AI が一瞬で売買契約書をチェック! 法務を変えるLegalForce

- 契約書の作成やレビューを支援するリーガルテックサービスに関心が集まっている。
- AIによる契約書レビューに定評のある「LegalForce」が不動産業界への対応を開始した。
- 進化するリーガルテックサービスを取り入れることで、不動産会社の法務もアップデートすることができるのではないか。
契約書作成を支援するリーガルテックに注目が集まる
不動産テックと同様に、盛り上がりつつある日本のリーガルテック(LegalTech)。法律関連の業務をテクノロジーによって効率化していくことへのニーズはますます高まっているようで、株式会社矢野経済研究所の調査(※1)によれば、2018年の国内市場規模(事業者売上高ベース)は前年比115.2%の228億円と推計されており、その上2023年には353億円規模の市場に拡大すると予測されています。不動産業界でのIT重説の解禁に代表されるような、デジタル化に向けた法改正や業界ルールの見直しがさまざまな分野で進んでいる裏付けとも考えられますね。
多くのリーガルテックサービスが存在する中で、不動産業界と直接関係があり、市場を牽引しているのは電子契約サービスですが、法律文書の作成やレビュー業務を支援するサービスも不動産業界とのつながりが深く、注目されている分野です。いずれも高い専門性や論理的思考が求められる業務ですが、文章を扱うという点においてAIや機械学習といった進化スピードの速い技術との親和性が高く、成長著しい領域なのです。
株式会社FRONTEOが2019年7月25日に発表した「リーガルテックAI白書 事前調査」を見ても、大企業、中堅・中小企業ともに「契約書審査・レビュー、契約管理」に関する認知度は高く、企業法務従事者から関心を寄せられていることが分かります。
「リーガルテック」サービス種類別の認知【出典】株式会社FRONTEOのプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000265.000006776.html
そして、こうした契約書の作成支援サービスの中でも特に注目されているのが、2019年4月2日の正式リリース以来、既に250の企業や法律事務所に導入されている「LegalForce」(2020年2月21日時点)。AIを活用して契約書のレビューを支援するソフトウェアであり、アップデートを重ねて機能を拡張していますが、2020年1月14日からは不動産売買契約の自動レビューにも対応するようになりました。
さらに今年度中には賃貸借契約のレビューにも対応予定で、今後も不動産関連の契約類型を充実させていくとのことです。不動産会社の法務もサポートするこのサービスについては、後ほど詳しくご紹介します。
負担が大きくリスクを伴う法律文書の作成・チェック
契約書をはじめとする法律文書の作成において、契約書のレビュー(リーガルチェック)は、訴訟トラブルなどの芽を事前に摘んでおくために最も重要な業務です。
契約書の内容を明確化し、条項の抜け漏れを防ぐには、正確な知識に基づいたリーガルチェックを行う必要があります。不動産関連の契約書の場合、法律の知識に加えて業界知識も必要となりますし、近年では文章量の増加や複雑化が進んでいるため、確認しなければならない項目も多く、ますます手間や時間のかかる作業にもなってきています。
また、不動産売買契約においては取引金額が大きい上に、物件によって契約内容や条件が異なるため、ひな形を作って対応するにも限度があります。法律の専門家ではない不動産業従事者が作成やチェックを行なった契約書には、思いがけないトラブルにつながる重要な見落としが残されているかもしれません。これらの理由から、契約書作成業務においては担当者の物理的・心理的負担が増しているのが現状です。
法律の専門家といえば弁護士ですが、中小規模の不動産会社の場合、顧問弁護士を置いていない場合も少なくありません。日本弁護士連合会(以下、日弁連)の弁護士ニーズに関するアンケート調査(※2)によれば、弁護士を利用したきっかけについて、不動産業、金融業のうち53.9%が「顧問弁護士」と回答しており、他業種も含めた総合的な平均値である46.6%よりもやや高めの結果となっています。一方で顧問弁護士を持たず、有事の際は「取引先や親会社、友人・知人からの紹介」(39.1%)や「顧問以外の弁護士が友人・知人」(13.9%)を頼り、弁護士を利用することも多いようです。
もし契約書のレビューを外部の弁護士に依頼する場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。案件ごとにかかる弁護士費用について、2004年までは日弁連による基準が設けられていましたが、現在は廃止されています。そのため頼む弁護士によって費用はまちまちですが、今回は日弁連が目安として公開している「中小企業のための弁護士報酬目安[2009年アンケート結果版]」の「契約書の作成」という項目を見てみましょう。ここには、仮に年間取引額3000万円で作成に2~3時間程度を要する契約書を作成する場合、手数料はいくらなるのかという設例と、全国の弁護士の回答がまとめられています。それによれば、顧問契約がない場合は10万円前後(43.8%)、顧問契約がある場合は5万円前後(49.0)%となる場合が最も多いようです。
なお同資料によると、その弁護士が得意とする特殊専門的分野に関する法律相談で1時間を要した場合の相談料は、顧問契約がない場合は1万円(43.8%)、顧問契約がある場合(月額顧問料の範囲外として別途請求する場合)は0円(31.6%)~1万円(22.4%)との回答が最も多くなっています。
この資料からも読み取れるように、契約書の作成にあたって法律知識だけでなく、不動産業界特有の知識や慣例も踏まえたアドバイスができる弁護士に相談するとなると、どうしても相応の費用が必要となるでしょう。何より外部の弁護士とのやり取りが発生すると、それ自体に手間や時間がかかります。これは多くの業務を抱えがちな不動産会社の法務担当にとって、負担と言わざるを得ません。そこで注目を集めているのが、弁護士の専門知識を身近なものにしてくれる、法務文書作成支援サービスです。
AI×弁護士の知見で不動産会社の法務もアップデートする「LegalForce」
不動産業界への対応が進む「LegalForce」は、株式会社LegalForceが手掛ける、AIを使った契約書レビュー支援サービス。同社の代表取締役CEOである角田望氏、代表取締役・共同創業者の小笠原匡隆氏は共に弁護士であり、サービスにもその知見が活かされています。
基本的な使い方は、作成した契約書のファイルをアップロードして類型や自社の立場を入力するだけ。AIのチェックが始まり、瞬時に不利な条文や欠落条項などを指摘します。さらに、リスクがあると判定された箇所には指摘ポイントだけでなく、弁護士が監修した条文例を表示してくれるため、修正作業が発生した場合も一人で悩む必要はありません。この機能は2018年6月2日に公布され、2020年4月1日に施行される予定の改正民法にも対応済みです。
実際にLeagalForceを導入した企業からは、それまでは1件の契約書レビューに1時間掛かっていたものが30分程度になり、月に30時間ほど削減できたという声(※3)も。
2019年10月2日以降に導入する場合、一月あたりの基本料金10万円、追加ユーザー1人あたり2万5,000円の定額で利用できます。
LegalFforce【出典】「LegalForce」公式ホームページより【URL】https://legalforce-cloud.com/
さらに、2019年7月からは前述の「自動レビュー機能」に加え、ユーザーの過去案件を活用可能な知見として管理・共有する「ナレッジマネジメント機能」が追加されています。過去の契約書をアップロードすると、AIが契約書の「タイトル」と「当事者名」を抽出し、整理していきます。またファイル単位だけではなく、条文単位で検索可能な「条文検索」機能と組み合わせることで、参照したい過去の案件の該当箇所を簡単に検索することができるようになりました。
これまで紙で管理してきた契約書を、AIが自動で管理・検索しやすいデータベースにしてくれるため、社員間での知識の共有も容易に。作業時間の短縮だけでなく、属人化しがちな過去案件に関する知識や情報、学びを社内で共有することで、作業の「質」の向上も期待できます。
さらに企業法務に精通している弁護士が作成した書式やひな形を270種類以上収めているため、法律知識が求められる書類作成業務全般を支えてくれるサービスとなっています。
不動産売買契約にも対応【出典】株式会社LegalForceのプレスリリースより【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000036601.html
不動産関連の契約類型についても、前述した通り売買契約の自動レビューには既に対応済みであり、賃貸借契約への対応も予定されており、さらなる拡充が待たれるところです。
不動産売買の契約には登記簿謄本や物件の販売図面など、多くの資料が必要となり、中でも正確さが求められる契約書の作成業務には大きな負担がかかります。しかしこれからは、LegalForceのようなサービスを活用することで、改善を図ることが可能になります。
元来「契約」を扱うという性質から、日頃から法律と隣り合わせの不動産業務。リーガルテックの進化によって、法律知識は限られたスペシャリストたちだけのものでなく、必要なときに必要な知識を手に取りやすい状況へと変わってきています。
ブロックチェーンを使い契約を自動化するスマートコントラクトの普及も期待されていますが、リーガルテックサービスの進化や法改正が進むことによって、不動産会社における法務もアップデートされていくのではないでしょうか。
※1 出典:株式会社矢野経済研究所「リーガルテック市場に関する調査(2019年)」(2019年9月27日発表)
※2 出典:日本弁護士連合会「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」(2017年8月報告)
※3 参考:「LegalForce」導入事例紹介ページ(サンワテクノス株式会社)