不動産業界のDX推進企業数は90%超え、予算規模は100万円以上が約5割

- 不動産事業者を対象にDX推進状況についてのアンケートが実施された
- 従業員数が多い会社ほどDX推進をしている比率が高い
- 最大の課題は人材不足
不動産テック7社・1団体は、6月に不動産事業者に対して行ったアンケート「不動産業界におけるDX推進状況」の結果を解説するオンラインイベントを2021年9月6日に行いました。今回はそのレポートをしていきます。
解説を担当したWealthPark株式会社の山地壮太事業開発部長
アンケート先は237社で、「DX推進をしている」と回答した不動産事業者(以下「回答者」)は、218社と93%で昨対の60%から1.5倍という結果になりました。そのうち85%が「業務効率化」をDX推進の目的としていることもわかりました。
DX推進をしている割合は、従業員数が多い会社ほどDX推進をしている比率が高く、100人以上の会社に所属する78名の全回答者が「DX推進をしている」という結果となっています。一方で社員数が少なくとも、DX推進をしている率は約8割と高い状況です。
DX推進での苦労している点では、「DX推進人材が確保できない」45.7%と1位。昨年の1位は「知識・情報・ノウハウを持っていない」で、2位が「人材リソースがない」という結果だったのと比べるとDXに対する重要性は理解し、人材へ課題がシフトしてきていることが見えてきます。
この「困りごと」に対して、会社の規模とクロスで見たところ、従業員数が多い会社ほど「DX人材の不足」に直面していることも見えてきました。つまり、「DX推進をしている」会社であればあるほど「DX人材の不足」に陥る可能性があります。
予算規模の中で年間1000万円以上のDX投資企業は約20%
DX推進における年間予算の調査結果では、年間1000万円以上の本格的なDX投資を行っている企業が18%もあることがわかりました。年間50万円以上が回答者の67%と、全体を見ても一定の投資は行われていることが見えてきます。
これを従業員数から見てみると、従業員100〜500人規模の企業の4割が「年間500万円以上」投資をし、500人以上の規模の企業の6割が「年間1000万円以上」の投資をしていることもわかりました。
各サービスの導入状況は非対面接客やテレワークをサポートするためのサービスが多く、最も導入率が高いのは「Web会議室」で70%が導入済み/導入が進行中という結果に。また、「VR/オンライン内見システム」(47%)、「チャットツール」(41%)、「CRM(顧客管理)システム」(41%)などの導入率が高い状況です。これらはコロナ禍によって導入が加速したものといえそうです。
また、宅建業法の改正で2022年5月に電子契約が本格化することを見越して、「電子契約システム」については導入済み/導入が進行中は23%と少ないものの、導入を検討している企業は41%と最も高い結果になりました。
電子契約については、「移行したい」不動産事業者は83%となり、需要の大きさの高まりを山地氏は指摘。一方でシステム選定や運用に不安を感じている回答者も一定数おり、期待と不安がある状況であることを解説しました。
不動産テック市場、2025年には1.2兆円との予測も
矢野経済研究所は、不動産テックの国内市場規模が、前年度比108.6%の6110億円と推計、2025年度に20年度比で203.9%となる1兆2461億円になると予測を公表しました。今後の動きとしてより付加価値の高いサービスをワンストップで提供するため、各領域の有力プレイヤー同士の連携やM&Aが加速するとも指摘。大きな拡大が見込まれるものとして、BtoB領域では仲介・管理業務支援、価格査定系市場を挙げました。
不動産業界がDX推進に徐々にアクセルを踏む中、不動産テック市場の成長も加速も見込まれます。