増える外国人の賃貸需要。言葉や文化の課題を解決するサービスを紹介!

- 外国人労働者のほぼ半数が賃貸住宅に住んでいることから、外国人の受け入れは将来的な空室率を抑えるチャンスになる。
- 外国人入居者受け入れにあたっての課題を解決でき、不動産会社が外国人に部屋を貸しやすくなるようなツールやサービスが登場している。
- 今後は外国人と不動産業界の相互理解を支援するなど、今まで以上に外国人入居者の受け入れをしやすくするサービスが求められていくのではないか。
外国人に対する賃貸仲介の現状
人口減少が進む中、政府は深刻な労働力不足に対応するため、2019年4月に改正出入国管理法を施行し、即戦力となる外国人労働者に対する在留資格の規制緩和を行うなど、外国人労働者の受け入れを推進しています。
平成27年の法務省統計局が行った「国勢調査」によると外国人労働者のほぼ半数が賃貸住宅に住んでおり、同年の国土交通省が公開している「第27回国土審議会土地政策分科会企画部会配付資料」の「不動産市場の国際化に向けた環境整備(表4−2)」では過去10年間で外国人との取引が増加傾向にあることから、物件仲介の需要が高まっていることが分かります。しかし、言語や文化の違いなどから外国人入居者の受け入れに不安や抵抗を感じる不動産オーナーや仲介業者、管理会社は少なくありません。
「平成28年度法務省委託調査研究事業外国⼈住⺠調査報告書」には、過去5年の間に、日本で住む家を探した経験がある外国人2,044人のうち、「外国人であることを理由に入居を断られた」経験がある人が39.3%、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」経験がある人は41.2%であったとの結果があり、これらには、日本での滞在期間や日本語の会話能力等が影響している、としています。
こういった現状の中、積極的に外国人入居を受け入れることは、空室率の改善を見込める競争率の低い市場を狙える、とも考えられます。そこで今回は、言語や文化の違いといった不安や抵抗を解消し、円滑に外国人入居者を受け入れるために役立つサービスをご紹介します。
外国人に部屋を仲介する際の課題
こうした外国人入居者の受け入れが積極的ではないといえる現状の理由には、オーナーや管理会社の立場からみて以下のような懸念点があることが考えられます。
・文化の違いによる、大勢でのパーティや楽器演奏など、日本では騒音問題として近隣トラブルになりがちなことが起こりえる。
・食習慣の違いにより、壁紙や床などに強い匂いがついてしまい、原状回復が難しくなる。
・日本特有の賃貸借契約の商慣習(敷金や礼金、更新料、退去時の原状回復費といった費用を支払う慣習)が理解されづらくスムーズに支払ってもらえない。
・外国人入居者の多くは単身で来日しているため、家賃滞納時などに保証してくれる連帯保証人がいない。最悪の場合、滞納したまま母国へ帰ってしまい、家賃の回収が困難になるといったケースも考えられる。
生活習慣や商慣習の違い、保証人の有無など、日本人が当たり前と思っていることを外国人入居者が理解して準備、適応することが難しいのではないか。そのような懸念から、外国人入居者に賃貸物件が提供されない、という状態につながっていると考えられます。
言語や文化の壁を乗り越える外国人入居者向けサービス
このような課題の解決には、歩み寄る心をもって丁寧に文化の違いを説明、理解してもらうことが大切です。国土交通省では、不動産オーナーや仲介業者、管理会社向けに14カ国語で記載された「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」や「部屋探しのガイドブック」を作成しています。
また、全保連株式会社では外国人専用家賃保証システム「SUMAU-すまう-」を提供しており、不動産業界が外国人入居者に対応できる環境づくりが行われています。
ほかにも、以下のような外国人の入居を拡充したい不動産会社に向けたサービスや、外国人の入居希望者に向けたサービスが登場しています。
多言語コールセンターサービス「不動産多言語まるごとサービス」
ランゲージワンの「多言語コールセンターサービス『不動産多言語まるごとサポート』」では、物件紹介時や契約時、トラブル発生時や退去時の立ち会いに至るまで、不動産ビジネスに精通した通訳を提供しています。主要12カ国語に対応しており、母国語で細かなコミュニケーションをとることができるサービスとなっています。
また同サービスは、タイ語やインドネシア語、ロシア語などは平日9時〜18時の対応となりますが、英語や中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語の5カ国語に関しては365日24時間対応可能なことも魅力です。
万が一鍵や水回りのトラブルが発生した際にも、外国人入居者から直接ヒアリングし、業者に出動依頼、業者到着後の外国人入居者との通訳までトータルでサポートしてもらうことができます。加えて、契約書やルームガイドなどの翻訳、近隣住民からのクレーム対応、住居設備の多言語説明動画の作成も行っており、自社で外国人向け不動産サービスを展開するにあたっては心強いサービスといえるでしょう。
多言語コールセンターサービス「不動産多言語まるごとサポート」【出典】LanguageOne ホームページより【URL】https://www.languageone.qac.jp/real-estate/
外国人向け多言語賃貸仲介プラットフォーム「AtHearth」
「AtHearth」では外国人が入居可能な賃貸物件を多数掲載しています。物件探しから契約まで、IT重説や電子契約を活用してオンラインで全ての手続きが可能としており、申し込みから入居までを、最短3日で終えることも可能としています。また、不動産オーナーや仲介業者に代わり、英語や中国語、フランス語といった多言語を話せる宅建士などのスタッフが外国人入居希望者に対応するというサポートサービスも行なっています。
創業者である紀野代表は、複数国での留学や三菱商事在職中のフランス駐在を通じ、世界各国の住宅事情に深い理解があります。また、日本で国際シェアハウスを運営していた経験から在留外国人と仲介業者双方の課題を認識し、本サービスを展開しました。
そんな外国人入居者と不動産業界の中間に立つ同社では、代理保証や保険を提供するだけではなく、水道光熱費やインターネットの契約、住民登録や銀行口座の開設、家具購入など生活に関わるサポートも行っています。
今後増加する外国人労働者も、同サービスを利用することで来日前に住居を確保できるようになるため、外国人向け不動産サービスを展開するにあたっては見逃せないサービスの一つとなることでしょう。
AtHearth【出典】AtHearth ホームページより【URL】https://athearth.com/
外国人の受け入れは安定した賃貸経営への鍵となるか
今回取り上げたサービスでは、言語の違いにより難しかった「文化・商慣習の違いを説明し理解してもらう」という課題や、海外在住者が抱える物件の探しづらさといった課題が解決できそうです。外国人労働者の受け入れをさらにしやすくするために、外国人向けの不動産に関するサービスやツールには相互理解を支援したり、海外との生活習慣や商慣習の違いを補ったりするサービスが今後求められていくことでしょう。
人口減少が進み、空室や空き家が目立つ中、外国人労働者をいかに積極的に、また円滑に獲得できるかが安定した賃貸経営への一つの鍵となるかもしれません。