不動産のID化推進で改めて考える「本当に住所は必要か?」

- 住所問題は日本に限らず世界で課題感となっている
- 住所を見直すのではなくデジタルの力で地球上の位置情報を再整理するサービスが増えてきた
- CMでおなじみのwhat3wordも同様のサービスでその内容を紹介する
住所情報をどのように管理するのか
不動産業界の情報の収集・整理・管理は煩雑で、宅建業者、デベロッパーなどは仲介や開発などの際に、独自に情報を収集、名寄せなどの作業をしなければなりません。ただ、その際には「三丁目」と「3丁目」など住所情報に表記ゆれがあり、同一物件の特定が困難なケースもあります。
こうした課題を根本から解決するために、国交省が不動産ID、そして不動産テック協会が不動産共通IDを推進しているのは、SUMAVEでも取り上げてきました(※1)。またその仕組みについてもご紹介してきました(※2)。
※1 最近話題の不動産共通IDって何?
※2 不動産共通IDは日本の不動産DXを加速させるか?
地球全体を3メートル四方に分割して新住所を発行する
最近、「waht3words」のテレビCMを見たという人もいるのではないでしょうか。
これはアプリを使い、世界中のどんな場所でも、3つの単語だけで検索・共有・ナビができるサービスです。3つの単語は世界中を3メートル四方で区切って管理されており、住所のわからない場所を待ち合わせとしてセットしたり、届けて欲しい荷物を住所ではなく指定の場所に届けてもらったりするといったことが使い方として想定されています。
これまで位置情報は、住所などの長い文字列や経緯度などの数字が使われてきましたが、3つの単語で簡潔に表せる点が同サービスの特徴です。例えば、東京・渋谷のスクランブル交差点の中心部は緯経度で表せば“35.659457,139.700488”となりますが、what3wordsなら「のばす。めうえ。しゅうり」の3語となります。
Webサイトやアプリ、APIで利用可能で、自動車のナビゲーションや配送・物流などに活用されています。また、災害時、住所などがない場所へ救援物資を届ける場合などにも活用されています。
「住所情報だけで自宅玄関の正確な位置にたどり着ける」と思うのは42%
what3wordsの日本における調査では「住所情報だけで自宅玄関の正確な位置にたどり着ける」と思うのは42%だったという結果が発表されています。同社は正確さに欠ける現在の住所表記は企業にとってコストがかかり、顧客に不便をかけ、イノベーションを阻害すると指摘しています。
調査ではこのほか、以下のような結果がありました。
●25%が建物の入り口ではなく、建物の中心部を目的地としたルートが表示されたと回答。
●19%が住所のない場所(公園、ポップアップ、ビーチなど)を目的地としていたと回答。
●15%が通り名を入力したら特定の場所ではなく広域エリア全体が指定されたと回答。
●15%がナビで認識できない住所(新築ビルや新興住宅地など)を目的地としていたと回答。
【出典】what3words Limited.【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000089785.html
GoogleのOLCなど新住所発行サービスや位置情報の重要度は増してきている
what3wordsの類似サービスとしては、Open Location Code(OLC)があげられます。これは地球上の任意の場所を識別するためのジオコードシステムで、Googleが開発しました。このシステムで作成されたロケーションコードは「プラスコード」と呼ばれています。
Googleマップでプラスコードはサポートされていて、what3wordsのように住所が不特定でも利用可能です。Googleは通常の方法で住所を割り当てるのが難しい地方自治体などと協力して、プラスコードを行政でも使えるようにしています。たとえばケニヤなどでは身分証明書など住所を必要とする場面でプラスコードが使われています。
日本における不動産ID、不動産共通IDの取り組みは、単なる住所情報だけの話ではありませんが、例えば住所についてはこのような新住所発行システムと紐付けるといったことも考えられそうです。