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた米国発の造語。地方のリゾート地や観光地など、旅先で仕事をする働き方。サテライトオフィスや自宅でのリモートワークとは区別される。

 

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