【後編】アフターコロナの不動産業界で求められる、リアルとオンラインの新しい関係

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【後編】アフターコロナの不動産業界で求められる、リアルとオンラインの新しい関係

※本企画の前編を未読の読者は、コチラの記事を先にお読みください。

 

はじめに 

一般社団法人不動産テック協が、615日より、13日間連続で不動産テックウェビナー「The Retech Week 2020」を実施しました。本企画は、その総括編レポート記事の2回目です。全日程を取材して、アフターコロナの不動産業界、New Normal(ニューノーマル)のありかたが1つ、見えてきました。

緊急事態措置による外出自粛、休業要請によって、全国の売買・賃貸仲介会社、管理会社が強いられたのは、さまざまなオンライン施策への注力でした。オンライン接客、オンライン内見、VR内見、IT重説、電子契約、WEB申込、テレワーク、オンライン会議などです。これらを経験し、いま、不動産業界は1つの岐路に立っています。問われているのは、リアルとオンラインのどちらに注力するか。この議論に、「The Retech Week 2020」に登壇した、複数のスピーカーが、それぞれ違う場所から同じ趣旨の発言をしました。彼らが持つキーワードは次の2つです。

  • リアルとオンラインの融合
  • 顧客視点

ウェビナー総括編のPart2である本記事で最初に取り上げるコンテンツは、617日に開催された「不動産テックカオスマップ最新版公開」です。この日は、不動産テックカオスマップが第6版に更新されました。当日に、その解説役を務めたのが、NTTデータ経営研究所のシニアマネージャー・川戸温志氏(画像下)です。

川戸氏は、ウェビナーで、リテールのデジタルトランスフォーメーション(DX)事例をそのロールモデルの1つとして示しました。この指摘は、ウェビナー総括編Part1で、仲介会社や管理会社が訴えた、オフラインとオンラインが融合した世界の代表例です。デジタル環境の整備が進む、アメリカと中国の異産業より、オフラインとオンラインの新しい関係を紹介します。なお、本企画では、スピーカーのニュアンスも伝えたいので、発言を書き起こすかたちで、可能な限り編集せず掲載します。ご覧ください。

米国ウォルマートや中国フーマーから、新しい購買体験を学ぶ


川戸:ショッピング、買うというところから。少しDXの事例を紹介します。ここで注目したいのはアメリカのウォルマートです。Amazonが台頭してきたときには、“ちょっと古い、旧態依然とした会社”というイメージがありました。ところが、ここ数年で、非常にDXへの取り組みが進んでいる企業です。資金だけでなく、人へも積極的な投資をしています。ウォルマートは、ECを軸にして、いろいろな取り組みをしています。たとえば、EC上で注文した商品のピックアップ方法です。受け取りかたに、さまざまな選択肢が用意されています。


川戸:これは、ピックアップタワーズという取り組みです。動画()があるので、あとで是非、私の資料から見ていただきたいです。オレンジ色のタワーにはパネルがあり、ここにスマホで買い物をしたQRコードをかざすと、買い物した商品が梱包された状態で出てくる。それを持って帰るだけで買い物は終了します。


川戸:ほかに、ドライブスルーで受け取ることができるCurbside pickup(カーブサイドピックアップ)や、InHome Delivery(インホームデリバリー)といって、自宅冷蔵庫のなかまで届けてくれるサービスも。そうした、アメリカをはじめとした海外ではじまっているのが、オンデマンドデリバリーです(SUMAVE編集部捕捉。オンデマンドデリバリーとは、ECサイトなどで買った商品の受け取り方法を顧客が選べるサービスのこと)。スタッフがユーザーの代わりに買い物をして配達するサービスも流行っていますが、海外ではそれらが当たり前のようになってきています。


川戸:Instacart(インスタカート)Shipt(シプト)Postmates(ポストメイツ)など、アプリを介して、指定した近隣の店舗で、自分の代わりに買い物をしてきてくれます。決して真新しいサービスではありませんが、以前よりも、そうした流れが加速している状況です。ウォルマートに話を戻すと、彼らはバリューチェーンにおいて、いろいろな取り組みをしています。ロボットやブロックチェーンを使って商品を補充したり、トレーサビリティ管理に利用したり、顧客にアプリを提供したりしています。


川戸:もう1つ、注目したいのがIRLです。IRLは、インテリジェント・リテール・ラボの頭文字をとった略で、AIを活用した大型スーパーを意味しています。これをウォルマートは、スーパーマーケットの未来のカタチと称しています。店内の天井に、たくさんぶら下がっているのはAIカメラです。これで、商品の状況を把握して、「補充が必要」「鮮度が落ちているので回収の必要アリ」といったことを把握しています。サーバー群がデータ処理をして、在庫管理をするものです。


川戸:AIカメラで実際に撮影された画像がこれなんですが、お肉コーナー。陳列棚に不足があれば、それを自動的に判別して、店員へ連絡。効率的な品出しを実現しようとしています。こういったものを先ほどのカメラでやっていると。非常に効率的です。データに基づいて店員は作業をしています。


川戸:AIを活用した、大型スーパーといえば、少し古いですが、アリババのフーマーが有名です。フーマーでは、専用アプリで注文すると30分以内に商品が届きます。当時は非常に画期的でした。どうやって30分以内の配送を実現させているか。ECから注文がはいると、店内のピッカーと呼ばれる店員さんが商品をピックアップして、天井にあるコンベアーで店の外へ。荷物を待ち構えている担当者が受け取ると、配達用の車やバイクに積み込んで注文者の自宅へ配送する仕組みです。この仕組みは注目を浴びました。


川戸:ほかにも、アリババは、タオバオバイというサービスもてがけています。これも動画があるので、あとで見ていただきたいです。マイクロソフトのホロレンズを使うことで、実際のショッピングセンターに行って、いろんなモノの上に商品情報などを投影することができます。これも、“新たな購買体験”です。タオバオバイでは、商品を買うとき、うなずくだけで支払が済む仕組みになっています。そういうヘッドマウントディスプレイを使ったテクノロジー活用もあります。アリババだけじゃなく、eBay(イーベイ)もバーチャル・リアリティ・デパートメント・ストアに取り組んでいます。VR百貨店ですね。オーストラリアの大手百貨店と提携して、1万2,500点以上の商品を展開していて、これのすごいところは、商品データを連携させていて、リアルタイムで在庫状況を共有・展開できる点です。そんな本格的なVRショッピングになります。買い物の世界はDXがどんどん進んでいる状況です。


川戸:住まい×デジタルサービスは、もう、当たり前の世界です。これからは、不動産だけの世界の話ではなく、小売りみたいな異業種のプレーヤーが壁を越えてやって来る。そういったところとの提携、競争(共創)が進んでいくでしょう。さらに今後は、リアルを前提としたバリューチェーンや、ビジネスの作りかたではなく、デジタルを前提としたバリューチェーンになっていくのかなと。おそらく、小売りの世界だけじゃなく、あらゆる産業で、そういった世界になっていくだろうと思っています。

画像出典元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002443.000003860.html

川戸氏のいう“新たな購買体験”は、日本国内でも少しずつ、その動きが目に付くようになりました。たとえば、メルカリ。オンラインでフリマアプリを提供するメルカリは、リアル店舗をオープンさせています。メルカリ初の旗艦店舗、メルカリステーションです。2020610日に、東京都新宿区にある「新宿マルイ本館」にプレオープンしました(画像上)。都内だけではありません。

画像出典元:https://about.mercari.com/press/news/articles/20200702_mercaristation

7月2日は2号店もオープン。神奈川県川崎市にある「ららテラス 武蔵小杉」内にも、メルカリはリアル店舗を開設しました(画像上)。オンラインでフリマアプリを提供するメルカリが、わざわざ、オフライン(リアル店舗)の施策で集客しようとしているのです。これでまでの不動産業界の潮流からすると、その流れに逆らうような取り組みに映ります。流れとは、リアルをネットで代替しようとするものです。川戸氏が解説したアメリカのウォルマート、中国のフーマーに限らず、日本のメルカリもオフラインを生かそうとしています。なぜか。その答えを代弁してくれたのが、624日の「The Retech Week 2020」に登壇した、杉山恒司氏(画像下)です。

杉山氏は、株式会社ウフルというベンチャー企業で、開発部門、人事総務部門、営業部門、アライアンス部門などの長を担当し、IoTイノベーションセンターの企画立案や設立も担いました。注力しているのが、ITを生かした地方創生支援です。

24日は、不動産テック協会と一般社団法人データ流通推進協議会(DTA)との連携コンテンツでした。DTAの理事であり発起人でもある杉山氏は、「COVID-19で変わるスマートシティのあり方」というテーマのパネルディスカッションで、次のように話しました。

アナログとデジタルの戦いではなく、両方が共存する世界


杉山:IoTもそうなんですが、開発からやっている私たちからすると、開発する前に必ず、ポックってあるわけですよ。Proof Of Concept(プルーフオブコンセプト)です。概念実証みたいなことをやるんですけど、これの一番の目的は、お客さんや一緒にやるパートナーさんに体験してもらうことです。新しい概念や理論が、どういうものかをわかってもらうためにポックをやります。実現性があるかってことを感じてもらうんです。そうすると、実際に開発したり受注したりにつながることがあります。今回、コロナで緊急事態措置になって、「国民全員が一気に、ポックを経験したんだ」と私は思っているんですよね。テレワーク、DX、デジタル化って話は、ずっと何年も前から提唱しているけど進まない。考えてみると、よいのか悪いのかわからないモノは、「いままで通りでいいじゃん」というのが当たり前の世界です。でも、今回、無理やりやって、「朝のお化粧、しなくていきなり仕事できて通勤時間もないし最高じゃん」ってなったわけです。それを体験したと思うんですよ。そこで、「これ、よかったな」って思った人はどんどん、そっちへ突き進むと思うんですよね。逆に、職種によっては、「これ、よくない」って感じた人も当然、いると思います。つまり、ネガティブに受け止めた人もいると。そう感じた人は、当然、そっちへ進まないと思うんですよ。でも、これ、どっちがよい悪いじゃなくて。

杉山:そもそも、DXもソサエティ5.0もそうですけど、アナログとデジタルの世界が両立して空間上にあるっていってるんで、アナログとデジタルの戦いじゃないんですよね。両方、共存する世界なんで。そこに、IoTとかデータ流通とかのAIや、デジタルの仕組みなどの技術が、「“上に行ったり下に行ったり”を違和感なくできるようにする」というのが答えかなと思うんですよ。その先で、不動産の世界が変わるようなことになるんでしょう。これを私はポジティブにとらえていて、不動産業界のイノベーションが起こると思っています。いままでの形態とは違う、企画なり売り物を作るなりっていう、きっかけやトリガーになるのかなと。そこに、私たちIT屋が一緒になって、「何かを作りましょう」とかって話なんだと考えるようにしています。

リアルとオンラインの融合が、これからの不動産業界で求められる

杉山氏がいう、「アナログ(リアル)とデジタル(オンライン)の戦いじゃない」「上に行ったり下に行ったり」とは、これからのリアルとオンラインの関係(上図)に集約されます。従来は、オンラインの施策が、リアル店舗・業務を補完したり、そこへ誘導したりするためのサービスでした。または、それらを代替するものとして考えられていました。しかし、これからは従来と違い、新しい関係を模索する不動産会社が増えます。

新しい関係とは、リアルとオンラインが融合したものです。顧客は、リアルとオンラインを行ったり来たりするので、状況にあわせて好都合なサービスを提供してくれる不動産会社を選ぶでしょう。リアルだけでもない、オンラインだけもない。それをなし得るのは、徹底して顧客目線に立つことができる不動産会社です。総括編のPart1で紹介した不動産会社は、その先頭を走ることになるかもしれません。大手不動産会社のTOPもその重要性に気づいています。

13日間にわたり毎日、開催されてきた不動産テックウェビナー「The Retech Week 2020」より、最後にご紹介するのは、最終日のスペシャルコンテンツ、不動産テック協会の顧問によるパネルディスカッションです。紹介したいスピーカーは次の2名です。

北川登士彦氏(東急住宅リース株式会社 取締役会長)

 

 榎本英二氏(野村不動産アーバンネット株式会社 代表取締役副社長)

長きにわたり、不動産業界を見続け、成果も積み上げてきた両者は、アフターコロナの不動産業界をどうみているか。見解を語る両者のパネルディスカッションを書き起こしました。2人のニュアンスを感じ取っていただければと思いますので、できるだけ編集をせず、そのままご紹介したいと思います。是非、ご覧ください。

Q:コロナによって実施を強いられたテレワークですが、今後も、お2人の会社では継続されるのでしょうか?


北川:うちは、7割くらいの出社削減ができました。社員たちにアンケートをとっても、9割くらいの社員が、「多少、問題はあるけど、それをクリアにしながらモバイルワークに変えていきたい」ということでした。そういう意見が大多数です。私たちは、「モバイルワークをベースにした事業に転換しよう」という方向です。現在は、社員たちに、自宅と会社に、それぞれ1台のパソコンと大型モニターの両方を付与しています。数日前あたりには、総務のほうから情報発信がありましたが、社員のコミュニケーションを活性化するためのWEB飲み会の懇親会に、1回3,000円を支給するという取り組みもはじめます。「モバイルワークを中心にやろう」ということで、そこで足りなくなるだろうコミュニケーションをうながすわけです。どうしても、一人ひとりがバラバラで寂しくなる。社員にアンケートをとって、そうしたことも見えてみました。企業には、社員のコミュニケーションや一体感は重要です。そのあたりを少しでも保てるようなカタチで、会社で支援できることはやろうよと。そういう話ですね。


榎本:うちも、テレワークを継続していますね。していますし、“対面”の大事さというのも再認識しました。“白か黒か”という話じゃなく、いかに、ベストミックスを作っていくか。みなさんの言葉でいうとOMOということですかね。そういう世界を自分たちなりに考えてやっていかなきゃいけないと。4月は、「ともかく、コロナ対策で取り組まないと」という話ではじめました。緊急事態措置が解除された現時点(627日時点)でのポイントは、2つです。1つ目は、第2波への対策です。秋から冬にかけて第2波が来るのではという、リスクシナリオを持っていないといけない。それに備えるという意味でも、ここで、「もう大丈夫だから、職場で働いたほうが効率がよいから」ということではマズイです。2つ目は、6月までの3か月間をテレワークでやってみて、生産性を高めることは結構、できたよねという話がありました。やってみてしまったから。いままでのような観念論的な議論ではなく、やった人同士が、「ここは使えた」「ここは使えない」という、非常に建設的な議論がはじまるようになったので、次のステージに進めている感じです。

Q:「こんなデータが不動産業界にほしい」という声は、以前からあったかと思いますが、実現に向けた難しさには何がありますか?


北川:大きく2つあって、1つは、やっぱり競争しているからね。賃貸会社同士は、他社が何をしているかわからない。競争しているんだけど、みんながいうように、まず、業界を変えようよってことが、いまは必要です。もう1つは、何のためのデータか。そこがつい、抜けちゃうんで。生活者や消費者のためのデータです。その人たちが望んでいるのか。ブロックチェーンを本当に望んでいるのか。買取再販を望んでいるのか。いろいろあるけど、やっぱり、人が望んでいるものでないと。業者が望んでいる、ではなく。消費者が望んでいることじゃないとね。そこから、まず、入るべきかなと個人的には思っています。

Q:不動産売買仲介のDXというテーマだと、榎本顧問は、今後の業界のDXをどうお考えでしょうか。不動産売買仲介がテックでどう変わるか。お考えをお聞かせいただけないでしょうか。


榎本:売買仲介も不動産テックは、けっこう使っています。逆に、使えば使うほど、対面におけるハイタッチの重要性を考えさせられます。みなさんは、そんなことを考えてはいないと思うけど、もし、質問の意図が、「なぜ、クリック1つで不動産売買が全部、終わっていく世界にならないんですか」ということだとすると逆にお聞きしたいです。みなさん自身が消費者だとして、そうなりたいですかと。自分が、5,000万円のマンションを奥様と一緒に買おうというときに、そうであってほしいですかと。「人生の一大イベントをクリック1つで終わらせちゃってよいのか」と。マンション購入は、夫婦にとって、ケーキ入刀以来か、お子さんが生まれるとき以来の、大事業ですよ。それをクリック1つにってのは必ずしも、消費者にとっての価値創造にはつながっていないだろうと思うのです。「そっちへ向かいますか」と聞かれれば、私は行かないだろうと思います。賃貸仲介のDXというテーマで、19日に北川さんのところの佐瀬さんが、おっしゃっていました。情報の非対称性の解消が、消費者にとって、もっとも価値があるデジタル化だったと。駅前の不動産会社に行かないと知ることができなかった物件情報をポータルサイトが提供したことだと。そういう話があったと思いますが、それの流れをうけて、みなさんが努力されている話は進んでいるし、私たちも、もっともっと、そういうOMOを目指してやっているってところです。

おわりに ~メルカリ不動産の実現性について~

榎本氏は明確に、OMO(Online Merges with Offline)というキーワードも取り上げ、リアルとオンラインの融合を意識していました。北川氏が訴えたのは、顧客視点の重要性を再認識することでした。これは、総括編のPart1で取り上げた佐瀬氏の指摘にも通じます。


佐瀬:(中略)私たちが議論の的にしている、実際の申込、契約がデジタルであろうが紙であろうが、ポータルが提供している顧客価値からすると、さほど重要ではないのかもしれない。賃貸契約は、お客様からすると、一生のうちに何度もすることじゃないので、どちらかというと業界側の理論だけで語っているようなところも、あるかなと感じています。つまり、顧客視点からいうと、「この業界は、新規顧客への価値提供が遅れているか」と問われれば、一概に、「遅れている」ともいえないと思っているのです。

つまり、顧客の視点に立って考えたときの、不動産サービスの価値提供とは何かを追求することの重要性を指摘しているのです。不動産賃貸・売買の店舗は、顧客と密にコミュニケーションがとれる貴重な接点であると考えることができます。それをどう生かすか。佐瀬氏が挙げたアイデアは2つでした。

  • 部屋探しのワクワク感、トキメキ
  • ゲーム性のある部屋探し

これは、榎本氏の指摘と重なります。5,000万円の買い物という一大イベントを迎えるカップルに、店舗で何を提供することが顧客価値なのか。追い求めた先に姿を現すのは、川戸氏が解説してくれたような“新たな購買体験”なのではないでしょうか。新しい、不動産賃貸・売買契約(購入)という体験です。他方で、アミックスの深澤氏が示してくれた、別な視点も見逃せません。


深澤:(中略)つまり、二極化。機能だけを求めている人は(不動産の仲介)手数料ゼロでいいじゃんとか。ちゃんと手続きや町の紹介をやってほしい人は、一か月分の仲介手数料を払ってもいいでしょうし。だから、“1ゼロの話”は違いますよね。ワクワク感はすごい大事だし、すごい簡単に賃貸契約ができるってことも大事だなと思います。

「すごい簡単に契約ができる」という点を求めるユーザーが、明確に存在することをみなさんはご存知でしょうか。

画像出典元:https://www.mercari.com/jp/box/q45847d2a02a4bebc/

上の画像は、「メルカリ 不動産」というキーワードで、インターネット検索した結果から見つけた、ウェブページの画像です。ユーザーが質問や回答をしあうQ&Aのようなページです。ここで、2018311日に、「不動産(別荘)の売却をメルカリでやりたい」と考えるユーザーが投稿をしています。さまざまな回答者がいろいろな意見を投稿しているのですが、注目すべきはページの下部です。次のような興味深い関連情報が掲載されていました。

画像出典元:https://www.mercari.com/jp/box/q45847d2a02a4bebc/

現時点では、さまざまな規制や法律により、メルカリのプラットフォーム上で不動産を売買することはできません。しかし、もし、”メルカリ不動産”が実現するなら、それは深澤氏が指摘した“すごい簡単に賃貸契約ができるってことも大事”を突き詰めた、1つの形態であるようにも思います。誤解のないように付け加えると、理想形ではなく、あくまでも”顧客目線に立ったときのアイデアの1つとして”という話です。

一大イベントを1クリックでは済ませたくないけど、3回目の一人暮らしの引っ越しならどうか。都内や神奈川県には、すでに、メルカリのリアル店舗(ハイタッチ、リアル接点)があります。もし、メルカリの使いかた相談のついでに、不動産売買や賃貸の相談ができるようになったら。あるいは、いつも使っているメルカリ(テックタッチ、デジタル接点)で部屋探しができるようになったら。ネット上だけの話ではありません。これからは、リアルとオンラインが融合した世界です。家族で外出をしたときにショッピングモールでメルカリステーションを見つけたとします。孫は古着の出品相談をし、おじいさんは不動産の”出品”相談をする。リアルな店舗で相談することによって、おじいさんは安心感を得ます。信頼し、ファンになったおじいさんは、不動産にかかわる煩雑な契約部分を“すごい簡単に”アプリで済ませたいと感じるかもしれない。私たちが店舗で試着をして、「商品を持ち帰るのは面倒だから」と、ECサイトで注文するように。この体験は、おじいさんたちのネットワーク内で、クチコミにより広がります。見込み顧客が顧客をへて、ファンになり、ファンが新しい見込み顧客を呼び込むという連鎖です。メルカリステーションでの体験が感動をもたらすのであれば、それも川戸氏が指摘した、「新しい購買体験」といえるでしょう。ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチを行き来するという意味では、杉山氏がいう、「“上に行ったり下に行ったり”を違和感なくできるようにする」でもあります。

視点を変えると、不動産賃貸・売買のリアル店舗の価値は、違って見えてきます。オンライン完結型のサービスを提供する異業種プレーヤーへ、”顧客との貴重なリアル接点を提供する場”として、店舗(の一部分)を不動産会社が提供する、というアイデアもあるでしょう。いうなれば、不動産会社はオフラインのプラットフォーマーです。それは、売り切り型のビジネスモデルを軸にしたまま、寄り添い型の次世代ビジネスモデルへ着手するということを意味しています。LTVの高い顧客を新たに生み出し、ずっと、顧客と接点を持ち続け、そこにかかわってもらうという構造を作るためのデジタルトランスフォーメーションです。

リアルなのかオンラインなのかという、1かゼロかの議論ではありません。お互いを融合させ、一体とし、顧客目線で価値を提要することが、アフターコロナの不動産業界のDXです。気づきや学びを得るために、異産業の“リアルとオンラインの融合”事例を取材していると、そんな世界の到来を思いのほか近い将来のことのように感じます。

 

 

 

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