コロナでオフィス事情が一変! シェア・職住近接…進化が止まらない

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コロナでオフィス事情が一変! シェア・職住近接…進化が止まらない

大手企業の本社ビル売却、オフィス空室率も上昇続く

電通、エイベックスなど大手企業の本社ビル売却が相次いで報じられました。コロナ禍による業績不安はもちろんですが、それ以上にテレワークの普及で自社ビルの必要性が薄れつつあることも指摘されています。デスクワークに限らず、オンラインでの営業や打ち合わせも多く行われるようになったこともあり、テレワークであっても滞りなく業務が進んでいくと、オフィスビルを処分するという経営判断を下す企業はこれからも出てきそうです。

実際に、オフィスビル仲介大手の三鬼商事のオフィスマーケットデータ(※)によると、2020年12月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は4.49%。空室率の上昇は10カ月連続となっており、大企業に限らずオフィスの需要は減少傾向であることがうかがえます。

新しいオフィスのあり方が見えてきている

オフィスビルの需要減と対照的なのがシェアオフィス需要です。テレワークが普及したものの、家族がいたり、自宅で作業スペースが確保できないなどの理由から自宅で仕事をしにくい人も多く、需要が高まっています。三井不動産は、シェアオフィス「ワークスタイリング」を2017年にスタートさせていますが、テレワーク普及を見越して倍増の115カ所にすると発表しています。

サテライトオフィス「ワークスタイリング」ホームページ法人向けの多拠点型サテライトオフィス「ワークスタイリング」【出典】ワークスタイリング 【URL】https://mf.workstyling.jp/

ワークスタイリングは法人向けの多拠点型のサテライトオフィス。特に注目されているのが個室特化型の「ワークスタイリングSOLO」です。ウェブ会議に対応できるよう、通信環境や防音設備を備えたこの個室タイプのオフィスは、2021年度中に郊外を中心に拡大させる予定だといいます。

野村不動産も「H1T(エイチワンティー)」というサテライト型シェアオフィス展開し、東急不動産も会員制のシェアオフィス「ビジネスエアポート」に力を入れるなどシェアオフィス事業に積極的です。

また、異業種として興味深い展開をしているのがJR東日本です。JR東日本は東北新幹線に「テレワーク推奨車両」を設ける実験をスタート。通常新幹線では通話の際はデッキへの移動を促すなど、基本的に通話を認めないというルールを設けていましたが、この「テレワーク推奨車両」では席上での通話を認める方針です。テレワーク推奨車両では座席も一席空けるなどの感染症対策のほか、通話の妨げにもならないように工夫がされています。さらにJR東日本は昨年、停車した成田エクスプレスの車両をワークスペースとしてテレワークができるかという実証実験も行いました。リクライニングシートにWiFi完備などオフィスとして見ても新幹線は優秀。オフィスビル同様、テレワークにより通勤が激減し、同社の業績も落ち込んでいる中、新しい市場開発に注力しています。

JR東日本のようなユニークな試みは他社にも表れています。静岡県浜松市で不動産仲介や住宅の設計・施工を行うプラ株式会社は、木造の小屋「S-CORE」の開発、販売を開始。S-COREでは、地代のかからない自宅の庭先や駐車場に店舗やオフィスを構えられることで注目を集めています。

スタジオプラS-CORE 3 VariationS-CORE 3 Variation 【出典】スタジオプラ 【URL】 http://studio-plat.com/SCORE/

サイズは1.37坪タイプと2.20坪タイプなどで、三角屋根のルーフ型や屋根が平らなフラット型などがあり、用途や設置場所に合わせて選ぶことができます。本体価格は118万〜200万円程度です。

テレワークを推奨する動きは企業だけではありません。静岡県は「移住」やテレワークを積極的に取り込んでおり、静岡銀行が「しずぎんテレワーク・移住応援ローン」の取り扱いを開始するなどしています。

静岡銀行 テレワーク・移住応援ローンホームページ移住だけでなく在住者のテレワークにも対応している【出典】静岡銀行 テレワーク・移住応援ローン 【 URL】https://www.shizuokabank.co.jp/lp/teleworkloan/mutanpo.html

家具やパソコン、通信環境などテレワークに必要な環境整備をサポートしてくれるというわけですね。

下北沢の「BONUS TRACK」はみんなで育てていく商店街

2020年に下北沢から代田にかけて生まれたエリアが「BONUS TRACK」。小田急電鉄による職住一体の新しい商店街です。BONUS TRACKは長屋型の商店街で、入居者は二階建てのテナントを、一階は店舗、二階は自分のために使うなど分けて利用することも可能です。演劇の街と言われ若者の人気も高い下北沢ですが、新しい街づくりが始まっています。

下北沢BONUS TRACK下北沢に誕生した新しい町・BONUS TRACK【出典】PR TIMES内プレスリリースより【URL】 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000066134.html

みんなで育てていくことをテーマに、飲食店や物販店のほか、コワーキングスペースやシェアキッチンなどもありユニークな店舗と店主が集っています。BONUS TRACKはただの商店街ではなく、この街で新しいカルチャーを作っていくことも目指しています。この取り組みは最初に紹介したテレワークや在宅勤務などとは異なるケースですが、従来とは違う職場環境が創出され始めていると言うことができます。

2020年以降、コロナ禍によって自分の働き方、会社のあり方などが大きく変わってきてい ます。当初は在宅勤務を余儀なくされた始まりだったかもしれませんが、そこから新しい働き方が生まれてきているように感じます。この動きは日本だけではありません。海外でも米国のオフィスビル需要減は報道されている一方で、成長を続けるGoogleのような企業もあります。Googleはこれまでとは全く違う発想で新しいワークスタイルを創出しようとしています。それは在宅勤務でオフィスを減らすのではなく、本社近くに仕事スペースに限らず生活に必要なほぼ全ての機能を兼ね備えたキャンパス型オフィスを、職住近接の形で造り上げようという計画です。この取り組みについてはまた別の機会にご紹介できればと思いますが、2020年以前の働き方から、2021年は働く場が大きく変わる「萌芽の年」となるのかもしれません。

※ 出典:三鬼商事オフィスマーケットデータ

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