【イベントレポート】コロナ禍がデジタル活用を後押し 不動産テックを考えるイベントが開催

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【イベントレポート】コロナ禍がデジタル活用を後押し 不動産テックを考えるイベントが開催

【画像出典】国土交通省 都市局 都市政策課 課長補佐 内山裕弥氏のプレゼンテーションより

地域におけるProp Tech(不動産テック)について考えるイベントが開催

東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センター(CREI)柳川範之機構長
東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センター(CREI)柳川範之機構長


2021年6月23日に柳川範之氏が機構長を務める東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センター(CREI)がウェビナーを開催しました。本記事は「地域イノベーションの創発研究」をテーマにしたウェビナーのイベントレポートです。

ウェビナーは二部に分かれていて、一部では国土交通省 都市局 都市政策課 課長補佐の内山裕弥氏による「都市における3Dモデル(国土交通省PLATEAU)と実務での活用について」の発表があり、二部では「地域におけるProp Techの展開に向けて」をテーマにしたパネルディスカッションが行われました。パネリストにはイタンジ株式会社 代表取締役 野口真平氏、WealthPark株式会社 取締役CBO 手塚健介氏、株式会社トーラス 代表取締役 木村幹夫氏、ビットリアルティ株式会社 取締役副社長 谷山智彦氏が登壇しました。

モデレーターは株式会社デジタルベースキャピタル 代表パートナー 桜井駿氏と東京大学CREI 武藤祥郎特任教授です。さっそく一部の様子から紹介しましょう。

3Dモデル「プラトー」の活用

国土交通省 都市局 都市政策課 課長補佐 内山裕弥氏
国土交通省 都市局 都市政策課 課長補佐 内山裕弥氏

国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備とオープンデータ化プロジェクトである「PLATEAU(プラトー)」。このプロジェクトチームに所属する内山裕弥氏がまずはプラトープロジェクトの全体像を説明します。


「プラトーは昨年度から始まったプロジェクトです。3D都市モデルの整備と活用を行っています。データを集積しただけでは意味がないので、それをオープンソース化し、新たな価値を作って行こうというプロジェクトです。具体的には都市空間を立体的にビジュアライズさせ、それをサイバー上に再現。これによって、精密なシミュレーションが可能になります。また、フィジカル空間とサイバー空間が相互に情報を交換できるプラットフォームとしてプラトーを活用することで、都市や地域が抱えるさまざまな問題のソリューション創出を目指しています」

SUMAVEでも、以前デジタルツインなどを紹介しましたが、プラトーによって実現度が増してきたといえそうです。

プラトーのマップ化は今までの都市データと全く違うと内山氏は言います。
プラトーと既存マップの違い

プラトーと既存マップの違い

「プラトーでは建物単位でマップを作り上げていきます。これは面として建築物を区別しているからです。市町村の持つデータと照らし合わせて、この建物は何階建て鉄筋なのか木造なのかなどひとつひとつ関連付けていきます。重要なのはプラトーのデータでは立体的に見えるだけではなく、それぞれの建物に意味情報が付与されているということです。そういったデータって実は今まではなかったんですよ」

プラトーを活用した実証実験はすでにいくつも行われています。

「虎ノ門ヒルズで行ったのは、屋内外をシームレスに繋ぐ避難訓練シミュレーションです。精度の高いシミュレーションによって、避難時にどこに人が殺到しやすく、危ないのかなどを可視化しました」

屋内外をシームレスに繋ぐ避難訓練シミュレーション
屋内外をシームレスに繋ぐ避難訓練シミュレーション

プラトーの情報に地価バリューや人流データを重ね、さまざまなシミュレーションを行うことが可能になります。

内山氏はさらに今後の展望についてこう話しました。

「都市や町の開発許可を申請するために、いろいろな資料を集める必要があります。準備する方はもちろん、受け付けて確認する役所側も大変なんです。ですが、関連情報をプラトーに集約することで解決します。もう少しブラッシュアップすると実用化できるのではと思っています」

内山氏の発表の後、柳川機構長が「インフラとしてプラトーを見たときにどのような強みがあるのか」と質問します。これに対し、内山氏はその品質の高さを挙げました。

「もともと市町村が作っていた地図を元に作っています。この資料は今までは限られた場所で使用され、オープンにするという発想もあまりありませんでした。しかし、他のデータと比べて圧倒的に品質が担保されています。また、これを標準化することは国にしかできません」

プラトーを活用することで、都市開発自体もスムーズになることが期待されます。

コロナ禍がもたらしたデジタル活用

二部はパネリストによるディスカッションが繰り広げられました。まずはモデレーターを務める株式会社デジタルベースキャピタルの桜井氏から「コロナ禍でデジタルの活用に対して変化があったか?」と投げかけられました。

「ウェブ会議が浸透し、デジタルへの抵抗が減った」と話すのはWealthPark株式会社の手塚氏です。
イタンジ株式会社の野口氏も「この4月からクライアントの企業の中でもDX系の部署が新設されています。IT系の部署は今までもありましたが、DX推進室などが設立されたのはポジティブなことだと思います。一方で、会社によっては何をするべきかわからないという課題もありそう」と共感していました。

オンライン不動産投資プラットフォームを提供するビットリアルティ株式会社の谷山氏は、マネーフローについての変化を指摘します。
「今までとは違うマネーフローを持つことに重要性を感じる人が増えたのかな。コロナのショックは、オンラインでお金のやり取りができるプラットフォームが注目されるきっかけになりました」

地域の課題とビジネスチャンス

地域に目を向けた際に、都会とは違う課題があると野口氏は話します。
「地域差があるのが不動産業界の特徴です。イタンジは全国で不動産賃貸取引をしていますが、わかりやすい例で言うと賃料がまず違います。賃料が違うということは、サービスも変わってくるんですよね。東京と同じ基準でサービスを提供すると費用対効果が合わないので、地方だと生産性が悪くなります」

デジタルの面でも差があると言うのは手塚氏です。
「法人がアナログなのは地方ですね。東京とは違い、大阪でさえも対面での打ち合わせを求めるケースが多いように思います。また、ラインやメルカリを日常的に使うことで、消費者はデジタルに慣れているけれど、法人はまだまだです。これは伸びしろでもあって、ここが変わって電子証明などが受け入れるようになると大きい」

株式会社トーラスの木村氏が「地方でも「こんなところに?」という場所に外国人がいたりしますよね。彼らの情報網があるからです。昔のニューヨークのソーホーはただの倉庫街でした。ですが、おいしいご飯屋さんができ、そこに芸術家が集まるようになりました。そこから生まれたものが、街や空間を作っていったんですよね。これは不動産の価値を上げる本質的なことだと思います。不動産は情報産業です。特に地方は戦略的にやっていかないと」と続けます。

また、谷山氏は東京と地方という視点だけでは課題解決にならないと言います。

「東京から地方へ。そして地方から東京へと資産を形成するものが広がっています。地方も含めた物件に対して投資することで、投資先が分散されリスクが下がりますよね。見る必要があるのは都心と地方だけではなく大手企業と中小企業だと思います。都心でも中小企業だと(デジタルツールの導入に時間がかかり)大変なことが、地方一番手の企業では(導入までの)意思決定が早いこともある。リテラシーやデジタルに対していい反応もあります。そういう軸でも考えていきたい」

谷山氏は対立構造として課題を見るのではなく、デジタルツールをどうやって使っていくかを考える必要性があると指摘しました。

「協調して共に産業規模をあげていく。そういう考え方に変わってきたようにも感じます」

モデレーターの東京大学CREI武藤特任教授は「今日はキックオフという位置付けで開催しました。オンラインだからできる新しい取り組みで、地域にイノベーションを起こしていきたし、そのためのハブになりたい」とまとめました。

活用までのハードルはあるもののデジタルツールはまさに、都市や地方の垣根を越えて課題解決を可能にします。地域間や企業の規模感でさまざまな課題がありますが、プラトーをはじめとしたツールの活用で解決が加速するのではないでしょうか。予定時間を10分程度オーバーするほど盛り上がったイベントは、次回は秋頃の開催が予定されています。

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