電子契約を導入する企業が急増!セキュリティは大丈夫?リスクと対策を解説

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電子契約を導入する企業が急増!セキュリティは大丈夫?リスクと対策を解説

SUMAVEでは以前にも電子契約について取り上げてきましたが、今回は電子契約とセキュリティに関してお伝えしていきます。まずは電子契約の概要や種類について見ていきましょう。

電子契約とは?「当事者型」と「立会人型」がある

電子契約とは電子データに電子署名又は電子サインを行うことで締結する契約です。
新型コロナウイルス感染症の影響やデジタル庁の創設・ハンコ廃止といった政府のDX施策などにより、電子契約の市場は拡大しています。

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と株式会社アイ・ティ・アールが共同で2021年1月に実施した「企業IT利活用動向調査2021」によると「電子契約を採用している」と回答した企業は67.2%に上りました。

2020年7月調査時の41.5%から約半年で67.2%に拡大しました。今後の予定を含めると、8割強の企業が電子契約を利用する見込みとなっています。

電子契約には「当事者型」と「立会人型」という2つの種類があります。
当事者型とは契約をする当事者間双方の電子署名を付与するものです。契約をするにあたって認証局で本人確認を行い「電子証明書」を交付してもらう必要があります。電子証明書は第三者が本人であることを証明するもので、印鑑登録証明書などと同じ位置づけとなります。

立会人型とは契約者の一方が電子署名事業者のクラウド上に契約書を掲載し、他方が内容に同意することによって契約が成立します。


【画像出典】神戸市役所「電子契約を本格導入します 記者発表資料」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.city.kobe.lg.jp/a08691/130075843725.html

「立会人型」は「事業者署名型」「クラウド 型」とも呼ばれ、埼玉県や神戸市など多くの地方自治体 でも利用されています。

電子契約は「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」3条によって、書面と同様に法的な効力があるとみなされます。

第3条
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する 。

電子署名及び認証業務に関する法律より

電子契約のメリット・デメリット・リスク

電子契約の第一のメリットは、紙の契約書を保管する必要がなくなりペーパーレス化が実現できることです。オンラインで契約が確認できるため、テレワークにも対応しやすいと言えるでしょう。

また、押印や書類の郵送・持参などの業務時間が削減され効率化を図ることができます。

神戸市のホームページには「例年、およそ8,000件を超える契約をしていますが、事務処理に要していた時間も、およそ4,000時間※削減できる見込みです」との記載があります。
神戸市では電子契約前に総額8,500万円程度の印紙税のコストがかかっていましたが、電子契約は印紙税の対象外となりますのでコスト削減に繋がります。
書類郵送にかかる代金も削減可能です。

当事者型では本人確認を行うため、セキュリティが強固であるというメリットもあります。
一方で、電子契約は相手によっては契約に応じてもらえない可能性があります。特に高齢のオーナーや機械に弱いかたは電子契約を避ける傾向があります。

また媒介・代理契約書 やマンション管理委託契約書 など電子契約ができない書類もあります。重要事項説明は「IT重説」としてオンラインで実施する企業が増えています。

立会人型ではセキュリティの面で、改ざんやなりすましのリスクが生じてしまいます。電子契約に限ったことではありませんが、PCを使って業務をしているとサイバー攻撃のリスクも生じてしまいます。
オンラインならではのリスクにどうやって対応していけば良いのでしょうか?

電子契約のセキュリティ対策3

  1. 人為的な情報漏えい対策として社員教育を
  2. タイムスタンプ活用・パスワード設定などのセキュリティ強化
  3. ウイルス対策ソフトの導入

1.人為的な情報漏えい対策として社員教育を

2022年6月兵庫県尼崎市で、全 市民約46万人分の個人情報を記録したUSBメモリーを委託業者の社員が紛失したことが大きなニュースになりました。

人為的なミスによって情報漏えいが起こると、企業イメージが悪化し顧客・取引先の信頼を損なってしまうでしょう。

情報漏えい対策として、社員には企業の情報を許可なく持ち出さない、目の届かないところに放置しないなどのセキュリティに関する教育を行いましょう。
情報漏えいを起こした又は発見した際には、自分で何とかしようとせずに上司・管理者に報告するように伝えることが重要です。
万が一情報漏えいが発生した時に重要なことは、被害を最小限にとどめることです。迅速かつ冷静に対処しましょう。

2.タイムスタンプ活用・パスワード設定などのセキュリティ強化

タイムスタンプ とは、一定の時刻に電子データが存在していたこと、改ざんされていないことを証明する技術です。時刻認証局が第3者としてタイムスタンプを発行し、信頼性を担保する仕組みです。

タイムスタンプに記載されている情報とオリジナルの電子データから得られる情報を比べ、タイムスタンプが付された時刻から改ざんされていないことを確認することが可能となります。

【画像出典】一般財団法人 日本データ通信協会「タイムスタンプのしくみ」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.dekyo.or.jp/tb/contents/summary/system_2.html

また電子契約関連のメールや書類にパスワードを設定し、相手に電話や別のアカウントの電子メールでパスワードを通知する(二段階認証)ことでセキュリティのレベルを上げることもできます。

個別にアクセス権限を付与するのも有効な方法です。
パスワード設定と個別のアクセス権限は改ざん・破棄のリスク、二段階認証はなりすましのリスクの軽減が期待できます。

3.ウイルス対策ソフトの導入

電子契約に関わらず、PCにウイルスが侵入した、サイバー攻撃があった時に備えてウイルス対策ソフトをインストールしておくことをおすすめします。
データは定期的にバックアップを行いましょう。

経済産業省が適度に簡易で信頼性のある身元確認を検討中

経済産業省ではオンラインによる本人確認を強化することでユーザーの手間やコストが増大することから、簡易で信頼性のある中間強度の手法を検討中です。


【画像出典】経済産業省「オンラインサービスにおける身元確認手法の整理に関する
検討報告書」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.meti.go.jp/press/2020/04/20200417002/20200417002-1.pdf

上の図では右に行けば行くほどセキュリティが強化されますが、本人確認の手間とコストが必要となりユーザーに負担がかかってしまいます。

中間強度のセキュリティ手法として、経済産業省は金融機関や通信キャリアなどで身元確認済APIを活用する可能性について検討しています。
実現されることでセキュリティに関する手間・コストの削減が期待できます。
電子契約の現状やセキュリティ対策と併せて、経済産業省の今後の動向にも注目していきましょう。

 

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19

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