増加する不動産クラウドファンディングとは? 米国の先行事例から見るトレンド
- 不動産クラウドファンディングはインターネットを利用して多数の投資家から資金を集め、不動産投資プロジェクトに資金調達する手法。
- メリットには少額投資の可能性、分散投資の容易さ、専門知識不要が含まれる。デメリットには流動性の低さ、リスク管理の難しさ、情報の非対称性がある。
- 投資対象は区分マンション、ホテル、保育園など多岐にわたり、サービスによって異なる。
- 米国ではFundriseやCrowdStreetなどのプラットフォームが人気で、サービスの方向性によって大きく二極化している。日本もこのトレンドに従う可能性があり、今後のサービスの淘汰や新たなサービスの登場が予想される。
2024年2月22日、日経平均株価が1989年末の高値を超えました。新NISAもはじまり、日本の投資熱は高まってきています。そんな中、昨年から急激に増加しているのが不動産(投資)クラウドファンディングサービスです。
不動産クラウドファンディングは、インターネットを利用して多数の投資家から資金を集め、不動産投資に関わるプロジェクトを資金調達する手法です。日本でも、近年この手法が注目されており、多様なサービスが展開されています。昨年の記事「不動産テック カオスマップ最新版、新たに加わった「生成AI」のインパクト(https://www.sumave.com/20231023_23421/)でも不動産クラウドファンディングが活況であることを指摘しました。不動産カオスマップでは69社が記載されています。
不動産クラウドファンディングカオスマップ【出典】https://retechjapan.org/retech-map/
この記事では、不動産クラウドファンディングの基本的な仕組み、メリット・デメリットなどについて解説します。
不動産クラウドファンディングの基本
不動産クラウドファンディングは、不動産プロジェクトに少額から投資ができることが最大の特徴です。従来の不動産投資と異なり、大きな初期投資を必要とせず、個人投資家も気軽に不動産投資に参加できるようになりました。
・メリット
- 少額投資が可能:多くのサービスで数万円から投資が可能です。
- 分散投資を容易に:複数のプロジェクトに少額ずつ投資することで、リスク分散が行えます。
- 専門知識が不要:プロジェクト選定や管理はプラットフォームが行うため、不動産投資の専門知識がなくても参加できます。
・デメリット
- 流動性の低さ:不動産プロジェクトへの投資は長期間結びつくため、容易に現金化することが難しいです。
- リスク管理:不動産市場の変動やプロジェクトの失敗リスクがあります。
- 情報の非対称性:プラットフォーム提供者が選定したプロジェクト情報に依存するため、投資家自身でのリスク評価が難しい場合があります。
不動産クラウドファンディングの投資対象
不動産クラウドファンディングサービスの投資対象になる商品は運営会社によって異なります。区分マンションや1棟マンションなどを中心に、ホテルや保育園、学校、商業施設などさまざまです。
これらの商品では、例えば賃貸物件・ホテルなどへの投資を通じて賃料・宿泊料収入を得たり、不動産の価値向上を目指し、将来的に売却して得られる利益を目指したり、新規開発プロジェクトへの投資を行い、開発成功時の利益を目指したりします。
現在、不動産クラウドファンディングで累計調達額1位をうたっているのがLAETOLI株式会社運営の「COZUCHI」です。ミドルリスク・ミドルリターンを目指す「短期運用型」とローリスク・ローリターンを目指す「中長期運用型」の二つのサービスを提供しています。
COZUCHIのWebサイト。不動産クラウドファンディングは多数あるので自分でしっかり選ぼう【出典】https://cozuchi.com/ja/
短期運用型は匿名組合型の不動産クラウドファンディングで、中長期運用型は任意組合型の不動産クラウドファンディングです。
匿名組合型では、投資家と匿名組合契約を結んだ運営会社が不動産の運用を行います。投資家は物件の運用には関与しません。
一方、任意組合型は複数の投資家が任意組合契約を結んで出資を行い、不動産を共同所有します。投資家の中には不動産クラウドファンディング事業者も含まれ、不動産を運用し、収益を組合員に分配します。任意組合型では、投資家は不動産の所有者となります。
不動産クラウドファンディングは、多くのメリットを持ちながらも、投資にはリスクが伴います。サービス選択時には、自身の投資スタイルやリスク許容度を考慮し、プロジェクトの詳細情報をしっかりと確認することが重要です。各サービスの特性を理解し、賢明な投資判断を行いましょう。
米国の不動産クラウドファンディングは二極化傾向
現在不動産クラウドファンディングのサービスは無数にありますが、先行する欧米のサービスと比較することで今後のトレンドが見えてくるかもしれません。米国で人気の不動産クラウドファンディングは、FundriseとCrowdStreetです。どちらも30万人以上の投資家が参加する人気プラットフォームですが、サービスの方向性が両極です。
Fundriseは初心者向けのプラットフォームで最低投資額は10ドルから。手数料も低く、初心者に適しています。一方のCrowdStreetは経験豊富な不動産投資家向けといえるでしょう。最低投資額は2万5000ドルからとなっており、プロ向けです。
現在、日本の不動産クラウドファンディングは比較的Fundriseライクなサービスが増加傾向にありますが、いずれサービス過多による淘汰(とうた)がはじまるでしょう。その間にCrowdStreetのようなサービスが登場してくるかもしれません。