フィンテックに広がるオープンAPI。不動産テックは何を学べるのか?

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フィンテックに広がるオープンAPI。不動産テックは何を学べるのか?

はじめに

オープンAPIの活用が広がりをみせています。組織の枠を越えて技術を連携することで更なる価値を生み出し、発展を促すことができるオープンAPI。中でもその取り組みが進んでいるのが金融業界です。今回は、オープンAPIとはそもそも何か、そしてAPIの活用が先行しているフィンテックの例を概観しながら、進みつつある不動産業界でのオープンAPIの活用事例を見ていきます。

そもそもオープンAPIって何?

APIとは、アプリケーションプログラミングインターフェース(Application Programming Interface)の略であり、簡単に言うと"システムと通信する際の形式のルール"を指します。そのルールを外部に公開(オープン)にすることをオープンAPIと呼びます。

例えば、Amazon Echoに「アレクサ、今何時?」と話しかけると時間を教えてくれます。ですが、Amazon Echoに対して「OK Google、時間」という問いかけでは正しく反応してくれません。これはAmazon Echo側で「アレクサ」と呼びかけると、その言葉に続く言葉を指示として受け取るというルールが用意されているからです。

このように、「このシステムは、ここに向かって、こういう風に通信をしてくれたら、こんな情報を返します」というルールのことをAPIと言います。そのAPIが一般公開されていれば、誰しもがAPIを利用し、システムがもつ情報を手に入れることができます。これがオープンAPIの考え方です。

オープンAPIは、基本的な情報を共有することで、各社ごとでは基本的な情報を入手・保持することにリソースを割く必要がなくなり、よりそれぞれの専門領域に専念することができることが大きなメリットです。
不動産業界でいえば、「道路に設置されたセンサーのデータ」「物件情報」「土地の値段」「エアコンのスイッチのつけ方」といった情報は基本的な情報であり、特定の企業だけで独占する性質の情報ではありません。そのような情報を共通利用することで、各企業は自社の独自サービスのメリットや差別化の追求に時間を割くことができ、さまざまなサービスや商品を開発できるようになっています。

オープンAPIの活用で先行するフィンテック領域

オープンAPIの活用が進む領域としてフィンテック(ファイナンス×テクノロジー)があります。2017年5月26日に成立した「銀行法等の一部を改正する法律(以下、改正銀行法)」では、銀行にオープン・イノベーションに関する取り組みの推進を求めています。
ベンチャー企業と既存組織の融合を加速させる、2つの姿勢」では、フィンテック協会が改正銀行法に関連して、オープンAPIのありかたについての議論などにも間接的に関わっていることもご紹介しました。

これらの流れを受け、銀行業界もオープンAPIに対する取り組みを進めています。一般社団法人全国銀行協会の「オープンAPIに対する銀行界の取組み」によると、同協会は以下の4つの点についての支援を行うとしています。


①制度整備
②銀行の態勢整備
③(Fintech事業者との)連携の枠組み作り
④オープンAPIのビジネス発展

引用:一般社団法人全国銀行協会「オープンAPIに対する銀行界の取組み」より

同協会は銀行から提供される情報のオープンAPI連携によるサービス提供事例として、以下のサービスを挙げています。

一般社団法人全国銀行協会「オープンAPIに対する銀行界の取組み」よりオープンAPI連携によるサービス提供事例オープンAPI連携によるサービス提供事例【出典】一般社団法人全国銀行協会「オープンAPIに対する銀行界の取組み」より:【URL】https://www.fsa.go.jp/singi/kessai_kanmin/siryou/20190624/05.pdf

このように、先行してオープンAPIの活用が進むフィンテック領域。以下で、2つの事例をご紹介します。

マネーフォワードME(株式会社マネーフォワード)

個人向け家計簿サービスである「マネーフォワードME」は、銀行やクレジットカード、電子マネーなどの各金融サービスと連携し、ユーザーの収入や支出などを自動的に家計簿に取り込むことを実現しています。連携したデータのユーザーによる仕訳も学習し、利用するに従って自動で仕訳を行っていくようになります。
オープンAPIの取り組みが広がるにつれ、対応する金融機関も増えており、ユーザーの利便性が向上しています。

マネーフォワードMEマネーフォワードME:【URL】https://moneyforward.com/

finbee(株式会社ネストエッグ)

自動貯金アプリ「finbee」はユーザーが設定した目標のために、ユーザーが設定したルールによる自動貯金を行うアプリです。ユーザーは「来年の夏までに、海外旅行の資金として30万円貯める」、「恋人の誕生日までに10万円貯めたい」などの目的と目標金額、目標時期を設定します。
加えて、「カード決済は1,000円単位で支払うことにして、1,000円未満のお釣りを貯金」、「毎週日曜日に1,000円貯金」などといった貯金ルールを設定することで、そのルールに従って自動的に貯金が行われます。
金融機関とのオープンAPIの取り組みによって、より多様な形での自動貯金サービスが実現しています。

finbeeサイトトップページfinbee:【URL】https://finbee.jp/

このところ多様なサービスが登場しているQRコード決済などにおいても、銀行やクレジットカード会社との連携が行われており、フィンテックにおいてオープンAPIの取組が広がることにより、人々のライフスタイルに大きな変革がもたらされているのです。

不動産テック領域でも活用が始まるオープンAPI

このように、オープンAPIの取り組みが進むフィンテックですが、不動産テック領域においても徐々にオープンAPIの活用が始まっています。国も不動産領域においてのオープンAPIの活用を推進しており、国土交通省による「土地総合情報システム」でも、2016年4月から、オープンAPIの提供も開始しました。このオープンAPIは多くの民間企業で利用されており、例えば全国の不動産の価格予測サービスを提供する「GEEO」も国土交通省のオープンデータ等を活用しています。

GEEO(株式会社おたに)

「GEEO」では不動産のプロフェッショナル及び投資家向けの価格推定エンジン「GEEO Pro」、地図をクリック又はタップで指定した条件に基づく不動産の価格を算出する「GEEO Free」の他、GEEOのデータを自社のサービスで利用するための「GEEO API&Analytics」を提供しています。
中でもGEEO API&Analyticsは、GEEOのデータを他のソフトウェアで活用することを前提としてAPIの提供を行なっています。利用者は精度92%(GEEOサイトより)のエンジンによるデータを活用し、新規のソフトウェアの開発や、既存のソフトウェアとの連携利用をすることが可能です。
GEEOを利用することで、レインズ情報等における価格とGEEOの価格を比較して割安な不動産を発見したり、買付証明書や売渡証明書の作成の自動化を行ったりすることができます。

GEEO公式サイト【出典】GEEO公式サイトより:【URL】https://geeo.otani.co/

このように不動産情報についてもオープンAPIの活用が広がれば、新たな不動産テックサービスの創出につながることが期待されます。

IT技術の発展やAIの普及により、ライフスタイルや働き方が変化しています。不動産業界も世の中の変化へと対応する必要がありますが、これまでは企業ごとの取り組みが中心でした。
けれども、オープンイノベーションの重要性が認識され、様々な業界で組織の枠を越えた取り組みが進んでいる今、不動産業界においても他業界に学び、ニーズに合わせたサービスを提供していく必要があります。

フィンテック領域のように、オープンAPIの活用を不動産テック企業が率先して進めていくことは、不動産業界全体のマインドに変化をもたらし、オープンイノベーションを推進することになるかもしれません。
 

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