ADDressの事例10選。月額4万円から全国に住める、多拠点生活を知る

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ADDressの事例10選。月額4万円から全国に住める、多拠点生活を知る

はじめに

住宅宿泊事業法が施行されて、1年5か月が過ぎました。いわゆる、民泊新法の施行からです。民泊利用者のマナーが社会問題化し、民泊新法という規制が設けられ、そのタイミングで民泊から手を引く投資家が増えました。なぜ、彼らは民泊から手を引くのか。取材の一環で出会った投資家は、「もう民泊運営は、片手間ではできない」といいます。他方で、民泊が町おこし、地域活性化、地方創生に貢献している事実もあります。これは、民泊の成功事例と呼べるでしょう。キーワードは家主滞在型です。

2018年に開催されたシェアリングエコノミー協会のイベントで、ゲスト・シェアハウスの企画や運営を手掛けるNPO法人の代表理事・中村功芳氏(画像下)は、こう話しました。

家主滞在型の民泊は大賛成です。むしろ、皆でやったほうがいいと感じているくらいです。なぜなら、交流型で温かく迎えられる民泊に泊まると、宿泊者は「また帰って来られる場所がある」と安心するから。どうして安心するかというと、家主さんがゲストに、「また帰って来てね」と伝えるからです。この両者が増えれば街がにぎわう。これが、民泊がまちづくりに貢献する理由です(中村氏)

株式会社オープンハウスの副社長を務める鎌田和彦氏(画像下)は、2018年のAirbnbのイベントで次のように話しました。

本質は、体験の交換共有であって、たぶん、シェアリングの前提にあるのは、「ゲストをもてなそう」というホスト側の気持ちなんでしょうね。ついつい、経済的対価の交換的に物事を考えてしまいがちですが、「新しい対価を得られる手段としてシェアハウスをやります」という姿勢で取り組むと、この文化は日本に広がらないように感じました(鎌田氏)

民泊における家主、ホストの重要性を複数の人が、それぞれ違う場所から叫んでいます。今回の記事でご紹介する、株式会社アドレス(以下、ADDress)の佐別当隆志氏(画像下)もその一人です。

多拠点生活サービスの提供者として注目を浴びるADDressは、月額4万円から全国の拠点に住み放題をうたっています。2019年10月29日には、ANAとの提携を発表。指定の航空路線と、旅行先の施設滞在を定額で利用できるサービスの実証実験をはじめるという内容で、いま、注目を浴びています。

画像出典元:https://address.love/

ADDressでは、自社で運営する全国の各物件に、個性的な地域の住人が管理人として付く仕組みです。この管理人は、中村氏や鎌田氏のいう家主やホストにあたります。これをADDressでは家守と呼び、宿泊者と地域をつなぐハブ役として、必ず配置しています。異文化交流の機会やユニークなローカル体験などを宿泊者となるユーザーに提供するとき、非常に重要な役目をはたす存在です。その重要性もADDressは発信していて、2019年11月14日から、家守の学校をスタートさせました。

この学校を通じ、「家を管理すること」「地域の人や会員同士の架け橋となること」「家守の役割」などの情報も発信しています。家守の学校について書かれたADDressのウェブページには、次のような言葉もありました。

「家守」の存在はADDressのサービスの根幹と言っても過言ではありません

こうした地道な取り組みを通じ、サービス理念やその文化に共感した人たちによって、ADDressは広がりを見せはじめています。ANAとの提携はその代表的な事例の1つ。ANAのように、ADDressの理念に賛同し、「自社管理物件を提供できるかもしれない」そんなふうに考える不動産業界関係者が、一人でも手を挙げてくれることをSUMAVEは期待しています。

本記事で取り上げるのは、2019年7月に開催された、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会のイベントより、ADDressの代表を務める佐別当氏のプレゼンです。※ADDressの事例10選をすぐに知りたい人は、目次の「8」をお読みください。

目次

  1. 一人が複数の住所を持つ時代へ
  2. 住み放題&はたらく場所も選び放題
  3. 地域内の関係性がこじれないように
  4. 家主滞在型の施設だからこそ得られる体験と宿泊を必ずセットにして
  5. 同じ地域を何度も訪れたり住民票を移したり
  6. ADDressが求めている物件
  7. ADDressの物件に欠かせない存在
  8. ADDressで人気の物件10選

一人が複数の住所を持つ時代へ

佐別当:多拠点生活を展開する、株式会社アドレスを立ち上げた佐別当です。はじめまして。今日は、みなさんが管理される物件のなかで、「借り手を見つけることができず、なかなか難しい」というような物件もご紹介いただければと思っています。そんな物件もADDressでは人気の物件になる可能性を秘めています。その背景にあるのは、人々の価値観の変化です。最近は、一人が一住所ではなく一人が複数の住所を持つことも少しずつ増えてきました。この流れが加速するなかで、都心と地方のどちらかに住むのではなく、都心と地方を含めて、一人当たり、3拠点から5拠点くらいを持つという時代が訪れるのではないかと思っています。不動産業界の常識からすると、ちょっと外れた考えかもしれませんが、サブスクリプションの文脈から、私たちのサービスに共感し、紹介してくれるメディアも増えてきました。

住み放題&はたらく場所も選び放題

佐別当:安い価格でクラウド上にすべてのデータを置いたり、定額の料金を支払うことで特定のコンテンツが見たい放題に、なったりしてきました。この流れを受けるように、住まいも、まもなく、どこでも住みたい放題という時代がやって来るでしょう。すでに、欧米ではシェアハウスという価値観が一般化しています。みんなで、1つ、同じ屋根の下に住むというのがシェアハウスなら、さらに、そこで、みんなで仕事もするというのが、簡単にいうとコリビングです。そのような拠点を個人が複数持ち、それを毎月、定額で利用する住み放題&はたらく場所も選び放題というサービスとなると、海外でも珍しい存在です。ADDressの多拠点生活とは、そうした価値観のサービスです。海外と日本の対比ということで、日本の状況をもう少しお話すると、日本は先進国であるにもかかわらず、多くの空き家が存在しています。

家を買うときは、新築で

佐別当:そう考える人が全体の8割。圧倒的なマジョリティです。空き家が増える要因の1つです。増加した空き家は、いま、犯罪の温床になったり個人の経済的な負担になったりしています。そうした状況は、私たちが定額制の多拠点生活サービスを立ち上げた背景にもなっています。時代背景をもう少しお話しすると、いまは、シェアを目的とすることで所有がしやすくなっている時代です。たとえば、何か商品を買うとき、

この商品なら、メルカリでだいたい8,000円くらいで売れるから、1万円で買っても実質2,000円でもてる(所有できる)なあ

佐別当:そんな考えを頭のなかでめぐらせて商品を買う世代も現われはじめました。代表格は、2、30代の女性です。3、40代の男性なら、0円からはじめられるカーシェアリングを利用する人も増えました。車を持つ個人が、自分以外の個人に自分の車を貸し出すことで、毎月の駐車場代をペイできるような時代です。車を買わなかった世代が、自分の車を貸すことを前提に車を買うような流れまで生まれています。こうした、シェアリングエコノミーの潮流があるなかで、地方自治体から、空き家問題をはじめ、いろいろな課題をお聞きしています。

その課題を解決したい

佐別当:だから、私たちは空き家を使えるカタチにリノベーションし、多拠点生活ということで、たくさんの人に使ってもらうという住まいかたを提供しているのです。株式会社アドレスを起業した背景には、そうした課題意識がありました。

地域内の関係性がこじれないように

佐別当:私たちADDressは、民泊事業をやりたいわけでも宿泊業に参入したいわけでもありません。コリビングの拠点とその近所の人たち、その地域全体の関係性が悪くなることも避けたいです。シェアリングエコノミー協会の事務局長を私はしているので、民泊へのマイナスイメージが多い現状も把握しています。その多くが、家主不在型の民泊であることも理解しています。私たちがやりたいことは遊休資産の活用ですが、従来のような家主不在型をやるつもりはありません。不動産物件を管理される皆さんも、なかなか、核家族化の進むいまの時代で、昔から大家族が住むような古民家、8LDKや10LDKなどの物件の借り手を見つけることは難しいかと思います。しかし、借り手を一家族と限定せずに、シェアハウスの利用者全体とするなら、部屋数の多い古民家はうってつけです。建物としての価値は非常に高いのに、誰にも使ってもらえない物件や別荘を持っている人は、たくさんいると思います。年間の9割近くの日数を留守にし、使っていないオーナーも多いのではないでしょうか。でも、1割は確実に自分たちで使う。その状況のまま、オーナーはこれまで使ってこなかった9割(使わないとき)を私たちADDressに貸していただければと思います。その物件とシェアハウスなどの利用者さんをADDressがつなげます。

家主滞在型の施設だからこそ得られる体験と宿泊を必ずセットにして

佐別当:トラブルの多い家主不在型の民泊とは違い、私たちADDressは、家主滞在型です。本来の民泊は、個人が自宅の空き部屋を貸し出して、自分の地域のよさを宿泊者と一緒になって体験するもの。空き部屋を提供するホストが、その部屋を利用するゲストと一緒に時間を過ごしながら、サービスを提供するというのが、本来の民泊です。その魅力を味わうことができるのも、地域での体験をホストとゲストが共有できてこそ。そのため、私たちはオーナーさんからサブリースで物件を借り上げ、その物件に地域の人が住んだり管理したりしてもらうことが条件になっています。ゲストには、家主滞在型の施設だからこそ得られる体験と宿泊を必ずセットにして提供します。それが提供できる物件であることの証として、「この物件をADDressが管理している」ということを標識やロゴにし、物件に記載しています。あくまでも物件の住人(管理人)として、町内会に入り、その地域に入りこんでもらうことが条件です。

同じ地域を何度も訪れたり住民票を移したり

佐別当:利用者さんは、「ここに定住するわけじゃないけど、この地域に友達と一緒に来たり、家族を連れてきたりする」わけです。定額で住み放題だと、特定の地域や物件を会員さんはリピートしてくれます。そうした人たちが多拠点生活の1つとしてADDressを利用し、その地域の住人になっていきます。なかには、すでに住民票を移した人もいますし、1回だけではなく定期的に同じ地域を訪れる人も。私たちはそうした利用者さんとなる会員さんを集めて、いろいろな住まいを提供することで、いろいろな地域と融合し、その地域の関係人口を増やしたいとも考えています。

ADDressが求めている物件

佐別当:ADDressの場合は、どんな物件でもよいわけではありません。ユニークな建物であったほうが、会員さんにとって価値ある住まいになると思っています。そのため、基本的には、マンションタイプ、都市型のアパートを受け付けていません。一軒家であり、シェアハウスとして人と地域が交流できるような、ユニークな物件を探しています。

ADDressの物件に欠かせない存在

佐別当:ADDressで運営する物件には、家守という存在を必ず置いています。業務委託で、管理人として物件を管理したり、地域と会員さんのハブ役になったりする存在です。スライドの右下に映っている、かなり渋いおじいさんはその一人です。年は82歳(2019年7月時点)。千葉県南房総の物件に住んでもらい、地域と会員さんのハブ役にもなってもらっています。ときには、会員さんと一緒にお酒を飲んだり、釣りをしたりも。「彼のような家守が、ADDressが運営する物件にいること」が極めて重要だと考えています。

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ADDressで人気の物件10選

佐別当:最後に、具体的な事例をいくつか紹介したいと思います。このスライドは、北鎌倉の物件です。けっこうよい物件で、一戸建ての室内には個室とドミトリーがあります。庭もついていて、ベッドや家具・家電も設置しています。次は、群馬県の物件です。

佐別当:草津温泉に近い群馬県の長野原という地域です。ここも一軒家で、もともとは、もっと古い建物だったんですがADDressがリノベしています。群馬県では、カチタスという不動産会社さんと提携をしていますが、この会社さんからも物件を貸してもらっています。ちなみに、カチタスさんは基本、不動産売買ですが、単純に売る買うだけじゃない、貸し出すということにも取り組んでいる不動産会社さんです。ユーザーがどういう使いかたをするのか、モニタリングするような意味合いもあるようです。

佐別当:ここは、福井県の美浜町にある物件です。これは自治体が持っている物件で、ADDressが無償で借りています。自治体からすると、お試し居住と位置付け、移住や定住をしたい人に、トライアルで安く、住む暮らすを体験してもらうことができるわけです。地域への関係人口を増やす取り組みとしては成功事例の1つに挙げられると思います。その予備軍を増やしたいということで取り組んでいる事例です。自治体からすると、「東京でマーケティングするのは大変」です。でも、私たちの会員さんなら、こうした物件も多拠点生活として使ってくれます。そういう人が関係人口になっていくわけですね。

佐別当:この徳島県の三好市池田の場合は、提携先が築60年ほどの古民家を使ったゲストハウスです。この事例のように、ゲストハウスやホテルなどとの提携も進んできました。同じく徳島県の事例をもう一つ。

佐別当:これは、美馬市脇町というところにある物件です。もともと、ゲストハウスとして経営している物件で、その空いている1部屋をADDressと提携し、賃貸で借りています。

佐別当:こちらは山梨県南部町の物件です。コワーキングスペースとトレーニングジムがついています。ちょっとかわったゲストハウスで、ここも1部屋、ADDressが提携しています。次はイレギュラーな事例です。

佐別当:札幌のマンションです。さきほど、「マンションはADDressではやらない」といいましたが、このマンションは特殊な形態で、マンション一棟がシェアハウスとなっています。リビングキッチンは非常に広く、シアタールームも完備。このマンションに、「ADDressの会員」として入ると、シェアハウスの住人と交流することができます。コミュニティに自然に入れるんです。ここは、マンションタイプのシェアハウスということで、実験的に提携しています。

佐別当:長野県の小布施では、自治体が運営している物件の空き物件を一部屋、ADDressで運営しています。通常は、旅館業をされている施設です。ここの空いている一部屋を貸してもらっています。

佐別当:福岡県の八女市からは、ちょっとかわった集合住宅をご紹介します。地方では、小学校の廃校が問題になりつつあります。ここは、そうした廃校の運動場を生かした物件です。移住者を増やしたいということで、有名な建築家が地域の木材で集合住宅を設計しました。農村付き物件として貸し出しています。

佐別当:最後にご紹介するのは、宮崎県日南市の事例です。ここは、シャッター商店街でした。「どうしても譲りたい」という意向がありまして、ADDressで初めて購入し、運用することになりました。地域の人たちと協力し、「一緒に作っていこう」という会話を繰り返してオープンした物件です。一階部分をコミュニティスペースとし、無料で地域の人に開放しています。さらに、レコードを再生できるスペースを設け、入口には木製ブランコなどを設置し、子供たちが集まることができる場所として設計しました。地域のおじいちゃんたちがレコードを寄付してくれて、その数は3、400枚ほどに。ADDressの会員は、2階に住むことができます。地域の人たちとの交流を楽しめて、会員さんがそこに住めて、地域と融合していける取り組みです。そのために、こだわっているのは物件だけではありません。

佐別当:家のなかのアメニティや家具にもこだわっていて、今後はそのパートナーも増やしたいと考えています。大手企業ではありませんが、気持ちを込めて作っている日本の職人や環境や健康によいモノを提供している人と手を組んでいきたいです。たとえば、ベッド。ADDressでは、オーストラリア製のコアラ・マットレスを採用しています。これは、「多拠点で、毎回ベッドが変わると疲れるよね」と感じることへの配慮です。ADDressが運営する洋室はコアラ・マットレスで統一しようということになっています(2019年7月時点)。最大の特徴は、振動を吸収する機能性の高さ。同じマットレスの上にカップルが並んで寝ても、一緒に眠るとなりの人に自分の振動を伝えないため、起こすことがないといわれるほど高機能です。

画像出典元:https://jp.koala.com/

佐別当:ほかに、イケウチオーガニックという今治タオルがADDressの物件では使えます。イケウチオーガニックは、会社が創業120周年を迎える2073年までに、赤ちゃんが食べられるタオルをつくることを企業指針に掲げる企業です。

佐別当:ADDressは、体一つで、どこに行っても会員さんが安心して住める状況を目指しています。そのときに会員さんの手が触れるモノは、いつも私たちが使っている、コンビニやスーパーで買ったアメニティではなく、精魂込めて作られるような、職人の手から生み出されたモノでありたい。そういうアメニティや家具などが使える物件を今後も提供していきたいと考えています。

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