ドーナツ化現象の問題点と対策とは?逆ドーナツ化現象・スプロール現象・・・スマートシティがまちを救う?

2023.07.20
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ドーナツ化現象の問題点と対策とは?逆ドーナツ化現象・スプロール現象・・・スマートシティがまちを救う?

SUMAVEでは以前コロナ禍におけるドーナツ化現象をお伝えしてきました。2023年6月現在は、郊外に移住した人々が再び東京に転居し転入超過となる「逆ドーナツ化現象」が進んでいます。

ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象は都市や不動産にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
本記事では、ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象とは何か、問題点や対策、不動産業界との関係を解説していきます。

ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象とは

ドーナツ化現象とは都市の中心部の人口が減少し、中心部の周辺の地域の人口が増加する現象です。
人口の分布を地図上に表すと「ドーナツ」のように見えることから名付けられました。

ドーナツ化現象とは都市の中心部の人口が減少し、中心部の周辺の地域の人口が増加する現象で、 人口の分布を地図上に表すと「ドーナツ」のように見えることから名付けられた。

【画像出典】国土交通省「運輸白書 大都市交通対策」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa52/ind020102/003.html

例えば埼玉県秩父市では高度経済成長期に急速に都市化が進行した後、郊外に人口が流出しドーナツ化現象が起きました。

秩父駅前といった中心部では人口が減少し青色が目立ちますが、周辺の地域は黄色や赤となっており人口が増加していることが分かる【画像出典】秩父市役所「都市計画マスタープラン(案)中央地域」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.city.chichibu.lg.jp/secure/22925/

秩父駅前といった中心部では人口が減少し青色が目立ちますが、周辺の地域は黄色や赤となっており人口が増加していることが分かります。

日本の高度経済成長期1954年~1970年辺りは、都市部に人口が集中しその後はドーナツ化現象が起こる地域が多く見られました。

スプロール現象・インナーシティ問題とは

ドーナツ化現象とともに問題視される現象として「スプロール現象」があります。
スプロール現象とは、都市が急速に発展したことで市街地が無秩序・無計画に広がっていくことです。
スプロール現象が起こると上下水道・道路などインフラの不備が生じてしまうため、都市計画法に基づく開発許可制度が設けられました。
加えてドーナツ化現象により、都心の住宅環境が悪化・夜間人口が減少し都市の機能が低下する「インナーシティ問題」が生じることがあります。

コロナ禍では都心から郊外に移住するドーナツ化現象が起きた後、2023年6月現在は再び都心に移動する「逆ドーナツ化現象」が進行しています。

ドーナツ化現象が起きる背景とコロナ禍

一般的にドーナツ化現象が起こる背景には、都市部への人口集中により①地価の上昇、②治安の悪化、③スプロール現象、④通勤電車の混雑・道路の渋滞などの悪影響で郊外への移住が進むという実態があります。

ただし、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大を機に人々の住環境や住まいに関する考えが大きく変化しました。

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大により、テレワークの定着などにより都心から郊外に移住する人が増えました。

東京都特別区部は、外国⼈を含む集計を開始した 2014 年以降初めて転出が転入を上回る転出超過となった。
【画像出典】総務省統計局「統計 Today No.181 東京都特別区部の転出超過の状況」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.stat.go.jp/info/today/pdf/181.pdf

東京都特別区部は、外国⼈を含む集計を開始した 2014 年以降初めて転出が転入を上回る転出超過となりました。                                                                                                                                                   

しかし、2年後の2022年には再び都市部に人口が流入し東京圏は9万9519人の転入超過となりました。

東京都特別区部は全ての市町村の中で最も転入超過数が多い2万1420人で、次いで埼玉県さいたま市の9282人。都心部に移動した人々が再び郊外に移動をする「逆ドーナツ化現象(都心回帰)」が発生している
【画像出典】総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2022年(令和4年)結果」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.stat.go.jp/data/idou/2022np/jissu/youyaku/index.html

東京都特別区部は全ての市町村の中で最も転入超過数が多い2万1420人で、次いで埼玉県さいたま市の9282人です。
都心部に移動した人々が再び郊外に移動をする「逆ドーナツ化現象(都心回帰)」が起こっています。

ただし、新型コロナウイルス感染症が拡大する2020年より前から東京都への転入超過は続いており「東京一極集中」は進んでいました。よって、コロナ禍を経て再び東京一極集中が進んでいるという状況といえるでしょう。

2023年6月現在、東京圏を中心に全国的に地価は2年連続上昇しています。特に東京23区の新築マンションは高騰 が続いており、不動産経済研究所が発表した2023年5月の東京23区の平均価格は1億1,475万円となっています。

地価の上昇で再びドーナツ化現象が起きた場合、どのような問題点があるのでしょうか?

ドーナツ化現象の問題点とは

  • ドーナツ化現象の問題点①都心のゴーストタウン化
  • ドーナツ化現象の問題点②高齢者の増加

ドーナツ化現象の問題点①都心のゴーストタウン化

ドーナツ化現象で都心に住む人が減少しても、大きな街は企業の本社・学校などが多く所在します。よって昼間は会社員・学生などで賑わい、人口は多い傾向にあります。
しかし、学生や会社が帰宅すると夜間の人口が減りゴーストタウン化し空き家が増えてしまう恐れがあります。ゴーストタウン化は治安の悪化や地域のコミュニティ破壊につながる可能性があります。

また郊外から都市部へ移動する人が多くなることから、道路の混雑・渋滞の増加により道路整備・高速道路の必要性が高まり自治体の財政に影響を及ぼすでしょう。

ドーナツ化現象の問題点②高齢者の増加

会社員や学生などが郊外に移住すると、都市部では高齢化が進むという傾向があります。
内閣府のホームページ「2020年版高齢社会白書」では、実際に今後大都市での高齢化が進むと予測されています。

会社員や学生などが郊外に移住すると、都市部では高齢化が進むという傾向があり、内閣府のホームページ「2020年版高齢社会白書」では、実際に今後大都市での高齢化が進むと予測されている。
【画像出典】内閣府「2020年版高齢社会白書 地域別にみた高齢化」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2020/html/zenbun/s1_1_4.html

高齢者が増えると社会保障関係費の負担が増え、自治体の財政を圧迫する恐れがあります。

ドーナツ化現象は上記のような問題がありますが、逆ドーナツ化現象も都市に悪影響を及ぼす可能性があります。

逆ドーナツ化現象にも問題点がある

  • 逆ドーナツ化現象の問題点①都心の地価が高騰し、郊外に空き家が増える
  • 逆ドーナツ化現象の問題点②都心における自然災害のリスクが高まる

逆ドーナツ化現象の問題点①都心の地価が高騰し、郊外に空き家が増える

逆ドーナツ化現象で東京一極集中が進むと、ますます都心の地価は高騰すると推測されます。
一方で郊外では地価が下がる、空き家が増えるといった問題が生じます。

ドーナツ化現象とは逆に地方で高齢化が進むでしょう。
ただし、都心のように企業の本社や学校など昼間に人が集まる可能性が低く都市機能が衰退するスピードは早いと考えられます。

逆ドーナツ化現象の問題点②都心における自然災害のリスクが高まる

都心に居住する人が増えると、地震や豪雨など都心で自然災害が起こると被害に遭う人も増えリスクが高くなってしまいます。

ドーナツ化現象には問題点もありますが成長期の都市の過程であり、2019年の横浜市民生活白書では「都心の人口は空洞し続け、それを吸収する形で外延部の郊外の人口は増え続ける」と述べられています。

一方で逆ドーナツ化現象では地方衰退・東京一極集中という問題が生じ、都市部の自然災害・危機管理リスクは高くなります。

ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象の対策の1つはスマートシティ

上記のように、ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象が進むとさまざまな問題が生じます。

ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象の対策の1つが「スマートシティ」です。
スマートシティは、「ICT機器・AIなどの新しい技術を活用しながら、都市のマネジメント(計画・整備・管理・運営など)を高度化することにより、さまざまな課題を解決する持続可能な都市や地域」といわれています。

スマートシティにおける治安状況の改善や災害リスクの低下・インフラの最適管理などは、ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象で起こりうる問題を事前に防ぐ
【画像出典】内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省スマートシティ官民連携プラットフォーム「スマートシティガイドブック」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/00_scguide_s.pdf

スマートシティにおける治安状況の改善や災害リスクの低下・インフラの最適管理などは、ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象で起こりうる問題を事前に防ぎます。

さらに住民の利便性・幸福度の向上も目指し、さまざまな取り組みが行われています。

不動産テックでいち早く情報を収集しよう

ドーナツ化現象・逆ドーナツ化現象は、不動産価格や賃貸需要など不動産業界にも影響を及ぼします。情報をいち早く入手するためには、不動産テックが有効です。
AIやビッグデータを活用した査定や価格可視化サービスなどを活用し、情報を収集していきましょう。

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19

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