太陽光発電の設置義務はいつから? スマートホームへの導入メリット・デメリット

- 東京都は新築戸建て物件に太陽光発電装置の設置義務化を検討中
- 設置の義務は事業者にある。既に一部の建築物で義務化を実施している自治体も
- 太陽光発電装置導入のメリット・デメリットとは?
東京都が事業者に太陽光発電装置の設置義務化を検討
2021年9月、小池都知事は都内の新築戸建て住宅に太陽光発電装置の設置義務化を検討している事を明らかにしました。
義務化はあくまでまだ検討段階であり、具体的なスケジュールは決まっていません。
太陽光発電装置の設置が義務化となった場合、対象は新築戸建て住宅を販売する住宅メーカーなどの事業者です。
小池氏は2021年12月の都議会本会議で「個別の建物ではなく、事業者単位で設置を求める仕組みを環境審議会の分科会に提案した」と述べています。
翌日の議会では他の議員から設置義務化について言及があり、東京都の環境局長は「都は、住宅等の一定の新築建築物に太陽光発電設備の設置を義務づける都独自の制度の導入に向けた検討を開始いたしました。」と述べました。
都の新制度において、義務化の対象は所有者ではなく「事業者」である事が分かっており将来的に事業者側が太陽光発電装置導入に向けて本格的に動き出すことが求められます。
※追記
2022/4/9に新制度の創設が決定、公表されました。
義務の対象となるのは総延べ床面積で年間2万平方メートル以上を供給するメーカー・不動産デベロッパーなどの予定です。
延べ床面積が2000平方メートル未満の中小規模の住宅やビルに設置を想定しています。
政府や自治体の目標・取り組み
政府は2030年に新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置する目標を掲げています。
資源エネルギー庁が2021年4月に公表した「2030年における再⽣可能エネルギーについて」という資料によると、「新築住宅への導⼊促進には、導⼊義務化などの追加的な政策が必要等の意⾒があった。」との記載があります。
同年8月には国土交通省・経済産業省・環境省が開催する「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」で新築戸建て住宅へ太陽光発電装置の設置義務化に対し「将来における太陽光発電設備の設置義務化も選択肢の一つ」と記されています。
京都市では2012年から延べ面積2,000㎡以上の新築又は増築を行う建築物の建築主に対して再生可能エネルギー利用設備の導入・設置を義務付けています。
長野県でも2014年から建築主は太陽光発電装置などの自然エネルギー導入について検討することが義務付けられています。
太陽光発電装置の導入は、事業者にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
太陽光発電装置導入のメリット・デメリットとは
太陽光発電装置は、太陽の光エネルギーを吸収して直接電気に変える太陽電池を利用して電力を生み出すことができます。
SDGs、カーボンニュートラルなど社会貢献のアピールになる、他メーカーとの差別化に繋がるというメリットがある一方で、千葉県市原市で設置業者の施工に問題があり土砂崩れが起きた事故があり予期せぬトラブルへの対応が求められる可能性があります。
太陽光発電装置導入のメリット
- 助成金・補助金が出る自治体がある
- 社会的貢献のアピール
- 他メーカーとの差別化に繋がる
1.助成金・補助金が出る自治体がある
東京都では、住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進事業という所有者の初期費用ゼロで太陽光発電を設置する事業者に対し、設置費用の一部を助成する取り組みを行っています。
登録された事業者は「公益財団法人 東京都環境公社」のホームページで公開されており、一定の要件を満たす場合には太陽光発電1kwあたり10万円の助成金が支給されます。
神奈川県でも年に一度、一定期間内に自家消費型太陽光発電等導入費補助金制度として太陽光や風力などを利用する自家消費型再生可能エネルギー発電設備を県内に設置する事業者に補助対象経費の3分の1又は発電出力に応じた金額の補助金を受け付けています。
環境庁や資源エネルギー庁・中小企業庁のサイトでは補助金の公募が定期的に掲載されておりチェックする事で補助金・助成金が貰える可能性があります。
2.社会的貢献のアピール
企業がカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)やSDGs(持続可能な開発目標)へ取り組むことは社会貢献へのアピールに繋がります。
太陽光発電装置の設置は、カーボンニュートラル、SDGsにおける「エネルギー」と「気候変動」「都市」の実現に繋がる可能性があります。
社会貢献度の高い企業として、消費者や事業者・公的機関などから高い評価が期待できます。
【画像出典】「外務省:持続可能な開発のための2030アジェンダ」よりキャプチャにて作成
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000270935.pdf
3.他メーカーとの差別化に繋がる
住宅の購入希望者で太陽光発電装置付き住宅の購入を前向きに検討している人にとって、太陽光発電装置を導入した住宅は他メーカーとの差別化に繋がり有利となる可能性があります。
また、太陽光発電装置の導入により「ZEHビルダー/プランナー」として登録される要件の1つを満たすことが出来ます。
住宅の年間の一次エネルギー消費量が差し引きゼロになる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」は政府目標で「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」ことが掲げられています。
ZEHの要件の1つとして「再生可能エネルギーの導入」があり、太陽光発電装置の設置により要件の1つを満たす事が可能です。
2016年から経済産業省・資源エネルギー庁は2020年までに受注する住宅のうちZEHが占める割合を50%以上と目標を宣言・公表したハウスメーカー、工務店、リフォーム業者等を「ZEHビルダー」として公募、登録し公表しています。
ZEHビルダー/プランナーが関わるなど一定の要件を満たした住宅は、購入者にとって2021年度は1戸当たり60万円の補助金が支給されるというメリットがあります。
2020年11月時点、全国のハウスメーカー・工務店などで7,603社がZEHビルダーとして登録されており、一般社団法人 環境共創イニシアチブのホームページで公開されています。
太陽光発電装置導入のデメリット
- 購入希望者に避けられることがある
- 災害など予期せぬ事態への対応
- 卒FIT問題
1.購入希望者に避けられることがある
太陽光発電装置の設置は、所有者にとっては売電価格が下がる、災害によって設備が壊れるなどのリスクがあり定期的なメンテナンスも必要となります。
東京都は「東京ソーラー屋根台帳」を公開し建物が太陽光発電・太陽熱利用に適しているか「GoogleMap」を用いて公開するなど普及・啓発活動を行っています。
ただリスクやデメリットが気になる方にとっては避けられる結果になってしまいます。
2.災害など予期せぬ事態への対応
2018年11月千葉県市原市で大規模な土砂崩れが発生し、幅約40メートルに渡り4~5mに積もった土砂が道路をふさぐ事故が起こりました。
事故の原因は太陽光発電設置業者が2016年10月から太陽光パネルを設置するために残すべき森林を伐採、不適切な施工を行っていたことです。
県は事業者に対して行政指導指針に基づく指導・勧告を実施しました。
上記の事故では業者に非がありましたが、委託業者に非がなくとも自然災害がきっかけで事故は起こる可能性は存在します。結果、業者として責任を問われる事態も想定されます。
3.卒FIT問題
2022年現在、太陽光発電装置による電力は国の固定価格買取制度(FIT)により、20年間(10kW未満は10年間)1kWhあたりの価格が定められており所有者は長期に渡り安定した売電収入を得られます。
しかし買取価格は年々下がっており、買取期間終了後の「卒FIT」が課題となっています。資源エネルギー庁では電気自動車や蓄電池と組み合わせた自家消費や小売業者との契約を呼び掛けていますが、所有者がリスクを感じた場合需要は落ちてしまうでしょう。
スマートホームを超えたスマートタウンへ
事業者としては太陽光発電装置の導入に関して上記のメリット・デメリットをおさえた上で総合的な判断を行う必要があります。
東京都・政府の動向によっては早急な判断が求められますので、太陽光発電装置付き住宅の計画案をコスト面含め検討していきましょう。
既に太陽光発電装置を導入した住宅を街単位で展開する事業者や「今後すべての住宅に太陽光発電を標準搭載する」と公表した業者も存在します。
【画像出典】「Fujisawa SST:フォトギャラリー」よりキャプチャにて作成
https://fujisawasst.com/JP/gallery/
上記はパートナー企業と神奈川県藤沢市の共同プロジェクトである「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」の一部で、不動産会社もパートナー企業に含まれています。
今後スマートホームを超えたスマートタウンが、メジャーな存在となる時代が来るかもしれません。
執筆者/田中あさみ
FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
Twitter:https://twitter.com/writertanaka19