住宅向け統合プラットフォームの登場で日本のスマートホーム化は進むか

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住宅向け統合プラットフォームの登場で日本のスマートホーム化は進むか

はじめに

かねてより、海外に比べ遅れているといわれていた日本のスマートホーム化。しかし、富士キメラ総研が2018年10月26日に発表した「スマートホーム市場総調査 2018」によれば、スマートホームの核ともいえるスマートスピーカーの国内市場は、2018年時点で2017年比2.9倍の46億円が見込まれるといいます。また、スマートホーム関連国内市場は前年比4.8%増の3兆936億円に達し、2025年には2017年比36.3%増の4兆240億円にまで拡大するとの予測も発表されています。

黎明期から普及期に入り、市場全体が活気付く日本のスマートホーム市場。一過性のブームに終わらず、このまま日本でも住まいのスマート化が進んでいくのでしょうか? 市場に起こっている変化を見ていきましょう。

カオスマップで急激な伸びを見せたIoT分野

拡大する国内スマートホーム市場。不動産テック協会が2018年11月28日に発表した「不動産テック カオスマップ」第4版の「IoT」カテゴリーを見ても、第3版に比べてサービス数が16件増加しています。スマートホーム関連のデバイスやサービスが大幅に追加されたことにより、207%の成長率を見せたのです。

不動産テックカオスマップ

【出典】一般社団法人不動産テック協会HP:https://retechjapan.org/retech-map/

冒頭で取り上げた富士キメラ総研の調査結果でも「Philips Hue」をはじめとするスマートホーム対応の照明の国内市場は、2017年比171.4%の60億円に達すると予測されています。

さらに、調査会社IDC Japanが2018年9月12日に発表した国内IoT市場におけるテクノロジー別の支出額予測によると、国内IoT市場の市場規模は、2017年の支出額が5兆8,160億円。2022年までに年間平均成長率15.0%で成長し、2022年の支出額は11兆7,010億円になる見込みだといいます。同調査ではIoT市場を「ハードウェア」「コネクティビティ」「ソフトウェア」「サービス」という4つの技術グループに分解して予測を行なっていますが、調査の結果「ソフトウェア」と「サービス」に対する支出割合は継続的に増加していき、2022年に両者の合計は61.1%に達すると予想されています。

中でも「ソフトウェア」は4グループの中でも最も早く支出額が増加すると予測されており、その一因として、個人消費者のスマートホーム(ホームオートメーションやスマート家電)を実現するアプリケーションへの需要が高まる見込みであることを挙げています。

アプリケーションへの需要が高まる背景の1つとして、日本のスマートホームが置かれている現状が、挙げられます。過去にこちらの記事でも触れていますが、国内におけるスマートホーム普及を阻んでいた壁の一つに、IoT機器規格の乱立があります。各メーカーから異なる規格のIoT機器が次々に発売されてしまったために、スマートホームのメリットであるはずの相互接続性の低下を招いてしまったのですね。

最近ではこの壁を打破するために、スマートホームのためのIoT統合プラットフォームが登場しています。これにより、自社だけでなく他社も含めたデバイスやサービスを横断した連携が可能となり、今後さらにスマートホームや関連するIoTデバイスの普及が加速していくと考えられます。

導入しやすく工夫された統合プラットフォーム

デバイス間連携の壁を乗り越える「統合プラットフォーム」。どういったものがあるのか、具体例を見ていきましょう。

HomeX(パナソニック株式会社)

2018年10月30日に本格始動が発表された「くらしの統合プラットフォーム」。2018年11月3日に発売されたパナソニック ホームズのIoT住宅「カサート アーバン」への導入も発表されています。

家電や住宅設備の機能を統合し、壁に設置された「HomeX Display」と呼ばれるタッチパネル型のデバイスでコントロールすることができます。エアコンや照明、HEMSに電気錠など、家中のあらゆる機能をHomeX Displayが設置された場所から設定・確認することが可能。

さらに対応アプリケーションにより、端末が設置された部屋と部屋で「宅内通話」をしたり、ドアホンが設置されていない部屋からもドアホンに応答できたりする機能も。また、その日の天気情報に基づいてベストな洗濯タイミングを教えてくれたり、災害警報と連動し、万一に備えてシャッターを閉めて蓄電池への充電を始めたりなど、使用ログや接続機器、クラウド機能の組み合わせにより暮らしを総合的にサポートします。

また、「オープンプラットフォーム」をうたうHomeXは、パナソニック製の機器やアプリだけでなく、他社製品との連携も積極的に行っていく姿勢を示しています。2018年12月6日にはクックパッドが展開するスマートキッチンサービス「OiCy」との連携が発表されていましたが、2019年2月4日にはスタートアップ企業を対象としたパートナープログラム「HomeX Cross-Value Studio」の開始を発表し、オープンプラットフォーム戦略の強化を図っています。

活動プログラム「HomeX Cross-Value Studio」への賛同企業一覧

活動プログラム「HomeX Cross-Value Studio」への賛同企業一覧 【出典】プレスリリースより

v-ex(べクス)(SOUSEI株式会社)

2018年7月31日に発売開始となった、住宅ビルダーのSOUSEIが手掛ける「住宅用OSデバイス」。様々なアプリケーションのプラットフォームを構築できるOS機能を備えた箱型の機器で、テレビと接続させて使います。スマートスピーカー「Amazon Echo」、もしくは専用のスマートフォンアプリを使った家電コントロール機能のほか、住宅・住所にひもづくサービスを自宅内で決済する機能や、センシング技術を活用した家の状態管理機能などを搭載。本体を設置した後も様々なアプリケーションのインストールや、機器との連携が可能です。

販売は一般消費者向けではなく、住宅メーカーやマンションデベロッパーをはじめとするBtoB向けのみに限定。配送・設置・アフターサポートなど全てを同社が引き受けることで導入時のハードルを下げ、ITが標準搭載された家の普及を目指しています。

また、2018年4月19日には日本リビング保証との業務提携も発表されており、そこではv-exの長期保証やアフターサービスの提供だけでなく、住宅に関する各種保証内容や保険内容、点検などの情報や、契約書、図面といった住宅情報を、SOUSEIが提供するマイホームアプリ「knot」により一元管理できるサービスの共同開発を行なうと告知されました。

こうした住宅に関する機能を一括して管理・制御できるプラットフォームが普及すれば、スマート化は一気に進みそうですね。スマート家電を導入する意義も分かりやすくなるでしょう。

HOME OS 「v-ex」(ベックス)

【出展】プレスリリースより

スマートスピーカーと住宅設備の足並みが揃うかがキモ

スマートスピーカーの登場は、日本人にとってのスマートホームをぐっと身近なものにしました。スマートスピーカーといえば「声で家電をコントロールできる物」、というイメージを抱いている方も少なくないのではないでしょうか。事実、それはスマートスピーカーが持つ機能の中でも非常に重要なものです。

スマートスピーカーの市場が拡大していることについては冒頭でも触れましたが、ジャストシステムが2019年1月23日に発表した「人工知能(AI)&ロボット月次定点調査 2018年総集編」によれば、今や日本人の10人に1人がスマートスピーカーを所有しています。2017年11月度調査での所有率は4.5%、2018年12月度調査では9.8%ですから倍増ですね。認知率についても、2017年6月度時点では43.5%だったのが、2018年12月には82.1%にまで高まっています。

スマートスピーカー

一方で、制御対象となる住宅設備はまだまだスマートスピーカーに未対応な物も多く、その場合はデバイス間連携を仲介するためのハブという端末を別途用意しなくてはなりません。これでは、導入のハードルが高いと感じてしまう人も多いでしょう。

こうした問題も、前項で紹介したような統合プラットフォームの登場によって解決されていくはずです。もちろん、スマートスピーカーへの対応家電も増えていくでしょうが、それ以上に家全体の機能をとりまとめてくれるプラットフォームが整い、各家電やセンサー、クラウドとの連携がしっかりと構築されていけば、本格的にスマートホームの普及が進んでいくのではないでしょうか。その際、スマートスピーカーはハブというよりも音声入力装置として、連携に組み込まれていくのかもしれませんね。

まとめ

スマートホームの相互接続性によるメリットは、照明やスマートロックなど、何か一つの機能を個別にスマート化していくよりも、家にまつわる機能全てを一括で管理できてこそ、感じられるものです。今後建てられる物件は、こうしたプラットフォームがあらかじめ組み込まれた状態で設計されるようになっていくのでしょう。

スマートホームの普及の一端を担うスマートスピーカーですが、実は音声アシスタント機能自体はこの先、他の家電製品(例えばテレビはもちろん、調理家電や季節家電など)にも標準搭載されるようになっていくといわれています。冒頭で触れた富士キメラ総研の調査結果でも、音声アシスタント機能が家電に広く普及した後は、スマートスピーカー市場の伸長率も徐々に鈍化していくと予想されています。

スマートスピーカーの普及は、本格的にスマートホームが普及するための第一歩。対応設備が増えていけば、さらに普及していくでしょう。そうなれば、多くの人にとっていまひとつ分かりづらかったスマートホームのメリットも実感として広がっていくはずです。その間に統合プラットフォームの整備が進んでいけば、より包括的に住宅をスマート化できるシステムを取り入れたいと思う人は多いのではないでしょうか。

日本のスマートホーム化は、統合プラットフォームシステムの登場とスマートスピーカーの普及拡大によって、次の段階に入ったといえそうですね。

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