レインズとMLSから考える 〜物件情報の歴史と課題〜

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レインズとMLSから考える 〜物件情報の歴史と課題〜

はじめに

個人で得られる物件情報は日本とアメリカでどのように異なるのでしょうか。過去の記事「アメリカの不動産サイトTruliaがスゴイ…不動産マーケットの情報の透明性を考える」では不動産情報サービス「Trulia」を例に、得られる情報の量や質の違いについてまとめました。

記事内でも紹介しましたが、日本には「レインズ(REINS)」という不動産業者間物件情報交換ネットワークシステムが存在します。このレインズが保有する物件情報が、SUUMOやHOME’Sなど不動産ポータルサイトの情報源となっています。

しかし、レインズに含まれる情報は、住所や価格帯、間取りなど、不動産広告の物件概要に掲載されている程度のものとなっています。そのため、不動産ポータルサイトに掲載されている物件情報は限られてしまいます。さらに、実際に複数店舗に足を運んでも、同じような物件の情報を見かけ、担当者から同じような説明を受ける機会は数多くあります。

一方、アメリカでは「MLS(エムエルエス)」というオープン化された不動産データベースが存在します。不動産業者でなくてもデータベースを見ることができ、情報量の多さやリアルタイム性はレインズとは比べ物になりません。MLSにより、多くの切り口で物件の最新情報を収集し、物件を検索することが可能なのです。

そこで今回は、現在のレインズに至った経緯やMLSとの比較、抱えている課題や今後について考えていきたいと思います。

日本におけるレインズとは

冒頭で述べたレインズとは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営している不動産情報システムのことです。「Real Estate Information Network System」の頭文字を取って「レインズ(REINS)」と呼ばれています。

少し古いデータですが、2014年にHOME'S PRESSで調査された「意外と知られていない不動産トレンド用語ランキング」で、レインズは最も知られていないワード一位となり、76.3%の人々が知らない用語ということがわかりました。不動産業界で働いている方々からすると知っていて当然の用語かもしれませんが、住まいを探しているほとんどの方は馴染みのない言葉のようですね。

※参考:意外と知られていない不動産トレンド用語ランキング
https://www.homes.co.jp/cont/press/report/report_00049/

レインズの歴史

レインズは1990年、前身の財団法人首都圏不動産流通機構として設立され、1997年に事業圏域を東日本に拡大して東日本不動産流通機構に組織名称を変更、2012年4月に「公益財団法人」の認定を受けました。
2016年には東日本全域で288万件の物件情報が新規に登録され、物件情報検索などを含めた総アクセス件数は4億5,652万件に達しています。

※参考:東日本不動産流通機構概要
http://www.reins.or.jp/info/gaiyo.html

簡単にまとめると、不動産業者間で物件情報を交換し、契約相手をスムーズに見つけることができるシステムです。物件情報を1ヶ所のサイトに集約し、すべての不動産業者がレインズを見ることで、「こんな不動産を買いたい」というお客様を抱える不動産業者とマッチングすることが可能になります。

イメージとしてはSUUMOやHOME’Sのような不動産情報ポータルサイトが近く、住所や駅、価格帯、面積、間取、階数、接道方向、駐車場の有無等の希望条件を入力し、条件に合致した物件を探すことが可能です。しかし、レインズを閲覧することができるのは宅地建物取引業者のみです。

レインズが抱える課題

不動産業者間での流通の活性化に活用されるレインズですが、以下のような課題があります。

  • 登録情報が不足している点
    レインズには500もの項目を登録しなければならないのですが、必須項目は価格、専有面積、住所、間取り、取引形態の5項目のみです。増改築の履歴などは重要な情報にも関わらず登録率は低く、リフォームの値段を左右するのに、買い主はその情報がわからないというデメリットがあります。
     
  • 情報が不透明だと見られている点
    「買いたい」と思っている人が見られないのは「売りたい」と思っている人もその機会を逸することになり、不適切と考えられています。また、不動産業者によっては、より多くの利益を得るために不当に物件を囲い込んでいる場合もありますが、その状態が野放しにされています。これによって不動産業界全体が「不透明だ」と揶揄されることになってしまっています。


どちらも共通背景に、不動産業者以外の一般の人間がレインズを見られないことがあります。レインズの中身がわからないことによって課題が生まれていると考えられます。しかし、不動産業者は買い手と売り手から手数料を受け取るビジネスです。レインズが一般公開されれば、買い手からは手数料を取れなくなるというのが大きなの理由です。

他にも、SUUMOやHOME’Sなどの不動産ポータルサイトの存在もレインズが一般公開されない要因です。不動産ポータルサイトは物件掲載や問い合わせによって利益を得るビジネスです。レインズが一般公開されては、ポータルサイトの存在意義はなくなってしまいます。

このような課題解決に向けてレインズの機能アップデートも進んでいます。2016年1月には物件の取引状況(ステータス)管理が導入され、売り主は自分の物件がどんな販売状況なのかを確認する手段は整備されました。


アメリカにおけるMLSとは

アメリカでは「MLS(エムエルエス)」と呼ばれるサービスに物件情報が集約されています。MLS とは「Multiple Listing Service」の略称 で、地域の不動産業者が会員となり、物件情報システムによる地域の不動産情報共有を中心としたさまざまなサービスを提供する会員制組織のことです。

2016 年時点で、米国全土に約770の MLS組織が存在すると言われており、小規模なものでは数百人規模(町単位)から大規模なものでは数万人単位の MLS が会員にサービスを提供しています。

物件情報は、売主から依頼を受けた不動産業者がMLSに情報を随時登録しており、各不動産業者はMLSを見て、どのような物件が売りに出ているということを知ることができます。
MLSは、対象地域の不動産情報がすべて集約されるデータベースですが、閲覧するには月額30ドルから60ドルといった会費を納めて加盟する必要があります。逆に、MLSに加入しないと物件情報が入手できないので、物件の取引に参加できません。

MLSで確認できる物件情報は、間取りなどの基本情報に加え、公図、登記履歴、税金履歴などが確認できます。さらに、公的サイトなどからアグリゲーションされた洪水マップ、デモグラフィー、学校区などの情報も確認できます。近隣の物件情報、関連する国勢調査データもMLSで見ることが可能です。

一般消費者は、不動産エージェント経由ですが、物件情報と同じくらい重視する周辺エリアの情報をまとめて得ることが可能なので、不動産購入を検討している消費者にとって、MLSの有用性は極めて高いです。


MLSで抱えていた課題

しかし、米国でもデータソースやデータフォーマットはバラバラで、情報を集約していくことは非常に困難だったそうです。たとえば、裁判所に関してだけでも125種類もの記録があり、データの量と種類が膨大で、重複しているものも多かったそうです。

2016年9月に開催された「テクノロジが創世する不動産産業の新潮流 ~Real Estate Tech 2016 Summer~」で、行われたパネルディスカッション中で、「どうしてこれほどのデータベースを作ることができたのか」という質問に対し、Zillow Group産業関係担当ディレクターのBrian de Schepper氏は「時間をかけて地道に構築する」と答えた。アメリカでも過去に乗り越えてきた課題でありその経験から、難しいが日本でも必ず実現できるだろう。と応援のメッセージを送っています。

他にも、登壇者たちは口を揃えて「透明性」を強調しました。データを共有し、透明性の高い市場を確立し、これに従った商慣行を作り上げることが重要になってきます。

※参考:米国の不動産情報システム「MLS」から学ぶ--国内業界に必要なのは透明性
https://japan.cnet.com/article/35090231/

※参考:米国不動産業における MLS と不動産テックの最新動向
http://www.lij.jp/html/jli/jli_2017/2017summer_p073.pdf

 

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