メタバースで不動産ブームが来る? 海外では約5億円の取引も

- 2021年末、アメリカでは約5億円でメタバース(仮想空間)の土地を購入する業者が
- バーチャル不動産はリスクが大きい?メリット・デメリットを解説
- 日本でも大手業者がメタバース市場に参入
メタバースとは
2021年末からアメリカでは、メタバース内の不動産取引がブームとなっています。
メタバースとは「Meta(超越した)」「Universe(世界)」を組み合わせた造語で、コンピューター内に存在する仮想空間・サービスを指します。
オンライン上に構築された3DCGの仮想空間で自分のアバターを作成し他のユーザーと交流する、コンテンツを体験する事が出来ます。
【画像出典】「Decentraland」トップページより画面キャプチャにて作成
https://decentraland.org/
2021年10月にはSNSで知られるFacebook社が社名を「メタ・プラットフォームズ」に変更し、メタバース事業へ本格的に参戦していくことを発表しました。
メタバースを用いたゲームとしてはSecond Lifeやマインクラフト、2020年にヒットした「あつまれ どうぶつの森」などがあります。
これらのゲームを「プレイしたことがある」と言う方も多いのではないでしょうか。
メタバースではネットワーク上にある端末同士を直に接続し、暗号技術を用いて取引記録を分散することで正確な取引を維持する「ブロックチェーン」技術が用いられています。
【画像出典】「総務省 情報通信白書 ブロックチェーンの概要」より画面キャプチャにて作成
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd133310.html
ブロックチェーン技術はデータの破壊・改ざんリスクが低く、仮想通貨「ビットコイン」にも利用されています。
メタバース内にはNFT(非代替性トークン)と言うブロックチェーン上にある唯一無二のデジタルデータがあり、アートや電子書籍などの財産として売買・譲渡が可能です。
メタバース内の土地もNFTであり、プラットフォーム内の仮想通貨で取引されています。
メタバースのプラットフォーム・ゲームには「The Sandbox」「Decentraland」「EnjinCraft」「AxieInfinity」などがあり、それぞれの空間内でNFTの土地やアイテムが存在します。
The Sandboxでは「SAND」、Decentralandでは「MANA」と呼ばれる仮想通貨が用いられていますが、メタバースの利用者が増えるにつれて通貨の価格も上がっておりメタバースは今やアメリカの一大産業と言えるでしょう。
メタバースの不動産投資事例・仮想世界の土地に約5億円
メタバースのプラットフォーム「The Sandbox」にはLandという土地があり、NFT化された唯一性のある資産として注目を集めています。
【画像出典】「TheSandbox」トップページより画面キャプチャにて作成
https://www.sandbox.game/jp/
2021年11月、不動産投資ファンド「リパブリック・レルム」はサンドボックス内の土地を430万ドル(約4億8800万円)で購入したと発表しました。
メタバース内の不動産では史上最高額で、売却したのはビデオゲームを開発するアタリという企業です。リパブリック・レルムとアタリは一部の物件開発で事業提携を行う予定です。
ちなみに前の週にはカナダの投資会社が「Decentraland」のファッション地区の土地を約250万ドル(約2億8450万円)で購入しており、過去最高記録でした。
メタバース内で不動産投資ブームが起こったのは何故でしょうか?
不動産投資企業の狙いはメタバース内での不動産の売買・活用です。
ユーザーへの売却による利益や、小売りスペースを設置し業者に貸し出すことで家賃収入を仮想通貨で得ることを目的としています。
土地の所有権は、唯一無二のNFTで記録されるためオンライン上で奪われてしまう心配はありません。
購入した土地は保有し値上がりを待つ、もしくはバーチャルの建築家に家・商業施設などを設計してもらい開発業者に建設を依頼し活用するといった事例があります。
バーチャル不動産のメリット・デメリット
現実世界の不動産投資と違い、メタバース内の建築物は経年と共に劣化し見た目が損なわれることがない、修繕費がかからないなどのメリットがあります。
一方でメタバースが廃れ利用する人が減った時には、不動産の価値も落ちてしまいます。
さらにメタバース内で使われている仮想通貨の価値の変動によって購入した不動産が割高になってしまうリスクもあります。
例えばTheSandboxで用いられている仮想通貨「SAND」は2021年12月末には日本円で600~784円程度でしたが、2022年1月には420円~610円の幅で推移しています。
貨幣価値の変動は1000サンドで購入した土地が、仮想通貨の下落によって一ヶ月で780万円から420万円になる可能性があることを意味します。
通常の不動産投資よりハイリスク・ハイリターンの投資と言えるでしょう。
メタバース上の不動産の評価は 現実世界と同様に場所や需要、広さなどが基準と言われています。場所の利便性によってユーザーの需要が高まる点は現実の不動産と同じです。
日本ではソニー・パナソニックなどがメタバース市場に参戦
日本では渋谷区公認のプラットフォーム「バーチャル渋谷」がオープン し、バーチャルSNS「cluster」のオンラインイベントへの参加や現実の渋谷と連携した「デジタルツイン」の世界を体験できます。
2022年1月には国内大手のパナソニックが「メタバース」向けのVR(仮想現実)グラスを発売、今後も高性能のマイクやメタバース内で使える手のひらサイズの冷熱装置を発売する予定です。
ソニーはイギリスサッカーの強豪クラブ、マンチェスター・シティと提携し、仮想空間上で試合観戦ができるコンテンツの制作を進めています。仮想空間上でのスポーツ観戦が実現することで、チケットによる収益やファンへの新しいサービスによる他チームとの差別化が期待できます。
2022年1月24日には、中国IT企業の「テンセント」が日本の企業向けにメタバース事業の支援サービスを開始することがニュースに なりました。
日本でもメタバース内で不動産が取引される時代がやってくるかもしれません。
執筆者/田中あさみ
FPライター。大学在学中に2級FP資格を取得、医療系の仕事に携わった後ライターに。
金融・フィンテック・不動産・相続などの記事を多数執筆。
- ブログ:https://asa123001.hatenablog.com/
- Twitter:https://twitter.com/writertanaka19