不動産共通IDは日本の不動産DXを加速させるか?

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不動産共通IDは日本の不動産DXを加速させるか?

2021年10月7日、8日に東京ビッグサイト青海展示棟で「住宅ビジネスフェア2021」が開催されました。今回は開催中に行われた特別講演「『不動産共通ID』の取り組み 〜不動産業界全体における情報連携を目指して〜」をレポートします。

不動産テック協会の中核メンバーが登壇、解説

講演のモデレータは株式会社サービシンクの代表取締役社長の名村晋治氏、パネリストは株式会社Geolonia(ジオロニア)の代表取締役CEOの宮内隆行氏、株式会社ライナフの代表取締役社長の滝沢潔氏。不動産テック協会で、不動産共通IDに取り組んでいるメンバーです。

不動産共通ID提供開始の背景と今後の展望

はじめに不動産共通IDの必要性について、滝沢氏が「不動産業界の悲願! 不動産共通ID提供開始の背景と今後の展望」として講演(不動産共通IDについてはSUMAVEでも紹介しているのであわせてご確認ください)。

滝沢氏は不動産共通IDが実現すると様々なアクティビティデータの活用が可能になると話します。

「例えば、宅配業者は配送先住所というデータを持っている。この住所データをAとします。このAの住人が私どもライナフの置き配サービスを利用している場合、この住所Aとライナフのお客様の住所データが等しいかを照会し、解錠するといった手続きが裏側で必要にあります」

しかし、この住所データがそれぞれの事業者によって同じ場所なのに異なっていることが多いといいます。

それぞれのシステムで物件の情報を管理しているため各事業者によって、住所も異なれば管理している番号も異なる

このため不動産取引における情報収集コストは膨大となり、例えば不動産の査定書作成時に調査にかかる時間は約5時間、書類作成には約2.5時間、約1人日発生してしまっていると滝沢氏は指摘。「不動産業者であれば、誰もが感じていることだと思います」と話しました。

ライナフ代表取締役社長の滝沢潔氏

そのせいもあり、不動産業界は他の産業と比べ社外データ(住所などの公共データ)の蓄積が低いことも指摘。さらに、日本の不動産マーケットの透明性がグローバル社会でも低い位置にいることも解説しました。

「2020年度半のグローバル不動産透明度インデックスは16位と先進国の中でも低い。しかも、サブインデックス別で見ると、オルタナティブ不動産を含むデータ整備の『市場ファンダメンタルズ』、財務情報や個別部件の開示といった『上場法人のガバナンス』、実際の不動産取引や商慣習などの『取引プロセス』は20位以下の圏外です」

不動産業界では住所という公共性の高い情報が不統一のまま管理されている状態のため、不動産データを持つ各企業同士がデータ連携をしようとすると、その負荷が高くなるのです。

不動産データの連携には膨大な名寄せ作業が発生する


「不動産情報としてはレインズが知られていますが、レインズは不動産の募集リストであり不動産データの集約・蓄積機能は持っていません。各省庁や団体なども互いにデータ連携のできない独立した各DBサービスを都度構築してきており、同じ場所(物件)を異なるデータで管理していることが課題です」

この課題を解決するために、不動産テック協会が推進しているのが不動産共通IDです。

不動産共通IDは不動産会社が保有する「不動産情報」に共通のIDを付与する

不動産共通IDによって各社の情報連携をしやすくさせ、DXを加速させる

実際に不動産共通IDの活用例として、不動産情報の重複を削除し、不動産取引の効率化、迅速化を図ることができるほか、工務店などに点在する不動産の保守修繕情報を集約化することなどを紹介。また、冒頭に滝沢氏が説明したスマートロックの在宅情報と宅配業者の配達情報をリンクさせることで、再配達をしなくて済む取り組みや、将来的には衛星画像の夜間光情報と緯度経度情報、電気・水道利用情報で空き家を特定可能にする取り組みにも活用できると話します。

データが共通化されることで想定される活用例

不動産IDの仕組みと今度の課題

続いて開発を担当する宮内氏が不動産共通IDの仕組みを解説します。

「基本は住所及び物件名を元に一意なIDを生成して返すAPIを提供します。不動産共通IDがあることで、不動産プレイヤー間の連携は容易になります」

住所や物件名をベースにIDを生成する

宮内氏は日本の住所は、特定の場所を示すIDのようなものではなく、自然言語に近い仕組みになっており、ビッグデータとしての取り扱いは難しい状態であることを事例で紹介していきます。

住所表記は自然言語のようにバラバラになっている状態

「スライドの左下の札幌市の住所を見てください。札幌市には軒・条システムというのがあり、北海道札幌市西区24軒2条2丁目3番3号というのがあります。これを地元の人は北海道札幌市西区24-2-2-3-3と書くこともあるといいます。これでは日本全国を住所の表記方法で統一することは難しい。別のIDが必要になります」

株式会社Geolonia(ジオロニア)の代表取締役CEOの宮内隆行氏


管理している個人・事業・団体によって旧字体と新字体を使っているところがある(写真の旧字と新字は同じ意味を表す)

カタカナの「ニ」と漢数字「二」など入力ミスはもちろん、OCRで読み込んだ際に誤認識されているデータが非常に多くあることを指摘


ハイフォンか、マイナスか、棒線か。これらも同じようにハイフォンとして扱われている

東京都の霞が関は、駅名で霞ヶ関と霞ケ関もある。「国は細かいことはどうでもいいと思っているのかな?」とは宮内氏

宮内氏はこうした課題を解決するために、不動産共通IDを生み出し、それを利活用する仕組みを考えたと話します。現在、不動産テック協会のHPから利用ができますが、「社会インフラとして使ってもらうこと」を心がけたと話し、「ID発行に特化したサービスで物件に関する各種データを収集することを目的としていない。そしてソースコードはほぼすべてオープンソース化し、皆様と一緒に成長させていきたい」と思いを伝えました。

「課題は一つの住所に複数の建物がある場合、どのように判別するかということにあるが、こうした課題を一つずつ解決していき、土地をヒストリカルにトラッキングできるようにしていけるようにする。コンピューターが扱いやすい現実社会を創っていきたい」

不動産へのID付与は国土交通省も推進していますが、同省が検討しているのは登記簿謄本等に記載されている不動産番号をベースにした不動産IDです(記事https://www.sumave.com/20210908_21555/参照)。不動産テック協会では、この不動産番号をベースにした不動産共通IDができた場合は、同じように管理できる仕組みを用意する予定と話します。

「住所を入れると、国交省の不動産IDと私たちの不動産共通IDの両方が出せる仕組みを用意する予定です。どちらが優位というわけではありませんが、私も不動産IDルール検討会に入っており、今まさにどうすべきかを議論しているところです」と滝沢氏。

日本の住所は自然言語に近く、ビッグデータ化しづらい状況にあり、それが日本の不動産の効率を下げたりイノベーションを阻害したりする可能性がある今、不動産共通IDの取り組みは不動産業界全体が考え、後押ししていくべき取り組みといえそうです。

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