【不動産業界基礎用語】“規制のサンドボックス”って?

- 規制のサンドボックスとは、事業者が既存の規制にとらわれずに事業の実証を行える制度のこと。
- 実証実験のデータがあれば、行政は規制改革を推進できる。
- 規制改革の先に新しいスタートアップの台頭やイノベーションの種がある。
人気ドラマでも使われている「サンドボックス」とは?
Netflixで人気の韓国ドラマ「スタートアップ:夢の扉(原題:StartUp)」では、韓国のシリコンバレーとして「サンドボックス」という場所が舞台になっています。サンドボックスは英語で砂場や砂箱という意味ですが、経済社会では「規制の枠組みから外れて実証実験が行える場」を意味します。
サンドボックス=砂場では子どもが小さな失敗をしても自由に遊べることから、事業者が既存の規制にとらわれずに事業の実証を行えるようにするという意味が込められているのです。
サンドボックス制度はなぜ必要なのか
これまで、企業がドローンを使った事業や自動車の自動運転など革新的な事業を行いたいと考えても、既存の規制が足かせとなって事業化を阻害することが多々ありました。そこで2018年に導入されたのが規制のサンドボックス制度です。そのコンセプトは「まずやってみる!」ということ。
「新技術等実証制度(プロジェクト型サンドボックス)について」(新技術等社会実装推進チーム (規制のサンドボックス制度 政府横断一元的窓口))より抜粋【URL】https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/regulatorysandbox.html
ひと言に規制改革といっても、官公庁としては必要なデータ等が証明されなければ、規制改革に踏み切ることができません。一方、事業者は規制のために試行錯誤ができず、そもそも改革に必要なデータを取得できないなどの問題があり、改革ができない状況にありました。そこで、この状況を打破し、双方が協力しあって必要なデータを取得するために早期の社会実証を行える遊び場=サンドボックスが必要になったのです。
サンドボックスは世界各国で行われていますが、日本における「規制のサンドボックス制度」とは
IoT、ブロックチェーン、ロボット等の新たな技術の実用化や、プラットフォーマー型ビジネス、シェアリングエコノミーなどの新たなビジネスモデルの実施が、現行規制との関係で困難である場合に、新しい技術やビジネスモデルの社会実装に向け、事業者の申請に基づき、規制官庁の認定を受けた実証を行い、実証により得られた情報やデータを用いて規制の見直しに繋げていく制度(首相官邸)
とあるように、既存の規制では実行ができないビジネスモデルに対し、承認を受けたものに対して実行を許すというものです。
日本では現在、規制改革の仕組みが複数あります。今回の記事で紹介しているプロジェクト型「規制のサンドボックス」(新技術等実証制度)もその中の一つ。これは事業の「実証」を行い、規制改革や事業化につなげたい場合に向いています。この他「グレーゾーン解消制度」では新しく開始する事業における規制の解釈・適用の有無を確認できたり、「新事業特例制度」では企業単位で規制の特例措置を設けて事業化できたりするといったものも。その他にも、経済社会の構造改革を進めるため、必要な規制改革の基本事項を調査・審議する「規制改革推進会議」や「国家戦略特区」などもあり、後者は以前「スーパーシティ」の記事でご紹介しました。これらは企業の個々の事業内容に即して規制改革を進めていくことを狙いとして創設されました。
不動産業界における「規制のサンドボックス」活用事例
gooddaysホールディングスは、「電子契約システムを用いたマンスリーマンション事業に係る定期借家契約書面の作成に関する実証」を、規制のサンドボックス制度に申請し、2020年8月6日に認定されました。
gooddaysホールディングスのWebページ【URL】https://gooddays.jp
この計画では、借地借家法で書面締結しなければいけないとされている定期建物賃貸契約を、不動産向け電子契約サービスで作成し、印刷した契約書面を交わす方式にしても貸借人の利益が損なわれることがないかを実証実験します。
すでにIT重説などで進行しているものと同じニーズですが、マンスリーマンションの契約は現在も借地借家法第38条で定められている通り、書面での契約が必要とされています。同社は書面での契約締結にあたり、押印業務や書類の回収業務などが発生し、テレワーク活用の阻害要素にもなっていると指摘。グループが運営するマンスリーマンションの契約手続きで電子契約サービスを使い、課題の解決を目指すといいます。
規制のサンドボックスで、不動産における新しい取り組みの実証データをとることができれば、IT重説のように不動産業界のルールにも変化が起きるでしょう。新しいサービスが生まれる土壌ができ、そこにまたスタートアップが参入できる余白が生まれます。不動産や金融のテクノロジー導入は遅れているといわれてきましたが、世界の情勢、そして日本政府の動きを見ても2021年、一気に加速が進みそうです。