「デジタルツイン」どう使う? 国内外の事例を紹介

2023.06.16
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「デジタルツイン」どう使う? 国内外の事例を紹介

デジタルツインとは? 利点をまずは知ろう

SUMAVEでも何度かご紹介しているデジタルツイン(Digital Twin)(https://www.sumave.com/20200630_18257/)とは、実世界の物理的なオブジェクトやシステムのデジタルな模倣や表現を意味します。デジタルツイン技術は、インターネットオブシングス(IoT)デバイス、センサー、通信技術、そしてデータ分析やシミュレーション手法を組み合わせて実現されており、実世界のシステムの状態や挙動をリアルタイムで追跡・予測・最適化することが可能です。

デジタルツインの主な利点としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. シミュレーションと最適化: デジタルツインを用いて、様々な条件下でのシステムの挙動をシミュレーションし、最適な設計や運用方法を見つけることができます。

  2. 予測保守: センサーから収集されたデータをもとに、機器の劣化や故障の兆候を予測し、適切な保守スケジュールを立てることができます。これにより、ダウンタイムの削減やコスト削減が可能となります。 

  3. リモートモニタリング: デジタルツインにより、遠隔地からでもシステムや機器の状態をリアルタイムで監視し、問題が発生した際に迅速に対応することができます。

  4. トレーニングと教育: デジタルツインを利用して、従業員や学生が仮想環境で実世界のシステムを操作・学習することができます。これにより、リスクの低い環境でのトレーニングや、新しい技術の習得が可能になります。

デジタルツインは、製造業、エネルギー、交通、医療、建設業など、多くの産業で活用されています。今回はSUMAVEらしく不動産業界に絞ってみていきましょう。

デジタルツインは不動産業界でどのように使われているか? その活用法

デジタルツインを使えば、物理的な建物やインフラの仮想的な複製を作成し、シミュレーションやデータ分析によって将来の動向や問題を予測することができます。これにより、計画段階から効率的な設計や運用が可能になり、コスト削減や持続可能性の向上が期待できます。デジタルツインは、不動産企業や国、自治体が都市計画やインフラ整備、防災対策などの分野で、より効率的かつ持続可能なソリューションを提供するために活用されています。

都市計画:都市の発展や再開発を効果的に行うために、デジタルツイン技術を用いて都市の現状や将来の動向を予測します。

建物管理:ビルやマンションの管理にデジタルツイン技術を活用し、エネルギー効率や省資源化を図ります。

具体的な事例をいくつかご紹介していきます。

都市計画:横浜市は都市計画などに活用

都市計画というと行政機関やデベロッパー主導で行われてきましたが、近年は市民参加型によるプロセス設計の重要性が増しています。横浜市では、都市に関わる行政担当者、専門家、住民など全員が主体となり、自分たちの都市の未来を共に考えてイメージを共有できるよう、デジタルツインを用いて一般市民を交えたコミュニケーションを活発化させ、より高度なプランニング・合意形成を目指す実証実験「PLATEAU YOKOHAMA」プロジェクトを行いました(「XR技術を用いた体感型アーバンプランニングツール」)。

横浜市は国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト 「PLATEAU」のデータを活用し、「デジタルツインYOKOHAMA」の実現を目指しています。今回の実証実験もその取り組みの1つです。

東京都も2030年にデジタルツインの実現を目指すプロジェクトに取り組んでいます。

東京都のデジタルツイン実現プロジェクトのウェブサイト
東京都のデジタルツイン実現プロジェクト【出典】https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/

デジタルツインは3Dの都市データだけでなく、例えば人流・交通データなどと組み合わせれば混雑状況の解消や、災害時の避難経路などの最適解を導き出すことも可能です。都市としては、何が起きるかを事前にデジタルツイン上でシミュレーションすることで運営を円滑にしていくことが狙いです。

建物管理:東急不動産は省エネルギーと設備保守の効率化に活用

東急不動産はアクセンチュアと共に自社のマンションブランドのデジタルツインを構築することを2022年に発表しています。図面を基に3次元モデルを作成し、外壁や床、家具などの小物までつくり込むほか、室内のウオークスルー機能なども付加するとしています。

顧客はデジタルツインを使って、内装デザインや家具のレイアウト、部屋の位置による景色の見え方の違い、時間帯に応じた採光の変化などをシミュレーションできます。モデルルームの内覧では確認が難しかった項目も簡単にチェック可能のため、顧客体験(CX)の向上につながります。一方で、デジタルツインによって販売にあたって重くのしかかるマンションギャラリーの経費を圧縮する狙いもありそうです。

他社ではデジタルツインをプロモーションに使うケースも。三菱地所レジデンスは、ファッションモデルの冨永愛さんを起用し、体や声も含めて本人に生き写しになった3次元CGが入居しているという設定で、モデルルームの特設サイトを昨年開設するなどしました。

不動産業界でデジタルツインは、建築物やインフラの仮想モデルを作成することで、設計段階からメンテナンスまでの各フェーズで効率的なプロジェクト管理を可能にします。またそれにより現場調査や試験施工の回数が減り、全体のコスト削減にもつながるでしょう。また、利用者の満足度の向上にもつながります。資材の高騰などもある中で、競争力を高め、より効率的で持続可能なビジネスを実現するためにも注目のテクノロジーといえます。

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