業者も入居者も悩む賃貸の退去時トラブル、どう対応すべき?最新のサービス「オンライン立ち会い」とは

2024.01.04
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業者も入居者も悩む賃貸の退去時トラブル、どう対応すべき?最新のサービス「オンライン立ち会い」とは

賃貸住宅の退去時のトラブルは、入居者・賃貸業者ともに悩みの種

独立行政法人国民生活センターのホームページによると、借主が賃貸住宅を退去する際に、ハウスクリーニングやクロス張り替えなどの原状回復費用として敷金を上回る金額を請求されたもしくは敷金が返ってこないという相談が多数存在します。

賃貸住宅に関する相談は毎年3万件以上ですが(2021 年度は 35,800 件)、原状回復に関する相談件数は毎年1万 3,000~4,000 件程度に上り賃貸住宅の相談のうち約4割を占めている
【画像出典】独立行政法人国民生活センター「住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!―賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意―」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20230201_2.pdf

賃貸住宅に関する相談は毎年3万件以上ですが(2021 年度は 35,800 件)、原状回復に関する相談件数は毎年1万 3,000~4,000 件程度に上り賃貸住宅の相談のうち約4割を占めています。

一方で賃貸管理業者に対するアンケート調査で「受託管理している賃貸住宅で発生しているトラブルで対応が困難なもの」尋ねたところ「退去時の原状回復の箇所や費用負担に係る家主・借主との協議」が41.9%という結果でした。

賃貸管理業者に対するアンケート調査で「受託管理している賃貸住宅で発生しているトラブルで対応が困難なもの」尋ねたところ「退去時の原状回復の箇所や費用負担に係る家主・借主との協議」が41.9%という結果となった。
【画像出典】国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(2019年)」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001320853.pdf

入居者にとっても賃貸管理業者にとっても退去時の原状回復は線引きが難しく、悩みの種となっている方が多い状況といえるでしょう。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると原状回復は以下のように定義されています。

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること

例えば畳の変色やフローリングの色落ちについては、「日照は通常の生活で避けられないものであり、また、構造上の欠陥は、賃借人には責任はないと考えられる(賃借人が通知義務を怠った場合を除く)」と記載されています。

一方で借主の不注意で雨・雪が吹きこんだことにより、畳やフローリングが色落ちした場合には借主の善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)違反と考えられる事例が多いです。

管理会社は、入居者の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損については原状回復費用を請求できます。

退去費用を追加で請求しても大丈夫なのか

退去時には入居者と管理会社(もしくは代理の業者)双方が立ち会い、部屋内の損傷や汚れなど変化について確認します。
退去費用は以下のようなケースでは追加請求することもあります。

  • 入居者が立ち会い時に傷や汚れを隠していた
  • 傷やへこみなどを自分で補修した
  • 後で調査したところ、立ち会い時に目視で確認した以上の傷や汚れだった
  • その他借主の故意・過失、善管注意義務違反によるもの
  • 通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損

退去時の立ち会いでよくあるトラブルと管理会社の対処法

  • 通常の損耗や劣化か、入居者の善管注意義務違反か
  • 修繕特約で借主が原状回復費用を支払うべきか
  • 退去時に費用を請求され、後から追加費用を請求された

1.通常の損耗・劣化か、入居者の善管注意義務違反か

原状回復のトラブルで最も多い事例は、入居者が「通常の損傷や劣化によるもの」と主張し管理会社は「入居者の過失・善管注意義務違反」と主張するケースではないでしょうか。


【画像出典】国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」よりスクリーンキャプチャにて作成
【URL】https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf

上の図でいえば、緑の部分と青の部分で入居者(緑)と管理会社(青)の意見が合わない状態です。

特に賃貸借契約が長期間にわたった場合、入居時から退去時に相当な時間が経過しているため問題となっている損傷などが通常損耗なのか借主の善管注意義務違反にあたるのか、客観的な判断が難しい事例が多いでしょう。

国土交通省のガイドラインによると、過去に訴訟に発展した事例では借主が「私が壊した」などと認めたもの以外は、通常の使用によるものとするのが大半と記載されています。一方で、6つの事例では善管注意義務違反などにより借主の費用負担が認められました 。

上記のようなトラブルを防ぐためには、入居時に双方立ち会いのもとでチェックリストを作成する、借主(賃借人)が修繕義務を負う旨の特約を付けるといった方法があります。

ただし特約を付けたからといって必ずしも全ての修繕を借主が負担するわけではありません。

2.修繕特約で借主が原状回復費用を支払うべきか

一定の範囲で借主が小規模な修繕を負担する特約を付けている場合に「特約があるのだから原状回復費用を支払ってほしい」と告げても、入居者が応じないというトラブルもあります。

一定範囲の小修繕を賃借人負担とする修繕特約については、貸主(賃貸人)が「民法に定める修繕義務を負わない」というものであり、過去に「当初と同一状態で維持すべき義務があるという趣旨ではない」旨の判決が出ています。

原状回復特約については、過去の判例で「通常の使用による損耗、汚損はその家賃によってカバーされるべき」といった特約の成立そのものが認められない事案が多いです。

ただし、賃貸借契約書に記載されていた畳表の取替え費用のみが修繕費用として認められた事例、通常損耗を含めた原状回復義務の特約が有効とされ借主が畳表取替え、襖・クロス張替え、ハウスクリーニングを負担することになった事例も存在します。

賃貸契約書に借主が負担する部分を具体的に記載する、口頭で確認し借主の意思を確認し「特約に同意した」旨の文章を書き印鑑を押してもらうといった方法があります。

ただし、上記の方法で必ず特約が認められるとは限りませんので入居時にチェックリストを作成しておくことをおすすめします。

3.退去時に費用を請求され、後から追加費用を請求された

「退去時に確認し費用を支払ったはずなのに、後から追加費用を請求された」と入居者が不満を訴えるケースも存在します。

上記のように「入居者が立ち会い時に傷や汚れを隠していた」「後に調査したところ、立ち会い時に目視で確認した以上の傷や汚れだった」といったケースでは、追加費用を請求することもあるでしょう。

入居者が納得しない場合には丁寧に追加費用の詳細を説明し、場合によっては内訳書を送るなどまずは理解を求めることが重要です。

トラブルが回避できる?オンライン退去立ち会いサービスとは

オンラインで退去の立ち会いができるサービスを2つ紹介していきます。オンライン立ち会いサービスは、該当箇所を写真で確認してもらえる、保証会社の代位弁済が受けられるなどのサポートサービスがありトラブル回避に役立つ可能性があります。

  • BPM株式会社「Qosmos(コスモス)」のオンライン立ち会い機能
  • REMODELA株式会社「リモデラ原状回復」

1.BPM株式会社「Qosmos(コスモス)」のオンライン退去立ち会い機能

BPM株式会社は2021年4月にクラウドサービス「Qosmos(コスモス)」に管理会社向けのサービス「オンライン立ち会い」機能をリリースしました。

同サービスでは、部屋内の写真や修繕費用を入居者とオンライン上で共有し退去の立ち会いを実施します。

訪問する必要がないためスケジュール調整は不要、入居者はスマートフォンで手軽に確認できるなどのメリットがあります。

「オンラインだけならトラブルが起こりやすくなるのでは」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、コスモスは写真とコメントをセットで報告できるという特徴があります。「クロスの補修は○円」「トイレの汚れは×円」など細かい報告も可能です。

入居者は負担箇所の写真と費用がスマートフォンで確認できますので、スムーズな交渉が期待できます。

2.REMODELA株式会社「リモデラ原状回復」

REMODELA株式会社は2023年6月に原状回復工事のクラウドサービス「リモデラ原状回復」にオンライン退去立ち会い機能を追加しました。

退去立ち会いをオンラインで行い退去立ち会い合意書を締結、見積書を確認してもらい請求金額を確定する、明細書を作成という3つのステップで退去の立ち会いが完了です。
オンライン立ち会いで確認に漏れが生じた際にも、後日現地確認も行いますので確認漏れによる自社負担の軽減が期待できます。
保証会社の代位弁済を受けられる、借主が合意をしない場合には弁護士から内容証明を郵送できるというサポートサービスもあります。

まとめ

賃貸の退去時によくあるトラブルの対処法や、オンライン立ち会いサービスなどを解説してきました。オンライン立ち会いサービスは、業務の効率化や従業員の負担軽減だけではなくトラブル回避に役立つ可能性があります。

この記事で賃貸住宅の退去時のトラブルと対処法、オンライン立ち会いサービスについて知り今後の参考にしていきましょう。

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。CFP(R)相続・事業承継科目合格。全科目合格に向けて勉強中。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
X:https://twitter.com/writertanaka19

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