国土交通省のDX施策とは? 不動産業界への影響を解説

2022.01.05
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国土交通省のDX施策とは? 不動産業界への影響を解説

国土交通省のDX施策とは? インフラのデジタル化が課題に

国土交通省では、新型コロナウイルスを機に会議のオンライン化や地方移住が進むなど業務形態・働き方が大きく変わっていることを踏まえ、インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めています。

2020年7月に「インフラ分野のDX 推進本部」が設置され、第一回の会議が行われました。

これまでDX推進本部会議は4回開催され、会議の概要・資料が国土交通省のホームページで公表されています。

スケジュール
2020年
7月29日 第1回インフラ分野のDX推進本部会議
9月30日 概算要求提出
10月19日 第2回インフラ分野のDX推進本部会議
2021年
1月29日 第3回インフラ分野のDX推進本部会議
2月9日 インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)施策公表
10月4日  第1次岸田内閣が発足・斉藤鉄夫氏が国土交通省大臣に就任
11月5日 第4回インフラ分野のDX推進本部会議
11月10日  第2次岸田内閣が発足

今後の予定
12月末 政府予算案閣議決定
第5回 インフラ分野のDX本部会議 アクションプランの策定→公表
6月頃 成長戦略・骨太方針の閣議決定

インフラ分野では増加する自然災害への対策・人件費や資材の高騰による建築コストの増大などが課題となっています。

2020年の「国土交通白書」 によると、日本の国土は、地形・地質・気象等の面から洪水・土砂災害が起こりやすく近年急増中、自然災害による死亡者数・行方不明者数も増加傾向にあります。

さらに新築物件は建築現場の人手不足や資材の値上げに伴い年々建築費が上 昇しているという問題があります。「新築はコストが高い」というイメージで物件の売買・運用を敬遠される方は多いのではないでしょうか。

国土交通省ではデータやデジタル技術を活用し、業務・組織・プロセスを変革、国民のニーズを汲み取った安心で安全な生活の実現を目的にインフラ分野の DX施策を進めており、上記の問題解決に繋がる可能性があります。

具体的に不動産業界への影響を見ていきましょう。

国土交通省のDX、不動産業界への影響は?

国土交通省のDX施策で不動産業界への影響が大きいと予測されるものは、主に以下の4点となります。

  • 国土交通データプラットフォームの構築
  • 災害リスクの情報を3次元化
  • 人流データを収集し、地方の不動産価値向上の施策を支援
  • 建設現場の「働き方改革」で、新築物件のコスト削減を

1 .国土交通データプラットフォームの構築

これまでエリアのインフラ・地質・気象・工事・人流のデータなどは個別に管理されていたことから、情報収集が煩雑という課題がありました。

2020年4月2日に公開された「国土交通データプラットフォーム」は、国・地方自治体の保有するトンネル・ダムなどのインフラや点検結果のデータ約8 万件に加え、全国のボーリング結果による地盤データ約14 万件の計22 万件を一括で表示することが可能となりました。

加えて建物や街路などに名称や用途、建設年といった都市情報を付与し、都市空間をインターネット上で再現する3D都市モデル の閲覧、訪日外国人の流動データ、旅客鉄道の流動調査の結果データ、耐震診断結果、過去の災害に関するデータなどを調べる事が可能です。

訪日外国人の流動データや旅客鉄道の流動調査の結果データはエリアの人流・交通網が分かり、耐震診断結果や過去の災害データではエリアの災害リスクが把握できます。

例として北海道の道央エリア(札幌市を含む)の2015年の幹線旅客鉄道流通調査を見てみましょう。

道内に鉄道で移動する人よりも、本州に飛行機で移動する人が圧倒的に多い事が分かります。

【画像出典】国土交通データプラットフォームver2.0よりキャプチャにて作成 https://www.mlit-data.jp/platform/view/#

データによると札幌市近郊にある「新千歳空港」から東京へ出発する人が最も多く、年間約250万人の人が道央から東京へ移動 しています。

よって札幌近郊の物件を運用する際には、新千歳空港へのアクセスも利便性の1つとして加えられることが分かります。

ただしサイトはver2.0の段階ですので、情報の量が少なく精度が十分ではない可能性があります。国土交通省の発表した予定では2022年以内にはプラットフォームが構築され、 2023年度から本格的な運用が始まる見込みです。

2.災害リスクの情報を3次元化

物件情報を収集する際にチェックする、災害リスクの分かる「ハザードマップ」
ハザードマップの印刷物は地図上にリスク情報を表示しているため、浸水の深さといった災害のイメージが伝わりにくいという現状があります。

水害リスク情報を3次元で提供し、リアルな情報を提供するために以下の3点が検討されています。

1. 3D都市モデル(PLATEAU/プラトー)との連携によるリスク情報提供
2. 地理院地図3D表現動向を踏まえたリスク情報表示手法の検討
3. オープンデータ化により民間サイトでリスク情報の提供を推進

「PLATEAU(プラトー)」については、こちらの記事 で国土交通省の内山裕弥氏による解説をご紹介しています。そのなかでこんな発言がありました。

都市や町の開発許可を申請するために、いろいろな資料を集める必要があります。準備する方はもちろん、受け付けて確認する役所側も大変なんです。ですが、関連情報をプラトーに集約することで解決します。

上記の施策が実現されることで災害リスクがリアルに明確化され、物件情報収集の効率化が期待できます。

3.人流データを収集し、地方の不動産価値向上の施策を支援

観光・交通・防災など、様々な施策で人々の行動データが不足していることから、センサー・カメラ・ICカード・携帯端末・基地局情報などにより人流を検知し、データに基づく施策を展開していくプランがあります。

第4回のDX推進本部会議の資料では、人流のデータに加え、土地・不動産取引情報などの情報を加味し、地域の価値向上・不動産価値向上などの地域活性化施策を支援すると公表されました。

東京・大阪など都市圏に人口集中が続いており、地方の人口減少や空き家増加が課題となっています。
人流データの収集は地方創生・不動産価値の向上に役立つ可能性を秘めていると言えるでしょう。

4.建設現場の「働き方改革」で、新築物件のコスト削減を

首都圏では新築分譲マンションの価格高騰がニュースと なり、2021年10月には1戸あたり平均価格6750万円と10月としては過去最高額を記録、年間を通してもバブル期である1990年を超え、過去最高となる見通しです。
国土交通省のDX施策では建設現場の「働き方改革」としてロボットやAI等を活用、現場で働く人の支援や代替を行い建設現場の効率化を目指しています。

機械・機器の導入により現場の職員を少人数化、人件費を削減することで新築物件のコストが下がる可能性があります。

九州地方整備局では全国初のスカイバーチャルツアーを作成・公開

既に行われている取り組み事例を1つ紹介します。
九州地方整備局では、DX施策の一環として災害時の被害状況の把握や河川の維持管理、構造物の点検を目的 とした「スカイバーチャルツアー」を作成・公開しました。
これは職員がドローンで200m毎に河川両岸(⾼度20m、50m)を撮影した360度映像(ストリートビュー)で、インターネット上で公開されており、だれでもPC・スマートフォンで閲覧可能です。(こちら→ http://www.qsr.mlit.go.jp/infradx/indexsvt.html )

画面上の矢印ボタンを押すことで上空を上下左右に移動でき、VR空間を歩き回るような体験ができます。
現在公開しているエリアは大分県と福岡県を流れる山国川、豪雨災害があった福岡県朝倉市乙石川の被災現場となります。

今後の動向に注目

2021年度末には第5回DX推進本部会議が開催され、アクションプランの策定、各部局で取り組む施策や中長期的な目標が発表される予定です。

アクションプランでは施策のスケジュールが発表される見込みで、データプラットフォームへのデータ追加や人流データの把握による不動産価値向上などに関する今後の具体的な動向が明らかになる可能性があります。
SUMAVEではこれまでも不動産のDXに関する行政の動きをお伝えしてきました。

(ex. 不動産の電子契約が来年から本格化 https://www.sumave.com/20211020_21603/ )

不動産のDX化に関しては、国土交通省の動きも要注目と言えるでしょう。

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