世界で急成長する「iBuyer」と日本の買取再販市場

2019.09.10
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世界で急成長する「iBuyer」と日本の買取再販市場

はじめに

不動産売買において、売り手としては”高く売る”と”早く売る”を叶えたいと考えるものですが、仲介業者のイニシアチブが強い不動産取引では、これまで長い期間をかけてでも”高く売る”ことが重視されてきました。
そんな中、価格査定アルゴリズムというテクノロジーを活用して”早く売る”ことができる「iBuyer」がアメリカの不動産市場で成長し始めています。例えば、iBuyerの先駆者であるOpendoorがソフトバンク・ビジョン・ファンドから約450億円の資金調達を行ったことなども、同分野が注目を集めている一例でしょう。
そこで今回は「iBuyer」と買取再販市場について、日本での可能性について考察していきましょう。

日本の中古住宅市場における買取再販事業

現在の日本における中古住宅取引の流れは、売り手が売却を決めた後、査定→販売開始(&広告)→内見→交渉→売却といった流れが主流です。この場合、売り手と不動産会社は媒介契約(仲介取引)を結び、できる限り”高く売る”ことを目指して買い手を探すため、売却に到るまで一般的に平均3ヶ月程度から半年以上かかるといわれています。

これに対して、買取再販事業の場合、買取再販業者が物件を買い取り、リフォームなどを施した上で、買取再販業者から買い手に販売されます。つまり、売り手としては最終的な買い手が見つかるのを待たずして、査定後すぐに買取再販業者に売却することで、売却完了までの期間を短縮することができます。

売り手としては、通常の仲介取引と比べ売却価格が安くなる傾向がありますが、”早く売る”という点においては、利点のある取引形態です。

買取再販市場については、以前からこの市場で存在感を示していたカチタス、大京などの他、野村不動産や三井不動産レジデンシャルなど大手デベロッパーも次々と新サービスを展開しています。

レジデンシャルメイド

三井不動産レジデンシャルは、共働き世帯の増加による立地の良い物件への都心回帰など、消費者ニーズの多様化に合わせて、首都圏にある中古マンションを買取り、リフォーム後に分譲する「リノベーションマンション事業」を立ち上げました。対象となる物件は新耐震基準適合状況や駅からの距離、専有面積などの条件について、独自のチェックシステム「TRIPLE QUALITY GATE」を活用して査定されます。

レジデンシャルメイドサイトトップページレジデンシャルメイドサイト【出典】レジデンシャルメイドサイトより【URL】https://www.31-rm.com/

プラウド上原フォレスト

野村不動産は一棟リノベーションマンション事業に参入しました。通常、共有部分のリノベーションが必要になる一棟リノベーションは、手間もコストもかかります。しかし、高級なイメージを強みとする新築分譲マンションブランド「プラウド」をもつ野村不動産は、都心の高級ヴィンテージマンションを対象とすることで、新築以上の付加価値を提供し、採算性を見込んでいると考えられます。

野村不動産ニュースリリースより「プラウド上原フォレスト」完成予想パース「プラウド上原フォレスト」完成予想パース【出典】野村不動産ニュースリリースより【URL】https://www.nomura-re.co.jp/cfiles/news/n2019052801580.pdf

これら大手デベロッパーの強みはグループやパートナー内で仕入れからリノベーション、さらには売却までトータルで提供できることにあります。その資金力により物件を一気に買取り、グループ企業やパートナー企業と効率的に連携することで、スケールメリットを活かし調達コストに還元することができるのです。現在の大手デベロッパーの買取再販市場への参入は、対象物件がまだ絞られてはいます。ですが、すでに7割を超えるデベロッパーが参入しており、今後大きく成長していく分野であるといえるでしょう

スピーディーな取引を実現するiBuyer事業の登場

このように中古住宅市場で増え始めている買取再販事業において、「価格査定アルゴリズム」を用いて査定から売却までの期間を更に短縮することを実現した「iBuyer」と呼ばれる不動産テックが登場してきています。

通常の買取再販事業の場合、人の手による査定のため、価格のバラツキや相応の査定期間が必要となります。そのため取り扱い数には自ずと限りが出てくることとなり、リフォームなどにより価値を高め、利益率をあげる必要があります。

それに対して、iBuyer事業では、価格査定アルゴリズムにより一律の基準によるスピーディーな査定、買取を可能にするため、取り扱い数を増やし、薄利多売での利益確保を実現します。

このiBuyer事業はアメリカにおいて広がりつつあり(アメリカのiBuyer事業について詳しくはこちら)、日本でもスタートアップ企業が登場しています。

すむたす買取

2018年1月に設立された株式会社すむたすによる「すむたす買取」はサイト内でマンション名や部屋番号、広さ、間取りなどの物件情報を入力するだけで、最短1時間で買取価格をメールで提示してくれます。その後、現地確認をし、買取が決定すればユーザーの希望日に売却金額が振込まれます。その間なんと最短2日間。仲介手数料も無料です。現在は東京23区内のマンションに限定されていますが、すでに累計価格査定金額(同社ニュースリリースより)は400億円を超え、今後は全国への展開や、戸建てや土地などへ領域を広げることも目指しているようです。

この「すむたす買取」は不動産オーナーとの直接契約となりますが、従来の不動産オーナーの中には、まずは身近な仲介業者に相談したいという声も多いため、仲介業者を対象に、無料で「すむたす買取エージェント」も提供されています。こちらは仲介業者が無料で利用できる中古マンションのオンライン買取査定サービスであり、不動産オーナーは従来通り仲介業者に依頼しながら、仲介業者を介して「すむたす」のメリットを享受することができます。

これらのサービス拡大に伴い、同社は2018年12月に国内外の投資家から資金調達を実施したことを発表しており、多額の資金を必要とするiBuyer事業において、同社の一層の展開が予想されます。

すむたす買取サイトトップページすむたす買取サイト【出典】すむたす買取サイトより【URL】https://sumutasu.jp/

まとめ

このように日本の中古住宅市場において、大手デベロッパーが買取再販市場に参入しはじめています。さらにiBuyer市場においても、スタートアップなど新しい企業の登場や、大手の参入の可能性も十分に考えられます。

加えて、今後テクノロジーの向上により価格査定の精度が飛躍的に高まり、スピーディな買取再販がより広く実現可能になったとき、不動産そのものの質だけではなく、不動産売買の周辺サービスも含めた展開が必要になってくるでしょう。
特に少子高齢化や地方の過疎化が進む日本では、過疎化した町の空き家をまとめて買い取り、リノベーションし、子育て支援や介護支援サービス付き中古物件として提供するなど、空き家テックリフォーム・リノベーションなどの不動産テックとの連携による課題解決型の不動産売買が行われるようになるかもしれません。

アメリカに比べ、中古住宅の取引市場規模が小さい日本ですが、中古住宅の利点が見直されてきていることからも、今後中古住宅の流通量が増える可能性は十分に考えられるでしょう。それに伴い、買取再販市場が成長し、iBuyerのニーズも増えていくと予想されます。
 

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