今さら聞けない不動産テックを知る5つのキーワード

- 不動産業界でITを活用した取り組みを不動産テックと呼ぶ
- 不動産担当者と同伴して行われている内見は、IoTやVRの活用によって変化していく
- IoTデバイスで集めたビッグデータをAIが解析する等、それぞれの技術が他の技術を活かす
金融とITを融合させたフィンテック(Fintech)の流れにとどまらず、不動産業界でもビッグデータやAI、IoTといったIT活用が注目されています。ITを不動産分野に落とし込んだ取り組みは「不動産テック」と呼ばれ、今後の不動産業界に革命を起こすと予想されます。
今回は不動産業界の今と未来を知るために、おさえておきたい5つのキーワードをご紹介いたします。
キーワード1. IoT
IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」とも言われ、パソコンやサーバー、プリンター等のIT機器だけでなく、道路や衣服、家電など身近にある“もの”をインターネットに接続する事を指します。
不動産業界で活用されているIoTと言えば、遠隔操作でドアの解錠・施錠ができる「スマートロック」が例として挙げられます。賃貸物件にスマートロックのシステムを活用すれば、これまで鍵を開け閉めしていた不動産業者の同行が必要なくなり、希望者が一人だけで内見に行く事も可能になります。
IoTデバイスはその便利さに注目が集まりますが、デバイスを使用する事で取得できるデジタルデータが不動産業界にとって非常に重要です。例えば、スマートロックを使って一人で内見に訪れた顧客がどれくらいの時間滞在したのかというデータを集め、滞在時間の長さによって成約率は変わるのか、担当者同伴の時に比べて滞在時間は長くなるのか等の検証ができます。
便利なサービスを提供すると同時に、顧客のデータを取得して新たなサービスを作り出すという重要な役割を担っているのがIoTです。
キーワード2. ビッグデータ
総務省のホームページには、ビッグデータについて「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」という文言があります。前述のIoTデバイスで取得したデータもビッグデータです。
顧客の年齢・性別・居住エリア・希望物件の特徴等、不動産業界で当たり前と捉えられている個々の情報も、蓄積・傾向分析をしていく事で価値のある「ビックデータ」に変わります。
ビッグデータを活用したサービスは続々と登場しています。適正な家賃を割り出すサービスや、思いもよらない掘り出しもの物件との出会いを生むマッチングサービス、5年後、10年後の不動産価格を予測するサービスなど様々なサービスがあります。
多くのメリットをもたらす可能性があるビッグデータですが、問題はそのデータをどこから取得するかです。自社が所有しているIoTデバイスやウェブサイトのデータは手軽に取得できますが、より多くのデータを集めようすると、そのための仕組みを作らなければなりません。また、大量に集めたデータを分析する人材も必要になってきます。このビッグデータ解析のスペシャリストの事を「データサイエンティスト」と呼びます。
課題もありますが、ビッグデータが今後の不動産業界において重要なキーワードとなってくる事は間違いないでしょう。
キーワード3. AI
AIは「Artificial Intelligence」の頭文字をとったもので、日本語では「人工知能」と訳されます。広く捉えると“コンピューターがデータを学習し、解析し、提案してくれる技術や仕組みの事”を指します。
AIが不動産業界で進化していけば、例えば物件検索はもっと柔軟に、スマートに変わるでしょう。従来の条件マッチングの検索では「新宿でワンルームを探している人」には新宿駅周辺の物件しかリストアップされません。しかし「新宿でワンルームを探している人は、紆余曲折を経て新宿駅に1本で行ける近隣駅の物件に契約する事が多い」という傾向が大量のデータから割り出せれば、周辺駅の物件も候補としてリストアップする事が可能になります。
データから傾向を分析し、一人ひとりのニーズに合った情報を提供するAIは今後不動産サービスの一端を担う事になるでしょう。
さらに、iPhoneに搭載されているSiriや、ソフトバンクが発売しているPepperのように、まるで人間のように顧客と会話ができる「接客型AI」にも期待が寄せられています。もしAIが顧客の窓口業務を請負えれば人件費の削減にも繋がり、様々なデータを駆使して業務効率化にも貢献できるでしょう。
キーワード4. VR
E3 2017やTOKYO GAME SHOWなどのイベントで続々と新商品が発表され、ゲーム・エンタテインメント業界で注目を集めるVRは、不動産業界においても強い期待を持たれています。
例えば内見にVRを用いれば、その場にいながら部屋に行ったような気分を味わう事ができます。また、VRの世界は仮想現実であるため、リノベーション後の部屋を再現するようなサービスも実現可能です。
VRであれば複数の顧客が同時に同じ部屋を内見する事ができるだけでなく、いつでも・どこからでも利用できるため、従来の内見よりも効率よく・より多くの顧客に物件を見てもらうことが可能になります。さらに、顧客がVR上で見た内見の映像データを残すことで、営業担当者と日程調整をせずに何度も’再訪問’でき、顧客満足度向上にも繋がる事が期待されます。
キーワード5. クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを経由して出資・投資・寄付を募る資金調達の方法です。不動産がその対象になる事も増えてきました。
「一口1万円から」等、物件をまるごと購入するよりもはるかに低いリスクで不動産投資に挑戦する事ができます。物件の運用はプロの不動産業者によって行われるので、その点も安心。新たな不動産投資法として注目され、人気の物件はすぐに募集が締め切られてしまう状態になっています。
また、不動産のクラウドファンディングは地域活性化にも貢献する事が期待されています。地域再生の一環として地方の旅館に出資し、特典として旅館の宿泊券をプレゼントする事例もあり、ふるさと納税のように手軽な不動産投資で地域再生に貢献したいという方が増えてくる可能性もあります。
まとめ
金融業界がそうであったように、不動産業界もIT化が進むことによって大きく様変わりしていく事でしょう。今後どのような未来的サービスが実現するのか。これからの不動産業界から目が離せません。