5Gが及ぼす不動産業界への影響とは。スマートホーム・VR内覧が当たり前に?

- 5Gとは「5th Generation(第5世代移動通信システム)」の略で次世代通信規格の5世代目である
- 総務省は2023年度末には5Gの基盤展開率が98%以上となると予測している
- 5Gに置き換わることで、不動産業界ではスマートホームやVR・オンライン内覧・IT重説が急速に普及する可能性がある
5Gとは?政府も様々な施策で後押し
5Gとは「5th Generation(第5世代移動通信システム)」の略で、次世代通信規格の5世代目を意味します。2010年の4G・LTEに続く移動通信システムで、以下の3つの特徴があります。
- 超高速
- 超低遅延
- 多数同時接続
現在の移動通信システムより100倍速いブロードバンドサービスで、2時間の映画を3秒でダウンロードできます。LTEは5分かかります。
また、利用者がタイムラグを感じずにリアルタイムで遠隔地のロボットやドローンなどを操作でき、高感度のセンサーによってスマートフォンやタブレットPCなど様々な機器からネットに多数同時接続が可能となります。
第一世代(1G)から10年毎に進化を続け、30年間で最大通信速度は約10万倍になりました。
【画像出典】総務省「5G利活用セミナー 2020年の5G実現に向けた取組」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.soumu.go.jp/main_content/000593247.pdf
5Gを地域や産業など個別のニーズに応じて、地域の企業・自治体などが敷地内に構築するシステムを「ローカル5G 」と呼びます。携帯電話事業者の5Gサービスのように、他のエリアでの通信障害や災害などの影響を受けにくい点が大きなメリットです。
ローカル5Gは用途が限られていないため、建築・リフォーム現場の機械の遠隔制御やセンサーによる住宅監視システムなど柔軟な性能の設定が可能です。
「Wi-fiと何が違うの?」と疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、「5G」はネットワーク回線そのものに対する通信規格の名称、「Wi-fi」は通信技術(仕組み)を指します。
よってWi-fiの通信技術を利用して5Gに接続する事も可能です。
政府も後押しする5G
総務省では「go5g.go.jp」というメディアで5Gの普及を推進しており、2020年には経済産業省が「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」を公開しています。
この法律は「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、特に地方での基地局の整備を加速させるために制度の見直し、適用期限の3年間延長、税額控除率を階段状にすることで、集中的な整備を行っていくというものです。
5G導入の事業者が導入計画書を提出し、一定の基準を満たす場合には対象設備の投資について、課税の特例が適用されます。
【画像出典】経済産業省「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律 5G導入促進税制の見直し・延長」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/laws/5g_drone/01_abstract_tax.pdf
経済産業省では定期的に5Gに関する事業を支援 するプロジェクトを公募しており、多くの地方自治体でも5Gを普及・促進するためのイベントや導入補助金 、ビジネス創出のサポートを行っています。
総務省の「go5g.go.jp」では「2023年度末には5Gの基盤展開率は、98%以上となり、世界最高水準となる予定です 」と記載されています。
現在居住人口の99.99%をカバーしている4Gが5Gに置き換わった場合、不動産業界にはどのような影響があるのでしょうか?
5Gが不動産業界に与える変化とは
4Gが5Gに置き換わることで不動産業界にも、影響を及ぼすことが予測されます。
スマートホームが当たり前に?
総務省の「新たなモバイルサービスの展開が特に期待される分野 」の参考資料では「5GやITSに加えて、IoT、AI、ビッグデータ等のICTをフル活用することで、次のような分野で新たなサービスやビジネスの創出が期待される」と記載されています。
【画像出典】総務省「新たなモバイルサービスの展開が特に期待される分野」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.soumu.go.jp/main_content/000420824.pdf
5Gの普及によって、超低遅延・多数同時接続が可能となりIoTを用いたスマート家電・機器を中心に利便性・快適性を向上させたスマートホームが普及する可能性が高くなります。
スマートホームが「当たり前」となり、不動産業界でも取り扱う住宅に設備・機器を導入することが求められるのではないでしょうか。
例えばインターネット無料物件は5G回線のニーズが高まる、スマート家電・機器・設備を導入することで家賃に差が出る、集客率が上がるなどの影響が予測されます。
VR内覧の普及
総務省の「go5g.go.jp 5G活用モデル 」ではVRを体験型観光に利用できる動画を公開しています。2021年10月に富山県では「5Gを活用したVR観光モデル実証業務」(県委託事業)の一環として観光客の滞在時間の増加や再訪意欲の向上を目的としたVR(仮想現実)技術を用いた観光体験イベントを開催しました。
不動産業界では5Gを活用し、VR・オンライン内覧においてタイムラグを感じずにリアルな部屋の内覧が期待できます。
オンライン内覧は既に普及が進んでいますが、5Gが一般的となりVRが普及する事によってVR内覧を取り入れる会社も増えるかもしれません。
ここまで5Gのメリットを活かした不動産業界への影響を予測してきましたが、5Gには課題や問題点も存在します。
5Gの課題や問題点とは?
5Gに関わらず電波は人間の体に「刺激作用」と「熱作用」を及ぼし神経や筋の活動に影響がある、体温の上昇など有害となる可能性があります。
日本では「電波保護方針」を定め、電波の人体への影響について基本的な考え方や基準値に基づく規制を導入しています。
総務省「第5世代移動通信システム(5G)の健康への影響について」によると、5Gは「比較的高い周波数帯の電波が用いられるものの、人体に及ぼす作用は他の電波と変わるわけではない」「5Gには体を温める「熱作用」があることが分かっている」と言う旨が記載されています。(出典:https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/ele/body/emf_pamphlet.pdf)
人体への影響の他に5G導入の課題としてコスト面が挙げられます。
【画像出典】総務省「go5g.go.jp ローカル5G導入の手引き(令和4年3月版)」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.soumu.go.jp/main_content/000420824.pdf
Wi-Fiや4G(キャリアLTE)の導入コスト数十万円と比較すると、かなりコストが高い事が分かります。5Gの普及に向けて、低コスト化が今後の課題となります。
まとめ
5Gの概要と不動産業界への影響、今後の課題について解説してきました。
4Gが5Gに置き換わる未来に向けて、この記事を参考に5Gのメリットや問題点、不動産業界への影響について知り、今後の動向を注視していきましょう。
執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
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