今さら聞けない ブロックチェーンは不動産にどう関わるのか

2021.02.02
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今さら聞けない ブロックチェーンは不動産にどう関わるのか

取引情報を記録していくことで、過去の権利ややり取りも可視化できる

2020年11月、投資会社のマーキュリアインベストメントと伊藤忠商事の共同ファンドが、ブロックチェーン技術を用いて、オンラインで不動産取引を完結させる管理プラットフォームの米Propyに出資しました。ここでブロックチェーンは、取引でデータの改ざんが行われていないことを担保するために使われています。

ブロックチェーンは、一般社団法人日本ブロックチェーン協会によると

電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術(https://jba-web.jp/news/642

とあります。

もう少しわかりやすく説明していきます。
世の中には様々な取引が行われています。この取引におけるデータを記録する形式やルール、またその保存されたデータの集積を「ブロックチェーン」と呼びます。取引データを暗号化し記録(ブロック)、それをつないでいく(チェーン)というわけですね。

ブロックチェーンは、誰か管理者がいて管理をするものではなく、重要なデータをネットワーク上で、その参加者たちが共有しながら管理する技術です。参加者が同一のデータを保有しているので、情報共有が容易で、一部に障害があってもシステムが稼動し続けます。

セキュリティ能力が高いことからも様々な分野で注目されてきたブロックチェーン。もともとはビットコインなど仮想通貨の中核技術でしたが、いまでは不動産業界でも相性が良いと注目されています。

ご存じの通り、不動産は売買する際や賃貸契約をする際など様々な場面で権利のやり取りが発生します。ブロックチェーンを活用することで記録をきちんと残していくことができ、情報を可視化できるだけでなく、データが改ざんされにくいというメリットがあります。

さらに、記録されるデータは取引履歴だけではなく、過去のトラブルやメンテナンス状況までも正確に記録することができます。これらの情報を活用することで、従来の不動産取引で必要だった、取引相手の信頼性や第三者による保証が不要になります。

以前、不動産会社が地面師のグループに架空取引で土地購入代金55億円余りをだましとられた事件がありましたが、こうした詐欺を防ぐことも期待されています。

また、ブロックチェーン上に契約条件を書き込み、条件が満たされれば自動で契約を実行する「スマートコントラクト」と呼ばれる仕組みがあります。多くの契約が伴う不動産取引でスマートコントラクトを活用すれば、契約を自動で実行するだけではなく、契約書の電子化や不動産登記などの業務も自動化できるため、業務を効率化すると期待されています。

信頼できる情報の集積、そして契約の自動化。不動産ビジネスと相性が良いというのがよくわかります。

不動産現場で取り入れられていくブロックチェーン

実際に不動産業界でもブロックチェーンを取り入れる動きは増えてきています。

積水ハウスはブロックチェーン技術を用いて、同社が持つ賃貸住宅「シャーメゾン」に対し、物件の内見や契約手続きそして実際に住む際のインフラ契約などをワンストップ化すると2020年6月に発表しました(出典:積水ハウス株式会社のプレスリリースより)。セキュリティを確保しつつ、情報を企業間で連携することで効率化を実現するということですね。

また、三井住友信託銀行株式会社は不動産情報の蓄積と活用を促進するため行っていたブロックチェーンを用いての実証実験を行っています。これは複数の企業が持つ情報を一元的に蓄積し、プラットフォームを構築するものです。不動産取引市場のさらなる活性化を目的としています。

不動産情報の蓄積と活用をブロックチェーンで行う不動産情報の蓄積と活用をブロックチェーンで行う【出典】三井住友信託銀行株式会社のプレスリリースより
https://www.smtb.jp/corporate/release/pdf/190813.pdf

不動産業界は関係者が多く、また歴史が古いため借り手と貸し手の間での情報に差があるという課題があります。そこでブロックチェーンを取り入れることで、情報が可視化され、間に多くの人を挟むことなく当事者同士で情報のやり取りをすることができます。その結果、効率化が実現しコスト削減も叶うという期待があります。

海外の動きをならって日本でも取り入れられる動きも。不動産ブロックチェーンの特許を持つ株式会社ツバイスペースジャパンは、2019年11月よりグローバル基準のブロックチェーン登記システム「レジスターナイト(RegisterKnight)」を利用し、不動産のブロックチェーン権利記録の実務運用を開始しています。

ブロックチェーン登記システム「レジスターナイト (RegisterKnight)」ブロックチェーン登記システム「レジスターナイト (RegisterKnight)」【出典】株式会社ツバイスペースジャパンプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000029068.html

これは土地登記の仕組みにブロックチェーンを導入することで、手続き時間の簡素化、費用大幅削減を目指すもの。海外では米国、英国、ドバイなど多くの国でも同様の実証実験が進められています。

今まさに大きな動きを見せているブロックチェーンの活用。まだまだ実証実験段階ということもあり、実用に向けて課題が出てくることも予想されますが、今までブラックボックスとなっていた不動産業界を可視化する動きと合わせて、今後も注目を集めていきそうです。

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