Web3によって、地域社会や不動産はどう変わるのか?

2022.06.02
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Web3によって、地域社会や不動産はどう変わるのか?

Web3は中央集権型の現状に対するアンチテーゼ

最近、話題にされることの多いWeb3(またはWeb 3.0)とはざっくり言うとGoogleやAmazonなど巨大なテック企業=中央集権型プラットフォームやサーバー、権限が利用されなくなる考え方です。インターネットは自由のイメージがありましたが、今、私たちのオンライン上の行動や発言はGoogleやFacebook、AppleなどのGAFAMに握られているといっても過言ではありません。EUなどでは、GDPR(EU一般データ保護規則)と呼ばれる個人のデータ保護の規則を用意し、これらに対抗するような動きを見せているほどです。

この状況に対して、Web3の名付け親でもあるイーサリアム共同設立者のギャビン・ウッド氏は「Centralization is not socially tenable long-term(中央集権では、長期にわたって社会を維持できない)」https://gavofyork.medium.com/why-we-need-web-3-0-5da4f2bf95abと主張しています。

Web3では中央集約的な権限や、大手検索エンジン、ソーシャルメディアプラットフォームなどの会社またはそれに類する監視人(ゲートキーパー)が不要となり、そのような機能も廃止されます。いわば現在のテックジャイアント(世界で支配的影響力を持つIT企業群)に対してのアンチテーゼともいうべき内容です。

ここで、Web3に至るまでのWebについて簡単におさらいしましょう。Web3の前にはWeb(1.0)とWeb 2.0がありました。Web(1.0)には誰で情報発信できる自由がありましたがそれは一方通行でした。Web 2.0になると、読み手が書き手にもなる双方向の世界が実現されました。これによって私たちはオンライン上で気になるお店の評判を別の人から聞いたり、自分がそのお店の情報を提供したりといったことが可能になりました。

しかし、これら情報をまとめているプラットフォームと呼ばれる場所には、企業や団体が存在していました。検索エンジンならGoogle社、SNSならMeta社といったように、です。Web 2.0がプラットフォーマー(中央)に力が集まっている状態(集権)なら、Web3は仲介者などを介さず、ピア・ツー・ピア(対等なもの同士)のインタラクション(やりとり)が可能となる状態を指します。

Web3は、リーダーと中抜きのない世界を提示する

Web3の世界を実現するために、ベースとなるテクノロジーが非中央集権型(分散型)ブロックチェーンや、そこから生まれた暗号通貨です。ブロックチェーンはトラストレス(信用を担保する主体がいない)特徴を持ちます。私たちがこれまで使ってきた円やドルなどのお金は、政府や中央銀行が信用を保証し、法定通貨として存在しています。これに対して例えば暗号通貨のビットコインやイーサリアムなどは、信用を担保する政府や銀行のような中央集権的な主体がありません。1人ひとりが参加するネットワークがサービスの基盤となっているのです。にもかかわらず、多くの人がビットコインやイーサリアムを扱っています。つまり中央集権的な主体がなくても、自律的に動くネットワークが構築可能であることを証明しています。

今までは取引や交流などに対して、「信用を保証してくれる」という理由でプラットフォーマーが存在し、利益を独占してきました。しかし、取引や交流などをするにあたって、その人たち同士で完結したほうがいいのではないか? その際に信用を保証してくれるためにプラットフォーマーという存在は本当に必要なのだろうか? そんな疑問が多くの人の頭に浮かんだ時に、トラストレスなブロックチェーンに注目が集まったわけです。

「ブロックチェーンならプラットフォーマーの代わりに信用を保証してくれる。私たちのデータはプラットフォーマーの利益の源泉になるのではなく、私たち自身のものになる」

仲介者が存在しない、本当の意味でユーザー主体の世界。Web3はそんな未来を提示しているのです。

デジタル住民が市民権を得る「Web3で変わる地域活性」

2021年12月、人口800人の新潟県長岡市山古志地区で、NFTデジタルアートが発行され話題となりました。ブロックチェーンの技術を使った複製できない非代替性トークン(NFT)のデジタルアートを販売し、その利益を地域活性化の財源としていくプロジェクトです。

NFTはいわばデジタルの権利証です。これまでデジタルデータは複製が容易にできるため、価値が低いとされてきました。有名な写真家が撮影した写真に価値はありますが、それをスキャンしたデジタルデータには価値がないと思われるのと同じです。これは、絵画も同じでしょう。しかし、NFTによってデジタルデータにも所有権がはっきりとわかるようになります。アナログ上の写真や絵に価値があり、デジタル上の写真や絵に価値がなかった時代は終わり、デジタル上の写真や絵にも価値がつけられるようになったのです。

山古志地区のNFTデジタルアートを購入した人は、地域のデジタル上の住民になります。住民なので、チャットなどで地域に対して意見交換を行ったり、運営案に対して投票をしたり、地域づくりに関与も可能。しかも投票で選ばれたプランは、実際に地域で行われることもあります。これまで地域のことは住民と市などの自治体が決めてきましたが、同地域ではデジタル上の住民が一部ではありますが、そこに関与できるわけです。

個人の力をそのままに、組織化する「DAO」

中央集権から非中央集権、Web3によって個人に力を取り戻す流れが起きている中で注目を集めているのがDAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)です。

DAOはブロックチェーンの技術を活かし、中央管理者がおらず参加者同士で管理できる組織です。多くの場合は各DAO独自の何らかのトークン(主にガバナンストークンと呼ばれる暗号通貨)を購入することでグループに参加できます。プールされた資金の使途や管理方法に関わる意思決定に投票で関与できます。

先ほど紹介した新潟県長岡市山古志地区もDAO化を目指して活動をしています。

地域がDAOを導入するとどんなことになるのでしょうか? ふるさと納税を例えに話しましょう。ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付ができる制度です。手続きをすると、寄付金のうち2,000円を超える部分について所得税の還付、住民税の控除が受けられる仕組みです。寄付者は寄付をして税金の還付や控除が受けられるばかりか、地域の特産品などを手にすることも可能です。どの地域のどのふるさと納税の返礼品がいいかを探すだけでも、楽しみがあり、ゲーミフィケーションの要素も多分に盛り込まれている制度です。

このふるさと納税で寄付したお金の使い道は、自治体に委ねることになります。しかし、これがDAO化されると、寄付したお金の使い道も、寄付した人々が投票で決めることも可能になるというわけです。

DAOは独自の目的や大きなプロジェクトを達成するために組織化されます。組織にはユーザーもいれば企業もいて、投資家もいるでしょう。メンバーが相互に刺激しあい、特定の目的に向けたコミュニティを形成し、成長していく点が特徴です。

すでにたくさんのDAOが誕生していますが、不動産に特化した事例をご紹介します。「CityDAO」は物理的な土地をブロックチェーンによってデジタル化(資産をデジタル化)することで、透明性を高め、仲介者を排除し複雑さを軽減することを目指しているDAOです。

CityDAO【URL】https://www.citydao.io

CityDAOはすでにアメリカのワイオミング州の土地を購入し、ブロックチェーン上で分散型資産所有の方法論を模索しています。土地の用途はDAOのメンバーが投票し、決められていきます。

不動産の視点から見ると、会社に属しても属していなくても、顔を知っていても知らなくても、「同じ思いを持った人同士」による街作りや都市開発が可能になる仕組み、それがDAOといえるでしょう。

Web3はブロックチェーンや暗号資産をベースに、DAOという仕組みによって新しい社会を生み出す可能性があります。以前、パソコンが登場した際、それより前に市場で人気を集めていたのがワープロでした。ワープロのメーカーの多くは、ワープロがパソコンに取り込まれることはないとコメントしていました。インターネットの時も、スマートフォンの時も、いつの時代も、今あるものがこれから来るものに取って替わると考えるのは難しいものです。しかし、不確実性の高い今の社会では、将来何が起きるかわかりません。Web3によって不動産の仲介や売買がブロックチェーンによって行われ(不動産共通IDhttps://www.sumave.com/20211124_21639/や国交省の不動産IDもブロックチェーン化されていくでしょう)、土地や建物の開発がDAOを中心に行われる可能性もあるのです。

取材・文/中村祐介
株式会社エヌプラス代表。デジタル領域のビジネス開発とクリエイティブ戦略が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実施も行うほか、一般社団法人おにぎり協会の代表理事として、日本の食や観光に関する事業プランニングやディレクションも行う。
https://www.nplus-inc.co.jp/
https://twitter.com/nkmr

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