不動産の電子契約が来年から本格化

- 2022年5月以降不動産取引のデジタル化が本格化する
- 不動産テック業界においても関連サービスが増加している
- 電子契約は不動産取引以外でも注目されている
2022年5月から、不動産取引の電子契約が本格化
2021年5月に公布された 「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」で、押印を求める行政手続・民間手続について、その押印を不要とするとともに、民間手続における書面交付等について電磁的方法により行うことなどを可能とする見直しが行われています。
不動産業界でも、この法律に基づき、2022年5月までに宅地建物取引業法が改正される予定です。改正内容は宅地建物の売買契約などに関わる重要事項説明書などへの押印廃止です。
これにより、不動産取引で書面での発行が欠かせない、重要事項説明書や売買契約書の電子交付が可能になる予定です。2021年の段階では、電子契約が行えるのは賃貸など一部の契約のみですが、2022年5月以降は更に電子化の適用範囲が広がり、デジタル化が本格化すると予想されています。
不動産取引が電子化され、対面でのやりとりが不要になることで業務の効率化ができるほか、契約の状態や保存をオンライン上で行えるため紙の契約書と比べて改ざんリスクや盗難リスクが低かったり、契約についての進捗確認やメンテナンスを一元管理できたりとコンプライアンス強化が期待できます。さらに、印紙税不要というコスト削減のメリットもあります。電子契約は印紙税法上の課税物件に当てはまらず、収入印紙が不要なのです。
SUMAVEでもご紹介した「不動産業界のDX推進企業数は90%超え、予算規模は100万円以上が約5割」でも、電子契約に移行したい不動産事業者は83%という調査結果をご紹介しましたがメリットを感じる企業は多そうです。
一般のユーザーにとっては契約のたびに不動産業者と対面で合わなければならず、時間の調整なども含め煩雑だった部分がオンライン上で行えることとなり、契約までのプロセスを簡易化できるメリットがあります。
2021年、イタンジが賃貸借契約における電子契約の利用意向についてアンケートを実施したところ、約73%のユーザーが賃貸入居の契約時に「電子契約を選択したい」と答えました(出典:イタンジ株式会社プレスリリース「賃貸入居の契約時に「電子契約を選択したい」エンドユーザーは73%」)。不動産事業者、ユーザー双方がメリットを感じていることがわかります。
不動産テックサービスとしての電子契約、ベースはリーガルテック
法改正にあわせて、不動産テックサービスのリリースも増えてきています。
【出典】株式会社デジタルガレージ【URL】https://www.garage.co.jp/ja/pr/release/2021/09/20210927/
デジタルガレージは9月27日、不動産売買仲介の電子契約を一元管理するサービス「Musubell(ムスベル) for 仲介」を発表しました。すでに同社は新築分譲マンション市場を対象とした電子契約サービスを開始していますが、今回は不動産売買仲介市場に向けたサービスで、不動産売買契約の電子化、契約から取引完了までのステータスをオンラインで一元管理できます。
不動産テックの日本情報クリエイトも9月9日、電子契約サービスを11月にリリース予定との発表を行っています。同社が提供する既存の賃貸物件総合管理システム「賃貸革命」などに電子契約機能を付加していきます。
同じように既存の不動産テックサービスに電子契約が機能として付与されていくことが予想されます。
電子契約については、リーガルテックの分野でもあります。例えばムスベルも電子契約の部分は弁護士ドットコムの「クラウドサイン」を使います。リーガルテックと不動産テックの組み合わせにより、不動産の電子契約は進みそうです。
また、電子契約以前に、本人確認などを含めた認証部分については「不動産仲介業者が知っておくべき仲介向け不動産テック企業・サービス21選」でも紹介していますのであわせてご確認ください。
不動産に限らず注目の電子契約
アスクルが8月31日、職場でのITツール導入調査を実施し、発表しました。
【出典】アスクル株式会社のプレスリリース【URL】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000240.000021550.html
この中で「今度導入したいと考えているITツールやサービス」で1位となったのが「電子サイン・電子署名・電子契約ツール」でした。
矢野経済研究所によると、電子契約サービスの市場規模は事業者売上高ベースで2019年は68億円でしたが、24年には264億円に達する見通しです。
電子契約が一般的になれば、不動産の取引も電子契約を望む声が増加していくことが予想されます。電子契約ができる、できないで不動産の契約率に変化が起きる時代が近くやってくるのかもしれません。