DXの次はGX? 経済産業省が設立した「GXリーグ」の不動産業界への影響と事例

2022.07.26
  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE
DXの次はGX? 経済産業省が設立した「GXリーグ」の不動産業界への影響と事例

GXとは?経済産業省がGXリーグ基本構想を公表

2022年2月、経済産業省は 「GXリーグ基本構想」を発表しました。
GX(グリーントランスフォーメーション)とはカーボンニュートラルを実現するための「経済社会システム全体の変革」です。

カーボンニュートラ ルとは?
温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる(プラスマイナスでゼロにする)ことです。
2020年10月、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

なおDX( デジタルトランスフォーメーション)とは、「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる」ことを意味します。

IT機器を取り入れ業務の効率化を図るだけではなく、ユーザーや消費者さらには社会に変革をもたらすことを目的としておりGXとDXは「社会を変革させる」という点では共通しています。

GXリーグ設立準備公式WEBサイトではGXを「2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体の変革」と定義しています。

カーボンニュートラルだけが目的ではなく、GX実践企業が正当に評価されるために官民連携のルールを策定し、「GX市場」を創造することで経済社会全体を変革していくことが最終的なゴールとなります。

カーボンニュートラルとは? なぜ必要?

温室効果ガスの排出を全体でゼロにする「カーボンニュートラル」はなぜ必要なのでしょうか?


【画像出典】環境省 脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/#to-how


世界の平均気温は2017年時点で、1850~1900年の工業化以前と比較すると、約1℃上昇しています。

自然災害と気候変動問題が全て連動しているとは言えませんが、温暖化が進むと気候システムの変化が大きくなり、異常高温・海洋熱波・豪雨・猛暑などのリスクが高くなることが予測されています。

日本でも、農林水産業、水資源、自然生態系、自然災害、健康、産業・経済活動等様々な分野への影響が出ると指摘されています。

気候変動の原因の1つである「温室効果ガス」は、経済活動や日常生活によって排出されています。人間が活動する事によって排出される温室効果ガスで最も多いものは二酸化炭素(温室効果ガス全体のうち約6~7割)で 、地球温暖化に及ぼす影響が最も大きいと言われています。

二酸化炭素は地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな温室効果ガスです。石炭や石油の消費、セメントの生産などにより大量の二酸化炭素が大気中に放出されます。また、大気中の二酸化炭素の吸収源である森林が減少しています。これらの結果として大気中の二酸化炭素は年々増加しています。

気象庁「地球温暖化 温室効果ガスの種類」より引用

石炭や石油の消費を止めると経済活動・人間の活動に大きな支障をきたします。

そこで住宅・建築物の省エネ化、再生可能エネルギーによる代替などで、可能な限り二酸化炭素の排出量をおさえる一方で、植林・森林管理などにより二酸化炭素の吸収量を増やし「全体で温室効果ガスの排出をゼロにする」という考えがカーボンニュートラルです。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けた施策の一環が経済産業省のGX構想、GXリーグです。

GXリーグ基本構想と不動産業界への影響

経済産業省の「GXリーグ基本構想 」によると、GXは社会変革であり、企業の挑戦と同時に社会全体のビジネスルールや生活者意識が変わる事を指します。

G Xリーグでは、GXに自ら取り組む「企業群」と官・学が連携し、2050年への道筋と未来社会像・課題を共有しながら、市場ルールの形成、生活者意識への働きかけなどを行います。


【画像出典】経済産業省 産業技術環境局 環境経済室「GXリーグ基本構想」よりスクリーンキャプチャにて作成【URL】https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/GX-league/gxleague_concept_2.pdf

GXリーグでは、下記の3つを提供するチャレンジを行います。
①ワーキンググループを構成して経済社会システムの移行像と未来像を示す2050年カーボンニュートラルの未来社会像を議論・創造する場
②CO2ゼロ商品の認証制度といったカーボンニュートラル時代の市場創造やルールメイキングを議論する場
③自主的な排出量取引の場

経済産業省がGXリーグ基本構想への賛同企業を募集した結果、2022年4月1日時点で440社が賛同表明を行いました。

不動産業界では東急不動産株式会社、株式会社オープンハウスグループ 、リノベる株式会社などが賛同を表明しています。

GXの不動産業界への影響とは?

環境省「脱炭素ポータル」では、脱炭素に向けて8つの重点的な対策が示されています。

脱炭素の基盤となる8つの重点対策
1. 屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
2. 地域共生・地域裨益型(ひえきがた)再エネの立地
3. 公共施設や業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
4. 住宅・建築物の省エネ性能等の向上
5. ゼロカーボン・ドライブ(再エネ×EV/PHEV/FCV)
6. 資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
7. コンパクト・プラス・ネットワーク等による脱炭素型まちづくり
8. 食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立

1の太陽光発電装置に関しては、東京都が事業者向けに義務付けの制度を創設する事を公表しています。詳細は以下の記事をご参照ください。

太陽光発電の設置義務はいつから? スマートホームへの導入メリット・デメリット
https://www.sumave.com/20220323_21927/

3・4は、不動産会社と関わりが深い点です。
ZEBとは Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を指します。

ZEH(Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス))という年間のエネルギー収支をゼロにする家と同様に、環境省・国土交通省・経済産業省が連携して支援事業を行っており 、一定の要件を満たすと事業者側、住宅を建てた方に補助金が給付されます。

既存の住宅に対しても、資源エネルギー庁では省エネ設備への入替支援・次世代省エネ建材の実証支援事業を行っています。

GXリーグ賛同企業の脱炭素社会に向けた取り組み事例2つ

GXリーグへの賛同を表明した、東急不動産・リノベる株式会社の取り組み事例を見ていきましょう。

  1. 東急不動産の再生可能エネルギー事業
  2. リノベる株式会社の中古住宅の環境性能・温熱環境向上への取り組み

1.東急不動産の再生可能エネルギー事業

東急不動産株式会社では、2022年に企業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギーとする「RE100」の達成目標を定め、達成に向けて自社の発電施設を積極活用していく予定です。

これまで本社事業所やオフィスビル、商業施設等を再生可能エネルギーが利用できる施設に切り替え、想定で⼀般家庭の電力由来の年間排出量約11万8000世帯分のCO2削減につながると公表されています。

2.リノベる株式会社の中古住宅の環境性能・温熱環境向上への取り組み

リノベーション・コンサルティング事業を展開するリノベる株式会社では、サステナビリティ(持続可能性)事業の一環としてリノベーションによる中古住宅の環境性能・温熱環境を向上させる取り組みを行っています。

また、リノベーションは建替えや新築に比べてCO2排出量を最大76%、廃棄物の発生を最大96%削減するというデータがあります。

GXリーグ設立で何が変わる?

GXリーグ設立によって、不動産業界では住宅への太陽光発電設置、ZEB・ZEH、既存住宅の省エネ化が推進されることが予測されます。

GX リーグ基本構想 では、GX リーグ参画企業に対して排出量削減、製品・サービスを通じた市場での取り組みなどを実施することを要件としています。

参画企業が排出量削減などに貢献した際には、外部から正しく評価されるルール作りを進める予定です。

今後のGXリーグのスケジュールは以下の通りです。
(2022年1月~)
【画像出典】経済産業省GX リーグ基本構想【URL】https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/GX-league/gxleague_concept.pdf

GXリーグ実証のルール作りや企業の募集が行われ、2022 年秋以降に、カーボン・クレジット市場も含む実証事業を実施しつつ、2023 年 4 月以降の GX リーグ本格稼働を目指した議論を進めていく予定です。

この記事でGXとは何か、不動産業界への影響・参画企業の事例などを把握しながら、今後の動向に注目していきましょう。

 

執筆者/田中あさみ FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19

  • 0
  • 0
  • 0
  • LINE
PR

こちらの記事もオススメです

AIで契約書を審査?! レビューサービスとは? 不動産業界への影響、ガイドラインを解説
AIで契約書を審査?! レビューサービスとは? 不動産業界への影響、ガイドラインを解説
2024.03.28 業界分析
防災テックの市場規模が急拡大! AI・ドローン・・・最新事例を解説
防災テックの市場規模が急拡大! AI・ドローン・・・最新事例を解説
2024.03.25 業界分析
増加する不動産クラウドファンディングとは? 米国の先行事例から見るトレンド
増加する不動産クラウドファンディングとは? 米国の先行事例から見るトレンド
2024.03.19 業界分析
2024年にマンション法見直し・改正か? 見直しの内容と背景を解説
2024年にマンション法見直し・改正か? 見直しの内容と背景を解説
2024.03.14 業界分析
水道管の老朽化問題をAIで解決? 事例を解説! 事業者の対策も
水道管の老朽化問題をAIで解決? 事例を解説! 事業者の対策も
2024.03.11 業界分析
「物流2024年問題」の解決にも寄与、設備で人気の宅配ボックス最新動向
「物流2024年問題」の解決にも寄与、設備で人気の宅配ボックス最新動向
2024.03.08 業界分析

記事広告掲載について

スマーブでは、不動産テックに関する記事広告をお申込みいただく企業様を募集しております。どうぞお気軽にお申込みください。