不動産テックはこれからどうなる? 知っておきたい「SDGs」

2019.07.09
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不動産テックはこれからどうなる? 知っておきたい「SDGs」

はじめに

「SDGs(エスディージーズ)」という言葉をご存知でしょうか? 持続可能な世界を実現するため、2015年9月に国連で採択された国際目標のことで、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。

数年前から大手企業のCSR戦略や自治体、教育現場等で頻出するキーワードの一つとなっており、不動産業界でも三井不動産グループや野村不動産グループ、三菱地所グループ等がSDGs達成に向けた取り組みを行っています。

また、2019年2月1日には不動産テック企業のジブンハウスが、自社のテクノロジーやサービスを通じてSDGsへの取り組みを行っていくことを宣言。さらに、同年5月1日にはLIFULLも同様の宣言を発表しています。こうした動きは今後、不動産業界や不動産テック業界で広がっていくものと推測されます。

業種や国の壁を越える共通言語であり、スマートハウスやスマートシティとも深いつながりを持つ「SDGs」について見ていきましょう。

「持続可能な開発目標」って、なに?

“誰一人取り残さない”持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するため、2016年~2030年までの間に全ての国が取り組むべき目標として掲げられているSDGs。

前身の「MDGs(ミレニアム開発目標、Millennium Development Goals)」が発展途上国向けの開発目標であったのに対し、SDGsは先進国や発展途上国の別なく、全ての国が一丸となって達成すべき目標として定められています。その内容は、以下に挙げる17のゴールと、各ゴールを達成するための具体的な行動指針となる169のターゲットで構成されています。

目標1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標2.飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進す

目標3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標4.すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
目標6.すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標7.すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセス
を確保する
目標8 .包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標9.強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及び
イノベーションの推進を図る
目標10.各国内及び各国間の不平等を是正する
目標11.包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
目標12.持続可能な生産消費形態を確保する
目標13.気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
目標14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標15.陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標16.持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
目標17.持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

引用:仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(外務省)より
SDGsのロゴSDGsのロゴ【出典】国際連合広報センターサイトより:【URL】https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/

例えば、前述のジブンハウスが取り組んでいる11番目の「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」というゴールには、以下のようなターゲットが設定されています(一部抜粋)。

11.2 2030 年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。

11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。

11.5 2030 年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。

11.7 2030 年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ
利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。

11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、
都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レ
ジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の
件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組 2015-2030 に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。

引用:仮訳「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(外務省)より

このように、より良い社会を実現させるための目標として定められたSDGsですが、実は日本での認知率はまだ高くありません。

電通が2019年4月22日に発表した「第2回『SDGsに関する生活者調査』」の結果をまとめたレポートを見ると、現状国内におけるSDGsの認知率は16.0%。2018年2月に実施された第1回調査時の14.8%から増加してはいるものの、同社が2018年12月に実施した「電通ジャパンブランド調査 2019」によれば、世界20カ国・地域におけるSDGsの平均認知率は60.3%であることが判明しています。認知率上位のイタリア(94%)、インド(81.3%)はもちろん、最も低いロシアの(36.3%)とも大きく水をあけられており、日本のSDGs認知率は世界でも際立って低い状況であるといえます。

外務省や国際連合広報センターは、こうした状況を打破するため、シンガーソングライターのピコ太郎さんや吉本興業、サンリオと共にコラボレーション動画を作成する等、普及活動に取り組んでいます。

一方で、先に挙げた電通の調査によると、「SDGs」という言葉を知っている・いないに関わらず、17の目標達成につながる行動をしている人は全体の60.4%にのぼりました。また言葉は知らないけれど、実質的に何らかの取り組みを行っている人(無意識実行層)は全体の20.6%となっています。

自治体や企業がSDGsに取り組むことについての期待度も高く、全体の58.3%(「そう思う」8.5%と「ややそう思う」49.8%の合計)が「社会問題や環境問題に取り組めば取り組むほど、国や企業の経済やビジネスは成長すると思う」という意見に賛同しており、国民の社会問題や環境問題への関心の高さがうかがえます。

さらに、職業別にSDGsの認知率を見ていくと、学生の認知率が第1回の13.4%から11.4ポイント向上して24.8%となっており、若い世代に急速に浸透していっていることが分かります。現状「経営者・役員」の認知率が最も高い(32.7%)SDGsですが、海外の認知率を見ても分かる通り、今後の企業活動を行う上で無視できない国際目標であることは間違いないでしょう。

不動産業界・まちづくりに関する取り組み

少しずつ国内でも存在感を増しているSDGs。不動産業界でも大手不動産会社を中心に、これに取り組む企業が増えてきています。それぞれどのような形で17のゴールに貢献しているのか、不動産業界と関係の深い「まちづくり」に関する取り組みを中心に、関連企業や自治体の事例を見ていきましょう。

三井不動産グループ

17のゴールすべてに対して、関連する事業プロジェクトや取り組みを行っています。
一部抜粋すると、例えば目標9「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」に対しては「『柏の葉』開発における公・民・学連携の街づくりを通じたイノベーションの推進」、前掲の目標11に対しては「健康を保つスマートウェルネス住宅の普及を推進」を行っています。「柏の葉」をはじめ、多くのスマートシティプロジェクトに力を入れる同グループは、「まちづくり」という側面一つとっても様々な形でSDGs達成に貢献しているといえそうです。

三井不動産グループとSDGsの関わりについてのサイト
三井不動産グループとSDGsの関わり【出典】三井不動産グループサイトより:【URL】https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/esg_csr/sdgs/index.html

野村不動産グループ

同グループが重きを置いている「安心・安全」、「環境」、「コミュニティ」、「健康・快適」の4つのテーマへの取り組みを通じて、SDGsの達成に貢献しています。
2017年度の貢献実績を一部抜粋すると、目標10「各国内及び各国間の不平等を是正する」に対して「ユニバーサルデザイン推進」という形で取り組んだ結果、分譲マンションにおけるバリアフリー・ユニバーサルデザインの採用率は100%に。また、目標17「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」に対しては「コミュニティ活性化支援」を推進。その結果、2017年度は分譲住宅における入居者交流会やビル等におけるテナント企業交流会、地域交流イベントを合計169件開催しています。

野村不動産グループのSDGsへの貢献についてのサイト
特集 野村不動産グループのSDGsへの貢献【出典】野村不動産ホールディングスサイトより:【URL】https://www.nomura-re-hd.co.jp/csr/special/

三菱地所グループ

三菱グループ全体の経営理念である「三菱三綱領(“所期奉公”、“処事光明”、“立業貿易”から成る同グループの活動指針)」に基づいて「まちづくりを通じて真に価値ある社会の実現に貢献」することを表明しています。特にSDGs目標11の達成に必要な包摂的、安全、強靭、持続可能(Inclusive、Safe、Resilient、Sustainable)という4つの要素に加え「可変性(Variability)」という要素を重視し、あらゆる価値観を持つ人々がコミュニケーションを取りやすいまちづくりを進めています。
具体的な取り組みとしては、サスティナビリティの3要素「経済」、「環境」、「社会」をテーマに業種業態の垣根を越えた交流・活動拠点である「3×3 Lab Future」(目標1、2、3、4、11、12の達成に寄与)や、女性の活躍をサポートする保育所付きワーキングスペース「コトフィス」の設置(目標1、2、3、4、11、12の達成に寄与)等によって社会と共生したまちづくりや先進的なまちづくり、環境に配慮した施策を行っています。

三菱地所グループのサスティナビリティの取り組みについてのサイト
三菱地所グループのサスティナビリティの取り組み【出典】三菱地所グループサイトより:【URL】http://www.mec.co.jp/j/csr/index.html

神奈川県

神奈川県は都道府県として唯一、SDGs達成に向けて優れた取り組みを行う自治体である「SDGs未来都市」と、その中でも特に先導的な取り組みである「自治体SDGsモデル事業」を行う都市の両方に選定されています。また、スマートシティ「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(FujisawaSST)」プロジェクトに加え、様々な企業や団体との連携による、目標解決に向けた取り組みも行っています。
2018年11月22日には東大発のベンチャー企業であるWOTAと連携し、災害用シャワーパッケージを実証導入すると共に、水処理施設へのSI導入の可能性について検討することを発表しています(目標6,9,11,13の達成に寄与)。
また、市としては同じく「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」両方に選ばれている横浜市は、2019年6月15日より東京急行電鉄、NTTドコモ、日本電信電話(NTT)と連携。各企業と協働し、「次世代郊外まちづくり」のモデル地区である「たまプラーザ駅北側地区」において、ICT・IoT技術で住民主体のまちづくりを支援する新たな取り組みとなる「データ循環型のリビングラボ」に関する共同実験を開始(目標3、8、9、11、17へ貢献)しました。

かながわのSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みについてのサイト
かながわのSDGs(持続可能な開発目標)への取り組み【出典】神奈川県サイトより:【URL】http://www.pref.kanagawa.jp/docs/bs5/sdgs/2030.html

少し前までは、自社で行っている事業を17の目標に当てはめてみせる「だけ」の企業も散見されましたが、企業活動におけるSDGsの重要性が増すにつれて、状況は少しずつ変わってきているようです。特にまちづくりに関しては、スマートシティやリビングラボといった「実験場」の創出により、協業やイノベーション創出のきっかけにもつながっています。

先に挙げた調査結果からも分かるように、まだ「SDGs」という言葉そのものの知名度は高いとは言えないものの、人々の環境や社会問題自体への関心度は高くなっています。今後は、不動産会社や不動産テック企業の中でも、SDGsへの取り組み姿勢の差が、顧客に選ばれるか否かの差になっていくのではないでしょうか。

社会課題を解決するテクノロジー

現状、SDGsへの取り組みを積極的に行っているのは大手企業や自治体が中心です。事実、2018年12月に経済産業省関東経済産業局と日本立地センターが共同で発表した「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」の結果を見ても、中小企業のSDGs認知度は15.8%に留まります。

しかし、「SDGsについての対応を検討・実施していない企業(SDGsを本調査で初めて知った企業含む)」における「SDGsの印象」については、「取り組む必要性を理解する」と「既に取り組んでいる」と回答した企業の割合(約56.1%)が、「自社には関係ない」と「優先度は下がる」と回答した企業の割合(約43.9%)を上回っています。また、「SDGsについて対応を検討・既に対応を行っている企業」の中には、既に「SDGsを新規事業の立ち上げや新商品・新サービス開発等に活用」していると答えた企業(約20%)もありました。

最近は環境省が中小企業向けに「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」を取りまとめる等、大企業以外にもSDGsを広げていこうという取り組みも行われていますが、これをビジネスチャンスと捉え、「持続可能な経営」につなげようとする企業も増えてくるのでしょう。

また、ロボットの導入による省人化等、ICT技術による生産性向上に向けた取り組みが進む建築業界でも、SDGsへの関心が向上。2019年2月には、日本建築センターが建築産業とSDGsとの関係性や取り組むべき活動リスト等を取りまとめた『建築産業にとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガイドライン-』を発行しています。

中でも建材・住宅設備業界大手のLIXILは、安価で高品質なトイレを途上国に提供する取り組みによって国内外から注目を集めています(目標1、3、5、6、9、17の達成に貢献)。主な取り組みとして、「現地に根差したソーシャルビジネス」というアプローチや、同社のトイレが1台購入される毎に簡易式トイレ1台を途上国へ寄附する「みんなにトイレプロジェクト」を開催。2018年12月21日に発表された第2回「ジャパンSDGsアワード」では、SDGs達成に資する優れた取り組みを行っている企業として、SDGs副本部長(外務大臣)賞を受賞しています。

このように不動産業界の周辺でも、SDGsの導入がトレンドになりつつあります。エネルギーを最適化するスマートシティスマートハウスの進化・普及につながるような技術やサービスはもちろん、深刻な社会問題でもある「空き家」を利活用することで地域活性化を試みることも、SDGs達成に貢献する取り組みといえるでしょう。SDGsを達成するにはどうしたら良いのか、それを考えることで新たな不動産テックサービスが生まれてくるかもしれませんね。

まとめ

SDGsは言葉の普及こそまだまだこれからですが、「”持続可能な社会”の実現に向けて企業や個人ができることを考えて実行していこう」というコンセプトは時流に合っており、多くの人々がその必要性を理解しています。

今後SDGsが人々に認知されていく中で、企業は単なる慈善活動ではなく、「持続可能な経営」に向けて今何ができるのか、より現実的に考えていく必要があるでしょう。

環境省の「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」によれば、SDGsによってもたらされる市場機会の価値は年間12兆ドル。2030年までに世界で創出される雇用は、およそ3億8,000万人にも及ぶそうです。SDGsで解決すべき課題が明文化されたことで、巨大な潜在的マーケットの存在が明らかになったのです。

中小規模の事業所が大半を占める不動産業界では、SDGsの普及はまだあまり進んでいないかもしれません。しかし、生活者との距離が近い側面を持つ業界だからこそ、「持続可能な経営」を目指す上でも、決して無視をしては通れないでしょう。

SDGsで掲げられている目標は、現状とかけ離れたものも多く、達成にはイノベーションの創出が不可欠です。特に、今はスペースシェアリングサービスの流行に見られるように、人々と「不動産」の関わり方が大きく変わりつつあります。SDGsとテクノロジーの掛け合わせによって、全く新しい不動産利用のあり方が生まれてくるかもしれません。

「社会課題の解決」というと何だか大仰なように思えますが、今後は「個」の住まいの最適化とまち「全体」の最適化は、切っても切り離せない強固な関係になっていきます。不動産テック業界が一斉にSDGsと向き合ったとき、日本だけでなく広く世界に通用するような、大きなイノベーションが起こることを期待しましょう。

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