不動産のVR内覧のメリットは? サービス加速する日本、先行する米国事例

- VR技術を活用した不動産内覧のメリット
- 日本の不動産業界におけるVR内覧の最新事例
- 海外のVR内覧のサービスはどうなっている?
- 日本の不動産業界におけるVR内覧の今後の展開
- VR内覧が一般化され、サービスが進化していく
近年、不動産業界はデジタル化が急速に進んでいます。例えばバーチャルリアリティ(VR)技術の活用などもそれです。VRの技術を使って物件の内覧ができるVR内覧は、実際に物件を訪れることなく、まるでその場にいるかのような感覚で物件を確認できる革新的なサービスです。ここでは、日本の不動産業界におけるVR内覧の最新事例を紹介し、海外の事例との比較を行い、今後の展開について考えていきます。
VR技術を活用した不動産の物件内覧のメリットとは
VR技術を活用することで、物件内覧において以下のようなメリットが生まれます。
- 時間や場所にとらわれず、遠隔地からでも物件内覧が可能
- 事前に複数の物件を比較・検討できることで、実際の内覧回数を削減
- 仮想空間での内装変更や家具配置のシミュレーションが可能
特に3についてはバーチャルステージング(https://www.sumave.com/20200414_16923/)の進化と共に、そのクオリティは格段にあがってきています。
日本の不動産業界におけるVR内覧の最新事例
VR内覧は、実際にどのように使われているのでしょうか。日本の不動産業界におけるVR内覧サービスの代表的な例を見てみましょう。
(1) 住友不動産
住友不動産は、高品質な3DCGを用いたVR内覧を提供することで、購入検討者に快適な内覧体験を実現しています。物件の内装や設備を細部にわたって再現し、まるで現地にいるかのような臨場感を提供することで、購入者の満足度を高めています。また、単にVRで物件の中身を見るだけではなく、スタッフが映像で丁寧に案内する「オンライン見学会」なども行うことで、遠方にいたり、ギャラリーまで足を運べないような人への囲い込みも行っています。ネットだけでは得られない細かい情報や個人的な相談もオンラインでできるのが特徴です。
住友不動産の注文住宅では360°ビューのバーチャルモデルハウスもある【出典】https://www.j-urban.jp/virtual.php
(2) パナソニック ホームズ
パナソニック ホームズは、展示場や分譲地を自宅にいながら体験できる「バーチャル住宅展示場」を提供するほか、中古住宅の売買では、リフォーム後の部屋を購入前に3DCGによるVRで体験できるサービスを提供しています(https://homes.panasonic.com/rearie/aboutphre/)。リフォーム前の物件が、リフォーム後にどうなるのかというシミュレーションをVRで体験でき、それがそのままリアルに反映されるデジタツルインのサービスも展開しています。これにより、物件のデータをリアルタイムで更新できるだけでなく、購入者は自分好みの内装や設備を試すことができます。
海外のVR内覧のサービスはどうなっている?
日本よりも国土が広く、簡単に現地に行けない問題を抱えているのが米国です。そのためオンラインのサービスは不動産業界でも活用が進んでいます。そこで、米国におけるVR内覧についても見ていきましょう。
(1) Matterport
米国のMatterport(https://matterport.com/ja)は、3Dスキャナーを使って物件を高精細に再現したバーチャル内覧サービスを提供しています。VRというよりは、デジタルツイン。すでにあるものをスキャンしてデジタル上で体験できます。その点で空間把握が容易である点が特徴です。
(2) Zillow 3D Home
米国の不動産ポータルサイトZillowが提供する「Zillow 3D Home」(https://www.zillow.com/z/3d-home/)は、専用のアプリを利用して簡単にVR内覧コンテンツを作成できるサービスです。個人でも手軽にバーチャル内覧を作成・活用できる点が特徴です。
(3) View Labs
View Labs(https://www.viewlabs.com/)は米国を中心に自律型ロボットによる360°ビデオ撮影を行っています。同社ではデータ分析、VRまでのソリューションを提供していて、自社をバーチャルアーキテクト(建築家)と定義しています。動画撮影にロボットを使用することで、安定した映像品質と効率的な撮影プロセスが実現されているのが特徴です。
米国ではCGや360°カメラでの撮影というよりは、MatterportやView Labsのようにいかに効率的に実際にある物件をスキャン、デジタルツインを生み出し、活用法を探っていく方向と、誰もが手軽に作成できるZillow 3D Homeのような手軽さへの方向という2つの方向性があるようです。
日本の不動産業界におけるVR内覧の今後の展開
今後の日本の不動産業界にけるVR内覧の進化は次の3つが考えられます。
(1) よりリアルなVR体験の提供
今後、日本の不動産業界では、VR技術の進化により、よりリアルな内覧体験が求められることでしょう。例えば、光や影の表現が向上したり、音や匂いも再現されることで、現地にいるかのような感覚を提供するサービスが期待されます。
(2) カスタマイズ機能の充実
デジタルツイン技術の進化により、購入者は自分好みの内装や設備を試すことができるようになるでしょう。また、物件の設備や内装を容易に変更できることで、購入者のニーズに応じた提案が可能になります。
(3) リモートでのサポートの強化
VR内覧が一般化することで、リモートでの物件案内や相談がますます重要になるでしょう。担当者と購入者がオンライン上でコミュニケーションを取りながら、VR内覧を進めることが求められます。
VR内覧が一般化され、サービスが進化していく
日本の不動産業界におけるVR内覧は、多くの企業が独自のサービスを展開し、競争が激化しています。今後は、VR技術やデジタルツイン技術の進化により、よりリアルな内覧体験やカスタマイズ機能が求められるでしょう。また、リモートでのサポートが強化されることで、購入者と担当者がオンライン上で円滑にコミュニケーションを取ることが可能になります。VR内覧が一般化することで、不動産業界全体が効率化され、購入者にとっても満足度の高いサービスが提供されることでしょう。
文/中村祐介
株式会社エヌプラス代表。デジタル領域のビジネス開発とクリエイティブ戦略が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施も行うほか、一般社団法人おにぎり協会の代表理事として、日本の食や観光に関する事業プランニングやディレクションも行う。
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